|
カテゴリ:海外スケッチ紀行
そこに住んでいた欧米人は口をそろえて懐かしむとか。 衰弱した清朝政府を大砲で脅した英国にならって、 列強各国が治外法権の租界地を獲得していった結果、 英国風、仏蘭西風といった多国籍の文化の華が咲き、 魅力ある歓楽街が各租界に生まれ不夜城のように栄えていたと言う。 4月に訪れた上海の街は、きらびやかなネオンにあふれてはいた。 魔都、上海の雰囲気を求めて、夜の街をさまよったけど、 かっての生き残りの「和平飯店ジャズクラブ」も、訪れてみれば、 気の抜けたビールのようなジャズを演奏しているだけ。 欧州の旧市街にある長い年月に曝された風貌を持つ店もなく、 風雪を生き抜いた陰りある情緒にあふれた居酒屋もなく、 画一化された味気ないナイトクラブしか残ってなかった。 そんな折、魔都「上海」をほうふつとさせる映画に偶然出あった。 映画の題名は、「上海の伯爵夫人」 原題は White countess 「白い伯爵夫人」 この白いが意味深なのであって、 色白のではなく、白系ロシアを意味している。 上海にいた外国人の中で唯一悲惨だったのがロシア人。 革命によって祖国を追われて、祖国の後ろ盾を失ったロシアの人々は、 頼るべきものを亡くして困窮のきわみのような生活を強いられていた。 「白い」美しい伯爵夫人も、そのような一人。 夜のクラブでダンスの相手をして家族をささえていた。 その伯爵夫人にストイックな恋をするのは、 爆撃で視力を失った英国の有能な外交官。 戦争で家族を全て失った今は、栄光の職も色あせて、 上海一の居心地の良い理想のクラブを創ろうと、 この零落しながらも気品ある伯爵夫人に夢を託す。 このふたりの、互いへの思いを抑えた、ひめやかな恋心が美しい。 そして、上海特有の芸術の薫り高いクラブを実現する。 上海の町をさまよってみいだせなかったものが、ここにあった。 水を得た魚のように華やいで客の間をまわる美しい「伯爵夫人」。 彼女が、時折みせる、あでやかなまなざしの先には、その外交官がいた。 しなやかに伸びた美しい鼻筋のナターシャの表情に、しばしうっとり。 舞台は、日本軍が軍靴で無残に踏みにじる直前の1936年の上海。 そんな上海の、華のようなナイトクラブは、今は見る影もない。 上海の夜の街でたどり着けなかったかっての面影を、 この映画は、美しく眼前に再現し、 消え失せた青春の光と影を追うように、 上海の残光を懐かしんでいる。 うーん。あまり似てないなあ。まあ、いいか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[海外スケッチ紀行] カテゴリの最新記事
|