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生命を もてあそぶ 霊長類よ
冷凍睡眠によって人工的な延命を行う札貫一族。しかし、冷凍睡眠の弊害により、良心を失った主人公の札貫一郎は、姪の真理との近親相姦や殺人(弟や父親などなど)を繰り返します。 面白い、といっても笑えるという意味ではありませんが、この冷凍睡眠によって札貫一族の中には、娘が二十歳でその母親が十八歳、というように年齢の錯綜が起きています。そして、その年齢の錯綜、甚だしい存在として、な、な、なんと2000年も眠っていた女性ヒルンが半ばで登場します。 この謎の女性ヒルンを一郎が面倒を見るのですが、殺人罪による逃走生活がヒルンと一郎の関係を縁り密接にしていきますね。片や姪の真理はいけないと知りながらも伯父の一郎を愛するがために、一郎を追いかけますが、そこに加わるのが刑事役の本日休業です。あ、これ、名前なんです。おそらく、本日が姓で名が休業なんでしょう。 この刑事の登場で、おそらくヒルンという2000年前の女性の謎が解けていくのでしょう。しかし、しかしです、この作品、未完なのです。昭和45年1月22日号より「現代コミック」という雑誌で連載が開始され、のちに掲載誌が『COMコミックス』に変更され連載が続けられましたが、同誌の休刊により、未完の作品となっちゃったんですね。 この作品がどのような結末を迎えるのか、未完の最後のページが私にむくむくと想像させます。で、ここで、その後の展開はこうではないか、というのを私の独断と偏見で以下、綴ってみましょう。 未完のまま、その余韻に浸っていたいという方は、これ以降は読まないで下さい。せっかくの手塚氏の作品を台無しにしているかもしれませんので。 では、私なりの続き・・・実は、最後のページの子宮を想起させるイメージから。おそらく、2000年前の女性ヒルンは一郎の子を宿すことになるのでしょう。仮に、その子の名前をヒルイチコとしましょう。女の子です。さて、それとともに、姪と伯父の関係である真理と一郎の間にも。真理のおなかの中には、一郎の子が育ちつつあったのです。仮に、その子の名前をマリローとしましょう。男の子です。 さて、ヒルイチコとマリローは、結局、本日休業と真理によって育てられることになるのです。というのも、一郎とヒルンは逃走の途中、飛行機事故で死んでしまうのです。あな、あっけなや。悲しみに暮れる真理。慰める本日休業。そして二人は結婚。本日休業はいきなり自分の子ではない二人の息子と娘の父親になってしまうのです。あな、人情家。 さて、ヒルイチコとマリロー、思春期を迎えるとともに、想像のとおり、二人は愛し合うようになります。しかも、ヒルイチコの方は、ほんとの母親ではない真理に殺意を抱きます。マリローは、ヒルイチコを好きですが、自分の母親である真理への殺意に対して、ヒルイチコに憎悪も感じます。ヒルイチコは真理を殺害する計画をたてますが、明らかにその殺意をマリローが感じ取っていることを性交の最中に敏感に察知し、真理の殺害計画を変更するのです。不安になったマリローが真理を冷凍睡眠にしてしまうことも輪を掛けて。それは、マリローの子を宿し、生まれてくる子に真理を殺させるという計画に。そしてヒルイチコはマリローの子をめでたく出産します。仮にヒルマロとしましょう。男の子です。ところが、ヒルマロは思春期になると、冷凍睡眠中の真理を起こし、殺害に乗り出しますが、真理を見るや否や欲情にかられ、真理を犯してしまいます。祖母である真理を。真理はヒルマロの子を産みます。以下、同様に続く。その間、まるで毎日が休業のようにずっと傍観を続ける本日休業でした。彼は、ヒルンこそ最も進化発展し滅んだ古代人類生き残りであろうことを理解するとともに、現代人の未来を悲観しながら。 ところで、札貫一族の中で生き残っている人たちはどうなったの? 全ての人類がヒルン化していく中で、人里はなれた山にこもり、それはそれは平和に暮らしましたとさ。どっとはらい。 手塚先生、ごめんなさい。先生の作品をもてあそんで汚してしまったようです。陳謝とともに、合掌。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007年07月09日 13時00分20秒
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