『生き上手 死に上手』遠藤周作
随時集は短文の集まりでも、その作家なり人となりがにじみでるのだけれど、この集はちゃんと人生論になって、上手く一冊の本にまとめられている。作家があちらこちらにお書きになるとき、そうしようとてその意識がおありだったのかも。
老年というのはふしぎなもので若い折の肉体や壮年時代の知性はたしかにおとろえていくが、ある種の触覚・感覚はとぎすまされていく。そのとぎすまされていく間隔をシュタイナーは次なる世界への媒介感覚といった。
氏60代ころの文だけど、わたしの年齢でちょうどいい、よくわかる。
としをとるほど見えてくる、もう一つの世界への旅立ちの準備。
「自分の救いは自分のなかにある」
「余白のなかの完成」
「生活の挫折は人生のプラス」
「よく学び よく遊ぶ」
「すべてのものには時季がある」
目次を並べればなるほど、ごもっとも、なにしろ文章がうまいから。
氏ほど病に苦しまず、世間にも知られていないけど、この心境は共感できる。
「死ぬときは死ぬがよし(良寛)」の言葉がお好きだそう。