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カテゴリ:現代日本文学
『蒼穹の昴』及び『珍妃の井戸』の続編である。
『蒼穹の昴』の冒頭、老占師にお告げをもらったのは李春雲だった。 物語は、春雲と彼の親友、梁文秀を軸に、歴史上の人物を巧みに織り交ぜて展開した。 『中原の虹』で、同じ占師がお告げをする相手は、張作霖である。 歴史上の人物だ。 物語は、彼とその宿敵、袁世凱を軸に虚実織り交ぜて展開される。 春雲や西太后、光緒帝、トム・バートンやミス・チャンのようなおなじみの顔ぶれも登場するが、どちらかと言えば脇役にすぎない。 脇役の中でも、実在の人物の存在感は圧倒的である。 例えば西太后。 彼女は死してなお影響力を発揮する。 もちろん、小説だからできることである。 例えば光緒帝。 あえてひらがなばかりで表記された彼の電文は読む者の心を打つ。 トム・バートン。 彼の死は、小説を読む者のの心に永くとどめられるだろう。 歴史上の人物も負けていない。 宋教仁。 最後の演説は圧巻であった。 袁世凱に暗殺されたことになっているが、小説家は、通説を拒んだ。 それは正解だったと思う。 浅田次郎は、この小説で、見事、「西太后を美化しすぎる」という批判に応えた。同時に、袁世凱を気弱な俗物として描くことで、本当の巨悪の存在をあぶりだして見せた。 「わが勲は民の平安」 本書のキー・ワードである。 清の「始皇帝」も、西太后も、張作霖も、袁世凱も、宋教仁も、思いは同じだったとあえて主張することで、本当に中国を食い物にしたのは誰だったのか、読者に語り掛ける。 残念なのは、現在の台湾の方にこのキー・ワードがふさわしいにもかかわらず、中華人民共和国がバナナを牛耳ろうとしていることだ。 「わが勲は民の平安」 それが『1984年』のような平安なら、まっぴらごめんこうむりたい。 【中古】 中原の虹(1) 講談社文庫/浅田次郎【著】 【中古】afb 【中古】 中原の虹(2) 講談社文庫/浅田次郎【著】 【中古】afb 【中古】 中原の虹(3) 講談社文庫/浅田次郎【著】 【中古】afb 【中古】 中原の虹(4) 講談社文庫/浅田次郎【著】 【中古】afb お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2019.03.31 14:35:44
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