カテゴリ:名作の散歩道
春、夏、秋、冬に章立てされ、英国はデヴォンシャーの自然の景色を織り交ぜ、読書、思想、雑感を主人公「ヘンリ・ライクロフト」に語らせている。
貧乏生活であったところ、思いがけない年金が手に入り、1軒の家を持ち、家政婦に家事を見てもらい、悠々自適の余生に入る。 隠居生活をあこがれる英国人、重厚な図書室にて安楽椅子に座って、本を読みふける英国紳士。 ミステリーの好きなイギリス人。 そんなイメージを彷彿させるエッセイ風小説。 なによりも、不幸だったギッシングが「ヘンリ・ライクロフト」に悲壮なまでに思い入れしていること! それが迫ってくる。 私がこの本を身近に置いておくのは、次のシーンのため。 『ほとんど止む間もなく降る一日。けれども私には楽しい一日であった。朝食をすませてデヴォン州の地図(私は良い地図の愛好者だ!)によみふけって、計画中の旅行の道順をたどっていた。そこへドアにノックの音がして、ミセスMが大きな茶色の小包をもってきたのだった。一目見て中味は本だと分かった。数日前ロンドンに注文をだしておいたのだが、こんなに早く来るとは予期していなかった。胸をどきどきさせながらきれいに片づいた卓子の上に小包をおき、暖炉の火を直しながらも、そちらばかりに気をとられていた。それからペン・ナイフを取り上げ、粛然と、かつ悠然と、しかもそのくせ手をぶるぶるふるわせながら小包をほどき始めた。』 よーくわかる。 『装丁が初めてちらっと見えたときのあの感じ!「本」の、最初の匂い!』とか『うやうやしくこの書物を手に取り、静かにページを開ける。』など。 おおおおー。やってる、やってる。と思いつつ好きになるのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[名作の散歩道] カテゴリの最新記事
|
|