戦争法案が何故憲法に違反しているのか、その理由を憲法学者の長谷部恭男氏は、7月28日の東京新聞で次のように述べている;
他国を武力で守る集団的自衛権の行使を認める安全保障関連法案は27日、参院で審議入りした。衆院に続き、法案が憲法違反かどうかが論戦の焦点だ。6月の衆院憲法審査会で違憲と指摘し、論争のきっかけをつくった憲法学者の長谷部恭男(やすお)・早稲田大教授(58)に聞いた。 (聞き手・上野実輝彦)
-法案はなぜ違憲か。
「集団的自衛権の行使は憲法では認められない。違憲の法案が内閣から提出されること自体が大変な問題だ。衆院を通過し、立憲主義の危機が一段階深まった。もう一点挙げると、他国軍への支援は他国の武力行使と一体化する可能性が極めて高くなる」
-安倍普三首相は「一般には海外で武力行使はしない」と説明している。
「首相は地球の反対側で武力行使することを否定していない。行使の基準は『総合的に判断』とするだけで、限定されていない。安倍政権は憲法解釈を思い通りに変更するために内閣法制局長官を代えるなど、何をするか分からない」
-最高裁は砂川事件判決で、行使を否定していないと政府は主張する。
「集団的自衛権行使の合憲性は全く論点となっていない。一部を文脈抜きで利用する牽強付会(けんきょう)の理屈だ」
-1972年の政府見解を行使容認の根拠にすることに正当性はあるか。
「72年見解は集団的自衛権行使が憲法上認められない理由を説明したもの。集団的自衛権行使を正当化するのは見解の基本的論理を踏み越えている」
-日本に影響する軍事的な脅威やテロの危険が高まっているとして、法整備を進めているが。
「仮にそうだとしても、おかしい。米軍支援のために自衛隊を世界中に派遣すれば、日本防衛の資源を地球全体に拡散させてしまう。サッカーでいえば、自陣ゴールが危ない時に守備陣をフィールド全体に拡散させるようなものだ」
-憲法学者の大多数が違憲と指摘している。
「今回は9条研究者以外の憲法学者も含め、圧倒的多数が違憲だとしている。通常は積極的に発言しないはずの元法制局長官たちまで国会やメディアで発信している。過去の国連平和維持活動(PKO)協力法案などの時とは全く違う」
-国民の理解も進んでいない。
「理解はむしろ進んでいる。審議するほど法案の違憲性とおかしさが明確になっている。参院審議でも、さらに多くの国民が違憲だと理解を深めるだろう。あきらめてはいけない」
2015年7月28日 東京新聞朝刊 12版 2ページ「審議するほど『違憲』明確に」から引用
内閣が国会に憲法違反の法案を提出するというのは、為政者が主権者である国民に対して憲法停止を宣言するのと同じで、謀反を宣言したも同然であり、これはクーデターのようなものだ。わが国の歴代内閣は、このような異常事態を避けるために法案の作成に当たっては憲法との整合性を確認する内閣法制局という部局をおいて、この機能を担わせてきたのであるが、安倍内閣の場合は、事前に任期途中の法制局長官を辞めさせて、自分の言うことをよく聞く人物を法制局長官にするという「悪事」をはたらいている。この時点でクーデターは始められたものと認識するべきであった。このようにして踏みにじられた憲法を、国民はどのようにして立て直すか、考えなければならないし、このような事態を防止するためには、憲法を蔑ろにした政治家を厳罰をもって処罰する「国家反逆罪」というような罰則を定めた法律を制定する必要があるのではないだろうか。国家は天皇や政治家のものではなく、我々国民のものである。教員の政治活動を禁止する法律よりは、はるかに世の中の役に立つと思われる。