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2005.11.09
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カテゴリ:思い出のU.S.A
思い出のU.S.A 『prologue』
思い出のU.S.A #2『LosAngeles 上空』
シリーズ物の続きです。




連絡もなく彼女は会いに来た。

何故、その日会いに来たのか…
わかりすぎるほど…わかっていた。

世田谷 上馬に借りたアパート…。
日も余りあたらない…狭いワンルームの部屋。

チャイムがなってドアを空けると彼女は立っていた。

何も言わず、中に入ると…
静かにコーヒーを入れだした。

ふたりとも何も言わず黙っている…
もう、交わす言葉は決まっている。

それから、1時間位が過ぎただろうか…。

日も暮れて、あたりは暗くなっている。

「わかってる…好きな人が出来ただろ?」

「……………」
うつむいている。

「 大事にしてくれそうか?」

心は、不思議と静まり返っていた。

彼女のコーヒーは、少し口をつけただけで…冷めている。

うつむいたまま…
その冷めたコーヒーカップを手に取った。

「俺が会わなくても、大丈夫か?」

しばらくしてから彼女の重い口が開いた。

「うん…大丈夫だから…」
大粒の涙が膝の上に落ちていた…。

「そうか。いい人見つけたな…」

素直に、そう言えた。

「俺の事は、忘れて…その人と歩いて行け…」

彼女は、黙ってうつむいている。
ポタ…ポタと間隔をあけて涙が落ちている。

「でもな…何かあったら…
もし、何かあったらな…」

「その時だけは俺の事を思い出せ…
そして…その時は、必ず連絡して来いよ…」

ゆっくりと大きく、うなずいた。
「うん…」はっきりと力強く答えてくれた。


あの時…迷い、悩み苦しんでいた心を…
解きほぐしてくれた。

「後悔してほしくない…だから行ってきて…待ってるから…」

そう言って約1年弱の間
自分の帰りを待っていてくれた人。

成田に帰ってきた時のあの嬉しそうな笑顔。
成田空港から横浜駅行きの高速バスに乗った。

そのバスの中で手を握り…
渡された一冊の『日記帳』

「待ってたから…ここに全部書いてあるから…」

ひと言、彼女はそう言った。

そんな女を…
今度は、俺が黙って…背中を押してやりたい…

気持ち良く…背中を押して…
その背中が見えなくなるまで…

見送ってやりたかった。

「行ってきて…」
そう彼女が、言った時。
心が決まった。

その時にわかっていた。
この日が、いつか来る事を…

出来る事はしてきた。
俺の手で幸せにしてやりたかった。

でもね…。
精一杯やったつもりでも器がたりなかった。

U.S.Aで経験した1年弱…
それは、俺にとって余りにも大きな経験だった。

帰ってきた時には、変わっていた。
考え方の根本が…
日本を発つ前と…。

そんな俺に、彼女は戸惑った。
こんな風になって帰ってくるとは思っていなかった…。

彼女の中では、旅発つ前の俺しかいなかった。
アメリカを経験していない俺で十分だった。

彼女が思い描いていた
ふたりの結婚生活の夢と現実。

そのショックからくる寂しさと…悲しさ。

わかっていた。
でも、変わってしまった考え方を
元に戻す事は出来なかった。

その寂しさを埋めてやる事が出来なかった。

ふた月程前から気がついていた…。
「誰かを好きになったんだな」…と。
でも、何も気がついていないようにしてきた。
彼女が、それを告げにくるまで…
何も知らない事にしようと決めていた…。
そして、その日が今日…訪れた。

