釣 瓶 落 し の 女
今では井戸も釣瓶も見かけないから
釣瓶落しなんて誰も知らないでしょう
釣瓶とは棹や縄の先につけた桶のことです
これを井戸の中に落しいれて水を汲み上げるのです
私は子供の頃に田舎の家で見たことがある
井戸の中を覗くと深い井戸の底に私の顔があった
おばあちゃんが釣瓶を放すと井戸の底に
スルスルと真っ直ぐに落ちていった
井戸の中でパチャッと釣瓶の水音がした
おばあちゃんは何度も釣瓶を落して水を汲んだ
その井戸はいつも暗くて不気味な水の色だった
あの光景をいまでもはっきり覚えているのです
井戸水はあの当時の命の水だったのです
ええ~わが家の庭に井戸を掘って
かれこれ10年くらいになります
釣瓶落しを子供たちに体験させたくて・・・
土曜日や日曜日には近所の子供たちが
集まってわいわいやっているわ””
水なんて水道栓をひねればいくらでも
じゃんじゃんでる時代なんだけど・・・
何を思ったのか時代離れの井戸から
大人も子供も楽しみながら学ぼう
それが井戸を作った理由なんです
昔は井戸から水を汲んでいたことを
子供たちに体験させたいのです
いまでは親子で来てくれる人もいるわね
井戸から水を汲み上げることで少しは
水の大切さがわかってくれるでしょう
釣瓶落しの光景を子供の心に残したい””
それが水を大切にする秘訣だと思いました
秋の日は釣瓶落しのように日が暮れるものです
あっというまに日が暮れるから昔から・・・
「 秋の日は釣瓶落し 」いいストンと急速に
日が暮れることをそのように表現しました
暮れなずむ秋の日に縁側に佇む女がいた
釣瓶落しの秋の夕暮れだった