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500羅漢の微笑み(境界線とメディア)

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年度末の忙しさがポッと肩すかしを食らったかのような公園清掃や自立支援の仕事の合間を縫うように、つれあいの雀のチュンを連れだってまたまた古書ほうろうへ。
 今日は楽しみな水族館劇場が古書ほうろうにやってくる日。間に合った~♪
 ほうろうには軒下もあるけれど、縁もある。雀のチュンがおととし、ほうろうの店員某と「今度一箱古本市に出るんですよ」とニンゲンのコトバで言うのに透かさず「偶然ですね、私も」ですと吾輩が反応して(尻尾を出して)しまったのが、そもそもの逢い初め(あいぞめ)。
 だからほうろうに足を向けて眠れない(尻尾は出す)。
 その後も谷中の芸工展で吾輩、チュン双方とも参加者として一定のパフォーマンスを別のところでお見せしていたので、ここでもエールを交わしている。したがって、芸工展の主催者側、つまりは元の谷中学校や間間間(さんけんま)のほうにも足を向けて眠れない。
 さしずめ、ほうろうや一箱古本市の不忍通り沿いは西。芸工展の目抜き通りは東、ということになろうか。ところが、最近はそれが縦糸横糸、縦横無尽に絡み合っているのだから(この地域、いわゆる谷根千(やねせん)好きはみんなちょっとずつ知り合いの知り合いになっていてその的確な密度を以てして谷根千たらんとしている。谷根千の意思じゃ~)、さあさあ、どちらに足を向けて眠ればいいのやら。雀(チュン)は立って寝るのだろうか。。。
 
 前口上はこのくらいにして。
 水族館劇場は大観音で観て以来のことだが、今回は“水母(くらげ)なす「敗者」の精神史”といった感があってじつに参った。「水母なす漂へる時」の古事記の冒頭の闇と山口昌男の明治が一気に配達されてポストに一杯、だ。横尾少年の配達によるものか!(横尾忠則さんの個展も銭湯を改造したスカイザバスハウスで開催中)
 冒頭から観客(古書の客でもある)を軒下に誘い込み、雨の中、チンドン姿の劇団員が、アジールチンドンよろしく浮かれては、ひょいと剣(つるぎ)の舞。パチパチパチ。
 明治時代の漱石のアンカット本をペーパーナイフでページごとに切る気分と申し上げたらよろしいのでありませうか、ほうろうさん。

吾輩は観劇経験はさほどじゃないが、これは80年代に観た(観てしまった)劇団態変以来のことかもしれないと思った。変態の逆さの態変は脳性まひ者やポリオなどの障害者劇団でレオタード姿で舞台を這いまわる。介助者と黒子の境目がなくて、劇論も交わす。吾輩も東京公演でちょびっと助っ人したし、一軒家で長崎盲学校の連中と住んでいた時(ボクサーも住んでいたけれど)には、劇団員の一人もよく泊って行ったので、そこでも劇論を交わした。10数年前、機関誌「イマージュ」のたしか2号あたりにワークショップのことを書いた記憶があるが、食べることを巡っての、その方法と内容の格闘についてを隠れたモチーフに書き上げたものだ。代表の金萬里さんも存在は密度だという。谷根千の密度、存在の密度。その密度の中で、脳性まひの不随意筋の面白さ。うん?何の意思? 
これを持ち出されては我々は太刀打など出来ない。ああ剣の舞。
 うーむ今日はなかなか前に進めない。たどりつけないドラマ剣―。
 そうだ、今日は「たどりつけない、たどりつかない」話にしたかったんだ。

 話は第二部のウチザワさんと水族館劇団の桃山さんの話に飛ぶけれど、これがひじょーに面白く、内澤さんはその著書『世界屠畜紀行』でも対象の迫り方がものすごく良くて、この迫り方は、アーティストも福祉関係者もビジネスマンも盗むべきなのだと思っていたが、その辺を桃山さんが対談の最初に具体的な書きっぷりに言及しながら、対談の足場として組んでいかれたのでこれまたビックリ(本職は建築関係)。内容じゃなくてね、迫り方から組み上げるあたりが、現場人間なんですね。こういう人には憧れます。
 で、ウチザワさんから、じつは芝浦と場などでの「自身」が毅然としてみせた中に、もうひとつ、働いている人からどう見られているかという「自分」があって、そこを突破するのに攻めに出た。つまりは境界線の向こう側に行ってみた。いわゆる、ゴールキーパーが攻められそうになって、身を呈して外に飛び出すみたいなことか。という話に食らいついた桃山さん。これが攻めることが免罪符になっていないか、素直にそこを吐露してみせたウチザワさんの心の襞にきらめくものを感じて? 透かさず、日常空間では鶏すらバラすのに躊躇するというウチザワさんの一文へと導いて、われわれをも導いてくれた。これには脱帽。返す刀で剣の舞、じゃなかった、劇団員には、肉体練習も発声練習もさせていないという話になり(ひとつのこれも下手をすると免罪符かと吾輩にも感じた)、そうではなく、と畜にも通底するような異質なものを劇団員にあてがい、醸成させ、その旬を劇空間に持ち込むというのだ! 
 そうすると、簡単に「たどりついた」なんて言ってはいけない・言えないところに追い込まれるのではないだろうかと思った。そうした時のプルプル打ち震える弱い自身の羅針盤にこそ、あの劇中に出てきたシャボンだったか、何だかの(こういう肝心なところを吾輩は覚えていないので劇評が書けないのだ泣)、あらゆるものを映しこむ「純なもの」、に賭けることになるのではないか、そのための準備、準備、みなさん、準備はよろしいですか(劇中の西郷どん風に)。
 鞍馬天狗のおじさんは山谷の泪橋。実際にも主役の山谷玉三郎さんは山谷の人だ。何人かの仲間も駆けつけた。吾輩も指定業者として半年ほど前まで、山谷の人と仕事を3年ほどずっとしてきた。カントクと呼ばれて恐れられている(笑)。もっともうちはワーカーズコープだから、協同で仕事をするのが基本なので、清掃も山谷の人と一緒に仕事をしてきた。夏も冬もきつい。山谷の人も口は荒っぽいけれど、もう体のほうがそこまで動かない人も、逆に吾輩たちのような若造には及びもつかない凄い人もいる。でも、ここでもそうした背景を読み込みつつどのように、40人の仲間に気持ちよく仕事をしてもらうか、これは奥深い仕事に思う。たぶん、ウチザワさんの迫り方にも通じるものがあると思う。
 桃山さんはその世界でもずっと共にしてきた人であった。ああ、こういう人にはかなわない。本は読まないというわりには、ガタリなどの話がポンポン出てくるし、打ち上げもまた楽しであった。見れば、チュンはウチザワさんの輪の中でパタパタやっている。そうだろうそうダロウ。ナンダロウアヤシゲさんと吾輩は80年代の話と一箱のプチ提案で盛り上がる。ちなみに今年の一箱古本市には吾輩も登場の予定なり。それが終わると水族館劇場の駒込の大観音で公演があって、と谷根千の密度はかくのごとくなり。(2744文字)





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最終更新日  2008年03月20日 13時07分16秒


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