気がついてから、この日まで…
何度となく読み返した『日記』
それを読む度…
辛かった。

好きだから…
愛しているから…
そう…それは、何の解決にもならなかった。

お互いに、そうであればあるほど…
傷つけあう事もある。

お互いに出来てしまった距離を…
縮めようとすればするほど…
遠くに行ってしまうこともある。

ただ、その時の俺は…
違う道を歩き始める決心をした彼女を…

彼女のために素直に送り出してやる事が
彼女にしてやれる最後の「ありがとう」だった。




思い出のU.S.A #4『別れ (追記)』







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シェフの落書きノート 日記、記事の目次





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Last updated  2023.10.15 22:44:34
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こんばんわ!   hasunohana7777 さん
切ない話しですね。胸が痛くなりました。
私も前の彼氏が上馬に住んでいたので
余計に感情移入して読んでいました。

別れるとき、後にも「ありがとう」を
言える仲って素敵ですね。
そういう大切な人に出会えるって
人生で何人いるんだろう。

別れるの悲しい、寂しいって思っても
彼女のことを考えて送り出してあげられるって
すごい大人!!
別れは嫌ですね。
別れにすごく敏感になって怖くなって
人と出会うのが嫌になってしまうことが
あります。

素敵な恋ですね。
とっても切なくなりました。

(2005.11.10 03:05:10)

Re:こんばんわ!(11/09)   aura cucina さん
hasunohana7777さん
>別れるとき、後にも「ありがとう」を言える仲って素敵ですね。
>そういう大切な人に出会えるって人生で何人いるんだろう。
---------------
出来れば逆に少ない方が良いのかな…?
でも、好きな人と違う道を歩むとしたら…心の中に優しく温かく残る恋愛したいですよね。
---------------
>別れは嫌ですね。
>別れにすごく敏感になって怖くなって人と出会うのが嫌になってしまうことがあります。
-----
最初から別れを考えて会ってはマイナスですよ。
良い出会いが出来なくなってしまいます。
別れ=悲しい
それだけではありません。
出会い=楽しい、幸せ
こっちの方が優先順位が高いと思うのですが…。
大丈夫! 気楽に気楽に…プラス思考です。

(2005.11.10 03:48:03)

おはようございます(^.^)   ペリッサ さん
きゅんとなります。(*_*)
どちらが悪いわけでもなく、aura cucinaさん も彼女さんも。。。何がなんでも傍についていく情熱や、お互いを大事にしあう気持ちも、すべて気持ちが葛藤しての結果ですし…
とても素敵な思い出になってますよね?それともずっとココロに残っていくのかな。。。でもそれも有りですよね(:_;) (2005.11.10 07:59:30)

Re:別れ(11/09)   riripon77 さん
涙がとまりませんでした。
私も数年前同じような言葉を言われた事があります。
いつでも困ったときは頼ってこいよ。って。
何だかほろ苦い思い出です。 (2005.11.10 09:45:20)

Re:別れ(11/09)   ぜん さん
本当に料理人なの?って言いたくなる様な文章ですね! いろいろな才能をお持ちの方で早くお会いしたくなりました  (2005.11.10 10:11:10)

Re:別れ(11/09)   CHI-AKI さん
切ない恋ですね。

夢のためにアメリカ行きを応援してくれた彼女と、
アメリカでしてきたいろいろな経験で変わってしまったaura cucinaさん。

二人とも、未来にハッピーエンドを描いていたはずなのに、離れている間に出来てしまった見えない隔たりと、価値観の変化……。

環境が変わると、いろいろ刺激されたりして、ものの感じ方&考え方が変わったりしますけど、全く変わらない人っていないですものね。

良い方との出会いがあると、いいですね☆


P.S.書き込み、ありがとうございます☆
揚げかぼちゃのマリネって、イタリアンだったんですね~(作っていながら、知らなかった(笑))。 (2005.11.10 10:13:55)

Re:おはようございます(^.^)(11/09)   aura cucina さん
ペリッサさん
>きゅんとなります。(*_*)
>どちらが悪いわけでもなく、aura cucinaさん も彼女さんも。。。何がなんでも傍についていく情熱や、お互いを大事にしあう気持ちも、すべて気持ちが葛藤しての結果ですし…
>とても素敵な思い出になってますよね?それともずっとココロに残っていくのかな。。。でもそれも有りですよね(:_;)
-----
ほとんど思い出すことはありません。
でも、心のひきだしの奥にしまってあります。
そんな恋や愛の思い出…
誰にもありますよね。
すべてが完結に近いかたちで終わりをむかえると…
新しい道が開けているものですよね。
(2005.11.10 13:59:47)

