「中国では酒井法子と深田恭子の人気が高い」という話...
中国情報局を運営するサーチナの調査によると、中国における日本の芸能人の知名度では酒井法子が7割でトップ、次いで浜崎あゆみ、木村拓也。好感度も酒井法子6割でトップ、次いで深田恭子だそうです。一方、CHEMISTRY、GLAY、Kinki Kidsなどの男性芸能人の好感度は総じて低かったそうです。この調査は2004年10月にオンライン上で行われたそうです。一方、中国社会科学院日本研究所が同時期に実施した調査で、日本人に対して「親近感を感じない」中国人は過半数を超えていて、「親近感がある」は6%程度に過ぎず、2年前の調査よりも対日感情が悪化したようです。ここでまず注意したいは、中国における「調査」のパネル、つまり調査対象者のプロファイルです。日本の芸能人調査はオンライン調査です。調査対象はあくまでもネット環境にある方、ということになるでしょう。中国のネットユーザーは約8,000万人(2003年末CNNIC)といわれています。数では日本以上かもしれませんが、人口比ではわずか6%程度です。都市部の高校生・大学生、或いは大卒以上の労働者が中心ユーザー層と考えられています。中国のテレビ視聴率調査などの調査対象者は、当然無作為に抽出されています。例えば、北京市区部のパネル特性を調べてみると、ネットユーザーは1/4くらいです。世帯月収が4,000元(約5万5,000円)以上だと10%以下になってしまいます。日本企業が消費者調査を実施する場合、世帯月収3,000元~4,000元以上を調査対象にしたりすることがありますが、これは北京市区部であっても全体の10~25%の高所得者層を対象とした調査であって、北京全市民を対象にした調査ではない、ということを理解しておく必要があるでしょう。つまり、中国全人民の7割が酒井法子を知っている、ということでは無く、都市部の知識層の7割が酒井法子を知っている、と考えるべきです。例えば、深田恭子を知っているか、北京の一般市民に尋ねても、知っている、と答える人はほとんどいません。ただ大学生に尋ねれば、かなり多くの人が知っている、と答えるかもしれません。深田恭子が出演した日本のテレビドラマは北京では放送されていませんでした。金城武と共演した「神様もう一度だけ」というドラマが、台湾から入ってきた海賊版VCDで2~3年前に大学生など若者の間でちょっとしたブームになったくらいです。木村拓也がサーチナの調査で知名度第3位になったのも、金城と共演した映画「2046」封切直後だったことが影響しているかもしれません。知名度・好感度とも、女性芸能人が高く、男性芸能人が低いという点も注目に値します。大前提になるのは、中国社会科学院の調査結果どおり、「中国では日本人は好かれていない」ということ。この点については、日を改めて話題にしたいと思っていますが、私の推測ではこちらの調査対象はある程度「無作為抽出」されている、つまり中国の全体像をほぼ代表した結果になっている、と思います。「親近感が無い」イコール「嫌い」にはならないかもしれませんが、私の感覚では、特に北京において、日本人は嫌われ者の代表格です。それが年配の方中心か、というと、そうではありません。日本人が嫌い、と思っている若者はかなり多いのです。これは中国の学校教育において、90年代以降特に反日色が濃くなったことと、やはり90年代以降日本の大衆文化(ポップカルチャー)が地下に潜ってしまった(メジャーなメディアに登場しなくなった)ということに、大きく起因しているのではないか、と考えます。しかし、嫌われているのは日本の男性のほうです。日本人の女性はかなり人気が高いようです。中国では抗日に関連する時期に、旧日本軍の蛮行を描いたテレビドラマをよく放送します。悪いことをする日本人の多くは軍人さんですから、日本の女性はあまり登場しません。一方、「ひとつ屋根の下」や「星の金貨」の酒井法子にしても、「神様もう一度だけ」の深田恭子にしても、貧困や障害や悲恋に、けなげに耐え忍んでいく女性であって、中国女性には見出せない奥ゆかしさがある人物設定です。こうしたドラマを見た中国人は、そんな日本の女性像を思い浮かべてしまうのでしょう。日本の女性と久しく交流の無い私にとって、現実の日本の女性が果たしてどうなのか、いまはもう語ることはできませんが...