カテゴリ:ハ行
病など 人であれば 生まれつき
ブラック・ジャックは外科医です。精神科医ではありません。そのことは「鯨にのまれた男」の中でも、記憶喪失を治せないのかの問いに彼は「私は外科医でね」「精神科は専門外なんだ」と断言しています。 と言いながら、「小さな悪魔」で、胞状奇胎の母親を手術するブラックに息子が敵意を抱き、手術前に睡眠薬を飲ませ敵を討とうとします。その息子がやらかした行為をピノコに「小さいときには男の子なら母親を女の子なら父親を愛するもんだ」とエディプス・コンプレックスを紐解きます。まあ、これくらいは、何も精神科医でなくとも一般人でも知っていることかもしれませんが。 ちなみに、この作品で手術中に眠りこけてしまうブラックを救うのはピノコ。彼女はカラシをひとびん全部食べさせますね。その直後のブラックの効き目が凄いですね。いつもの真剣そのものの手術行為からは信じられない壮絶な術式。気になる方は本屋さんで立ち読みしてください。いえ、買って読んでください。 そんなわけで、外科医としてビジネスライクに割り切ろうとしながらも、お節介に主人公たちの心や人生観に立ち入ってしまうのですね。それは、当然のことながら、ブラックの心の中に手塚氏の魂そのものが吹き込まれているからにほかなりません。 もう一つ、ユニークな作品をご紹介しましょう。「B・Jそっくり」という作品。同業者でブラックの影法師のような黒松という名の、金の亡者で吸血鬼医者。演ずるは、あのドン・ドラキュラ。あはは。 ブラックの台詞に「おれは初めておれの姿を他人の目で眺めることができた」という件があります。他人に自分がどう映っているか。これなんぞは心理学的暴露と言えましょう。そう暴露ドラマを演じさせながら、さらに影法師であるドン・ドラキュラとは違うぞ、そんな否応なしではない、意識的な側面も見せます。これこそ、心理学的境地に追い込まれたブラックの本音暴露ですね。ここまでもブラックに苦悩の葛藤を演じさせた手塚氏は、類い希な監督さんでもあると思います。 ところで、そういう話で影法師としての役に引きずり出されたドラキュラ伯爵はぼやいているかもしれませんね。「ワシだって作者から魂を吹き込まれてるんだ。たまたまブラックとの対比がために出演を承諾したけど、彼と同様に、いやいや彼なんか以上に、わしは人情味溢れとるんよ」と。分かってますってば。全然大丈夫。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年03月16日 23時13分49秒
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