Re[1]:別れ(11/09)   aura cucina さん
riripon77さん
>涙がとまりませんでした。
>私も数年前同じような言葉を言われた事があります。
>いつでも困ったときは頼ってこいよ。って。
>何だかほろ苦い思い出です。
-----
忘れてしまう恋愛よりも…
良い人に出会って、お互い磨きあって…
心にいつまでも焼きつく恋愛を求めてしまいます。

riripon77さんも良い出会いをしてますね。
心の奥にしまっておいてあげてくださいね。
新しい物語は、そのページに書き込んではいけませんよ。
また、遊びに来てくださいね。
待っています。
(2005.11.10 14:07:40)

Re[1]:別れ(11/09)   aura cucina さん
ぜんさん
>本当に料理人なの?って言いたくなる様な文章ですね! いろいろな才能をお持ちの方で早くお会いしたくなりました 
-----
いえいえ…私の才能なんてほんの少しです。
ただ、心に焼き付いている事を素直にそのままかいてるだけですから…
でも、お褒めのお言葉…
どうもありがとうございます。
オイラは、あいも変わらず大したことはありませんが…。
お会いする日を楽しみにしております。

(2005.11.10 14:11:50)

Re[1]:別れ(11/09)   aura cucina さん
CHI-AKIさん
>夢のためにアメリカ行きを応援してくれた彼女と、
>アメリカでしてきたいろいろな経験で変わってしまったaura cucinaさん。
>二人とも、未来にハッピーエンドを描いていたはずなのに、離れている間に出来てしまった見えない隔たりと、価値観の変化……。
>環境が変わると、いろいろ刺激されたりして、ものの感じ方&考え方が変わったりしますけど、全く変わらない人っていないですものね。
>良い方との出会いがあると、いいですね☆
-----
この物語は、ものすごく昔の話です。
私も気がついたら年をとってしまっています。
でも、大人になれないって言われるのかもしれませんが…。

これは、とりあえず恋の物語も含んでいますが…
アメリカでの話を書くつもりです。
皆さんの気になっている恋の結末…
いきなり書いてごめんなさいね。
でも、これを書いておくと読みやすくなると思ったので…。
これから、間の部分を断片的に…そして全く違う記事を挟みながら書いていきます。
宜しければお付き合いくださいね。
お待ちしております。
(2005.11.10 19:50:46)

今いっきに   mako8885 さん
読ませて頂きました。
その時は苦しかったり悲しかったりする事も
思い出になるとセピア色のせつないけどいい思い出となってませんか?
それぞれの人生がありそこに交差しながら又それぞれの人生がある・・・・
分岐点にたった時選ぶ道は一つだけど
きっとaura cucinaさんは進んだ道、後悔はしてないんですねぇ!
そんなaura cucinaさんのお料理はやく食べに行きたいです(^o^)丿 (2005.11.11 00:21:39)

Re:今いっきに(11/09)   aura cucina さん
mako8885さん
>読ませて頂きました。
>その時は苦しかったり悲しかったりする事も
>思い出になるとセピア色のせつないけどいい思い出となってませんか?
>それぞれの人生がありそこに交差しながら又それぞれの人生がある・・・・
>分岐点にたった時選ぶ道は一つだけど
>きっとaura cucinaさんは進んだ道、後悔はしてないんですねぇ!
>そんなaura cucinaさんのお料理はやく食べに行きたいです(^o^)丿
-----
makoさんには、わかるのですねぇ…。
全てお見通しです。
頂いたコメントの一言一句…
見透かされたようでした…笑

ありがとうございます。
早くお身体の調子を取り戻してくださいね。
ガッカリさせないよう頑張らなきゃ…です。
お待ちしております。

(2005.11.11 00:43:13)

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