藤原家隆 志賀の浦や遠ざかりゆく波間より氷りて出づる有明の月
藤原家隆(ふじわらのいえたか)志賀しがの浦や遠ざかりゆく波間より 氷りて出いづる有明の月新古今和歌集 639志賀の浦だなあ。(その岸辺から沖へ向って氷結して)しだいに遠ざかってゆく波間から凍りついて出てきた有明の月。註志賀の浦:現・滋賀県大津市志賀付近の琵琶湖西畔。「志賀」は「滋賀」と同語源、もしくは同一語か。(志賀の浦)や:語調を整え、感動・余情・強調の意を添える終助詞、または間投助詞。現代口語になかなか訳し難い、しみじみと微妙な言い回しといえる。後世、この「や」が、「切れ字」(「かな、けり」など)の一つとして、俳諧で多用される語となり、用例は枚挙にいとまがない。→ 松尾芭蕉 荒海や佐渡によこたふ天河 閑さや岩にしみ入蝉の声有明の月:望(満月)ののちの、夜遅く上って朝になっても残っている月。