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カテゴリ:プライベート
父は学徒出陣の海軍で、終戦間直に、駆潜艇というもの乗っていて、ある時、爆撃され、艇は沈没。三メートル程の板を持って、海に飛び込んだことがあるらしい。それについて、本人が書いた手記がある。「私が歴史にふれた時」というタイトルで、そのクライマックスとも言える一節をここに書き写す。
「板の上に腹這いになり両手で水をかきながら、沈没時の渦に巻き込まれないよう、一刻も早く艇側から離れなければならなかった。 思ったより波が大きく、相当離れたところを泳いでいるらしい中尉や兵隊たちの声がかすかに聞こえる。艇は沈んでしまったらしく、姿が見えない。真黒い波が大きくうねってくる海面は、なぜか静けさもあって、七月の真夏でありながら無性に寒気を覚えた。波に漂いながら暗い夜空を見上げると白い丸い月が出ていた。 その時、私は死もなく、生もなく、また家も国もなく、たった一人で、波間に浮かんで、なにひとつ考えることもなかった。」 ●結局、一時間後に救助されたのだが、戦争の思い出話は、聞けば語ってくれるが、このことについては話をしない。ただ、この手書きの手記を気に入った僕に、彼は「お前が持っていてくれ。」と、それを手渡してくれた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2018.03.25 13:06:31
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