病もち 人の世ありなん 食べ放題
ブラック・ジャックを読んでいると、様々な病名に出くわします。ここでは、小頭症、植物人間、白皮症、ウィルス腫、嵌頓ヘルニア、悪液質、子宮外妊娠と無頭児、縦隔腫瘍、心筋梗塞、縦隔気胸・・・。外科医としてのブラック・ジャックは、果敢に立ち向かいます。外科医として。
しかし、「密室の少年」という作品ではどうでしょう。彼は患者である少年をPKと見定めます。ペナルティ・キックじゃないですよ。サイコキネシス (Psychokinesis)のことですね。
とにかく、外科医の対象外の少年に立ち向かう彼が素晴らしい。少年の母親さえ息子のことが分かっちゃねえ、こういう親って、この作品が描かかれた当時よりも今の方が多いんじゃないでしょうかねえ。
ブラック・ジャックは心理学者でもなければ精神科医でもありません。ただ外科手術を少年に促すために心を開かせ、自らの体験を生かして心を共有するんですね。
無免許医という社会の枠組みから外れ、しかも心の病を治す先生としての資格もありません。でも、この作品で明らかに真の「先生」と呼ばれる人物に相応しい人間像であることが分かります。彼が無免許でありながら様々な病と格闘するのは、免許とかレッテルで生きている、ここでのT大の心霊超科学研究室の物野毛先生みたいな人たちとは違う、それが自らの人生を生きること、そのものなんでしょう。だから先を生きているお手本、真の「先生」なんですね。
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