今野寿美 木染月・燕去月・雁来月
今野寿美(こんの・すみ)木染月こそめづき・燕去月つばめさりづき・雁来月かりくづき ことばなく人をゆかしめし秋第一歌集「花絆はなづな」(昭和56年・1981)陰暦の月々にはそれにまつわるさまざまな言葉がある。木が紅葉に染められる月、燕が去る月、雁が渡って来る月。けれども秋に言葉はなく黙って人を去らしめた。註青春の客気溢れる凝った言い回しになっているが、失恋か別離を詠んでいるのであろう。ただ、この佳品では意味の穿鑿はたぶん二義的というか割とどうでもよくて、端正な調べ(言葉の音楽性)や韻律の優美さを楽しむべき一首である。木染月こぞめづき、燕去月つばめさりづき、雁来月かりきづき:いずれも陰暦八月(葉月はづき、陽暦の9月上旬~10月上旬頃)の異称とされるが、陰暦九月(長月ながつき、陽暦10月上旬~11月上旬頃)とする説もある。・・・季節の実感からすると、個人的には後者の方が合っているような気もする。■ 月の名称・異称