メダルラッシュに日本中が熱狂…のわけがない
すごく古い話で恐縮だが、昔、「一杯のかけそば」という話が話題になった。マスコミによると「日本中が感動して泣いている」ということになっていて、某新聞などは、「一斉にころがる一億の豆のように」同調して感動する光景を批判してみせたりもしていた。ところでその「一杯のかけそば」であるが、筋書だけみたのだが、正直、ばかばかしさしか感じなかった。大体、父親が交通事故を起こし、二家族に賠償しなければならないので、母親と二人の子供が窮乏生活をするという設定からして変だ。父親の損害賠償債務は相続放棄すればよいだけの話で、十年以上も母親が支払い続ける必要はないだろう。そしてこの物語のハイライトである蕎麦屋のかけそばを親子三人で分けて食べるというのもどうだろうか。当時でも、袋に入った家庭用そば麺が安価で売られており、外食で分け合って食べるくらいなら自宅で食べた方がよいだろう。そして最後は息子二人が一流銀行員と医師になるという「ハッピーエンド」なのだが、これって世にはびこる学歴社会の価値観そのままではないのだろうか。周囲でも、ばからしいとか、くだらないという感想が多く、マスコミでいう「日本中が感動」というのとはずいぶん距離があると思った。だから今、マスコミが騒いでいる「メダルラッシュに日本中が熱狂」というのも本当なのだろうかと思う。五輪の拝金主義や五輪貴族の傲慢ぶりに嫌気がさした人も多いと思うし、ついに1万人の大台を超えた感染者数も不安だ。やはりオリンピック開催前から懸念されていたことがついに起こったという思いでいっぱいで、メダルラッシュに熱狂する気になれない人もけっこういるのではないか。