御手洗潔さっそうと初登場、御手洗シリーズの必読書と思い読んだ。が、変人御手洗の名探偵振りというより、むしろ記憶喪失の語り手の物語が、トリックと変化にみちていて面白かった。推理より地の物語が印象的である。
語り手にとって、なぜ、御手洗潔が異邦の騎士にみえるか。過去も名前も何にもわからない霧の中ような世界における一筋の光明、すがる綱になってくれた人だからである。
作者があとがきで、本格ミステリ作家となって漕ぎ出した世界が、五里霧中の危険と苦しい世界だった、ということが付け加えてある。だから、
この語り手は最後まで本名がわからない、のも憎いなー。