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500羅漢の微笑み(境界線とメディア)

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■『たまらねぇ場所築地魚河岸』生田與克 2010年発行
ジャンル名:産業・工業 675.5


タイトルに釣られて本書を手にした。一本釣りだ。
どう、たまらねぇん、だろうか? 楽しみだ。私はちょうど20歳の時に、秋葉原に在ったやっちゃば(青果市場)に入ったことがある。そこの食堂でバイト先の八百屋の親方と食事をした。親方に連れられて市場の中をきょろきょろした。ほんのひと時だったが、生きた市場を、セリの様子を目に焼き付けて帰った。鳥肌が立った。単なる見学者ではない、これからここで選ばれた野菜を今度は店頭で自分が売るんだ、という思い、ほんとーにこの時は一緒に連れて来てくれたことに感謝した。経済学で習う「市場」という言葉が薄っぺらに感じたのもこの体験による。
 本書の紹介場所は築地の魚河岸(中央卸売市場)。マグロ仲卸三代目の獲れたての文章は生きがいい!
 荷受(卸売業者)から魚を仕入れて魚屋、寿司屋、スーパーなどに売る仕事が仲卸業者の仕事だそうだが、魚によっても開始の時間が違うようで、マグロは早朝4時頃に仕事を始め、5時半にセリの鐘が鳴り、8時ごろまでが混雑のピークだという。
 セリ場を運営する荷受はもっと早くから、例えば、セリ時間に合わせ順々にトラックから降ろして荷をさばく小揚の人。冷凍マグロの尾をナタで落とす(のではなく尾っぽ紛失防止のため皮一枚本体に残す!)人。こうしてセリが始まるが、札の付いた帽子の仲卸業者が指サインでセリに加わり落札。5~10秒の早業だ。客観的で公正な値段が速やかに決まる優れた方法だと著者も胸を張る。相対取引もあって、駆引きも面白い。セリの言葉は1000円はピンマル。1100円はピンピン。あまり使われなくなったが符丁言葉もある。今でも寿司屋さんでは板前から帳場に値段を通す時使われているらしいから、谷中のすし「乃池」さんにでも入ったら聴けるかもしれない。1=ピン、2=リャンまたはノ、3=ゲタ、4=ダリ、5=メノジ…。
 東京ドーム6個分の広さをもつ東京都中央卸売市場築地市場である。隅田川に面したほうに扇型に広がっている。昔は貨車も入ってきたそうで、今もホームの面影があるらしい。
扇型に仲卸もひしめく。魚別のゾーンがあるわけではない。床に打たれた鋲が仲卸同士の境界線だ。間口は1mあまり。知恵を使って積み上げたり、あるいは、最大積載1トンでも小回りのきく(最小旋回半径204cm)のターレという乗物を使いこなす。また知らなかったが、4年に一度くらいのペースで市場内店舗移動が行われることだ。場所による格差をなくすこと、仲卸の鑑札の流動性(辞める仲卸から鑑札を譲られても店が離れていては別々の営業のままになる)を高める意味もあるようだ。
 築地市場の移転の問題、そして、見学者のマナーの問題と何かと話題にはなるが、本書で、著者が描く「魚は気まぐれな自然から恵んでもらうもの。極端に言えば、明日のことは明日になってみないと分からねぇってなもんで、…マニュアルなんか作っても何の役にも立たないシロモノになってしまう」とか、うっかり魚の尾を持ち上げたら、「てめぇ、なんてことしやがんだっ!(身が)割れちまうじゃねぇかっ!」とオヤジに叱られた言葉などに耳を目を傾けることがいま、この3・11以降のいまこそ大事ではないだろうか。
(1319字)





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最終更新日  2011年09月13日 14時16分11秒


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