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空想俳人日記手塚治虫作品限定版

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2007年03月23日
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カテゴリ:マ行
ひとつとせ ふたつの自分 見つめなき 


 手塚作品の中で、この漫画は、そして主人公は、特に後期作品の中でも、強敵「ブラックジャック」に匹敵するほどの人気作品であり、人気主人公ですね。主人公の名は写楽保介。
 とりわけ「ブラックジャック」に、現代社会への批判や医学への警鐘があることからして、軍配をこちらにあげる方も多いようですが、中には、黒男とピノコの一元的な関係より、写楽と和登さんの微妙な関係に魅力を感じている方も結構いるようですね。
 そんな結構いる方に対し、お粗末かつ失礼かもしれませんが、以下こんな評価の筋道をする人はいないでしょうけど、聞いてくだしゃんせ。
 その傍ら、和登さん、オヤジキラーでありまして、もともとの写楽イコールシャーロック・ホームズに対するワトソンくん。そんな存在の類似もさることながら、自らを写楽に映す男どもの、シャーロック・ホームズとしての社会的存在を支える二律背反、廃藩置県、治験合憲なる「ホントはこうだけどね、仕方ないのよ世の中は」的な言訳の裏の甘え構造が、この作品でニタニタと、嬉しいんですよ。だからこそ、そんな写楽を愛するワトソンくんこと和登さんは、若くしてオヤジキラー、まるでスカーレット・ヨハンソンじゃないけど、若いのに熟してるのですよね。
 でもね、喜んでいる場合じゃなくて、あなたがシャーロックだとして、ワトソンくんを本当に理解できているのでしょうか。ひとつ聞きます。「あなたのホントは、バンソウコを貼った写楽くんなの、それとも剥がされた写楽くんなの?」。そう聞かれたら、大概は「仕事的にはバンソウコ剥がれた三つ目」で頑張るけど、仕事終わるとバンソウコ貼られにおねえちゃんとこ行って「和登さん、いっしょにお風呂はいろう」っつう写楽なるみたい。
 別に、それでいいんだけど。いけなくないけど。でもさ、なあるほど、なんだけど、本当にそのとおりなの? なあんて疑うと思うでしょ。いえいえ、そんな気は毛頭ありません(あのね、本当は疑ってみたいと思いますよ。でも、誰も本当のこと、言わないでしょ。ほら、学生時代に、あんなに落第点ばかりとって馬鹿にされました? それでも気にせず年下の幼稚園児と砂場で遊べました? それが故に、同じ学年の人から馬鹿だチョンだで、仲間はずれ、いじめられましたか?)。
 さあて、そんなあなたにとって、バンソウコは何なんでしょう。三つある目をひとつ隠すバンソウコ。なら本性を隠すっていうことでしょうか。はい、そこで問い直したいのは、先に書いた(カッコ)書きの経験。そういう経験がありますか、そして今一度、本当に本性は、バンソウコなしの写楽保介ですか。仕事を終えて、おねえちゃんに甘える方が本性なのではないですか。ちょっと考えてください。
 写楽保介を、人間誰にでもある二面性とか、はては、ジキル様とハイド君のような二重人格としても見られます。でも、どちらがどちらを隠しているのか分かりませんよね。しかも、そんな二面性、いわゆる矛盾する人格を持った一人の人間を、和登さんという人は、理解している人間と言えるんですね。
 その駄目押しに、二人のオヤジさんがキャスティングされてますね。一人は医師(犬持医師)ですか、写楽の第三の目を手術でなくしたほうがいいとする育ての親。一人は写楽のバンソウコ剥がした力を期待する考古学者(須武田博士)。この二人が、写楽の二面性にお互い片方に偏っていながら、和登さんは、写楽の両面性を矛盾があろうと二律背反であろうと認めます。だから、より一層、存在が大きいんですね、和登さんは。
 それに、もう一人、手塚氏は途中からですが偉大なる音楽家であり、現代では刑事役なる、ベートヴェンを登場させます。雲名警部という名前ですね。彼が何故に必要になったのか。不幸な存在として? 彼は、ナポレオンを英雄と思い作曲をしましたが、ナポレオンが英雄なんかでなく、帝国の帝王となったときに、その曲を捧げるのを止めます。ナポレオンがここで登場するわけではありませんが、運名刑事は明らかに手塚氏自身の登場とも言えますね。彼を登場させることによって、写楽の育ての親であろうが、写楽の第三の目を認める存在であろうが、様々な事件が起きる度に、雲名警部の方が写楽の身近で彼を絶えず見ている。いくら育ての親であろうが、いくら彼の全知全能への理解者であろうが、雲名警部以上に運命を共にしていない。男っていうのはそういうもんだ。手塚氏は最後まで現場で働いた人でしたね。
 ところで、お話の観点からすれば、琵琶湖の秘密やら、イースター島やマヤ文明の謎やら、浦島太郎伝説やら、曖昧な伝説的歴史に対し、三つ目族という仮説でバッタバッタとひとつの解釈を打ち出していきます。しかし、それが全て真実である、そう作者である手塚氏が思っていたわけではありません。あくまで仮説です。しかし、そんな仮説を設定することで、思い込みがちな人間の一方向での営みやその歴史に対し、懐疑の眼を向けている訳です。そうして見れば、ここでの三つ目族は、私たち二つ目族の行く末をすでに経験した存在として語ることができているのですね。
 そういうことがスルスルっと理解できると、私たち人間が社会の中で鵜呑みにしていることがいかに多いか、そう思えてきます。仕事に打ち込む人々が、いつのまにか、その結果が何をもたらすのか見えなくなっていること。また、逆に、いい加減だらしなく生きている存在が、ひとつのことに拘らずに、いろいろなユーモアやエスプリなども含め、頓珍漢であろうとする。
 どちらがバンソウコありで、どちらがなしか、もうお分かりですね。そうです、私たちは、この「三つ目がとおる」を読むことで、いい気になって頑張っている人々の行為が果たして本当に頑張ってしかるべき行為なのか、そういう達観と言ってもいい物事の見方考え方を教えてくれます。それは、どんなに社会の頂点にいる人でも、その頂点を極めんがために眼が節穴になっていることも、本当は分かっているはず。
 この「三つ目がとおる」という漫画は、読む人たちに、周りで仕事だ社会だと人生の価値に盲目的に突き進んでいる人たちと語り合えても染まるべからず、それを教えてくれます。自惚れて普通の人以上の力を過信し人をも巻き込む人間たちに、チョイト待てよ、そう思って欲しいがために、手塚氏はこの作品を書いたのではないでしょうか。そう思うと、和登さんが聖母マリアにも、ブッダにも思えてきます。
 いや、そう思いながらも、あえて頭をふりふり・・・。でもでもね、やっぱり、セーラームーンでも魔女っこメグでもないんだから、普通の女の子なんでしょうね。そう言えば、学生の頃、クラスメイトに和登さん、いたような気がしてきました。うん。





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最終更新日  2007年03月23日 17時08分14秒
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