塚本邦雄 雉食へばましてしのばゆ再た娶り
塚本邦雄(つかもと・くにお)雉食へばましてしのばゆ 再また娶りあかあかと冬も半裸のピカソ歌集「緑色研究」(昭和40年・1965)註雉:「きじ」/ 娶り:「めとり」難解さを以て鳴る、いわゆる前衛短歌に分類される作品だが、感覚的には何となく分からないでもない。「草食男子」などという言葉も実体もつゆあり得なかった頃の、元気な「肉食男子」もしくは「悪食(あくじき)男子」の歌であるといっていいだろう。とりわけ塚本氏の場合、男性的で雄渾な、今でいうマッチョな感じに加え、ことさらにそれを示威するような露悪的な傾(かぶ)きさえあり、一種異形(いぎょう)の“婆娑羅(ばさら)ぶり”とでもいうべき強烈な個性が持ち味だった。それが如実・ストレートに出ている一首といえる。それ以上の解釈は、個々の読み手に委ねられよう。ともあれ、力感溢るるイメージと色彩感を伴った鮮烈な歌だと思う。猫が獲物の鳥を銜(くわ)えている凄まじい図柄の、パブロ・ピカソのキュビズムの傑作「鳥を食らう猫」辺りから着想を得たものであろうか。山上憶良の名歌「瓜食(は)めば 子ども思ほゆ 栗食めば まして偲(しぬ)はゆ」(万葉集 802)を踏まえている。パブロ・ピカソ 鏡の前の少女(複製)価格:63,000円(税込)【送料無料】