朝倉慶氏の著作物としては、この「もうこれは世界恐慌」は前作の「2012年、日本経済は大崩壊する!」の次に相当する。 「日本経済は大崩壊する」では、中国経済の他、投資銀行のロボット・トレーディングがどれほど普及してしまっているか等のコンテンツが多く含まれていたが、この書では主にEU問題と若干話題としては古いがオリンパスの事件でのゴールドマン・サックスの儲けの手口を詳細に説明している。
本日、以下のようなEU問題の記事がまた出ていたが、「もうこれは世界恐慌」から抜粋すると、通貨の問題はユーロになってしまってから、再び元の通貨(ギリシャの場合、昔懐かしいドラクマですねw)に戻すことはとんでもなく難しいらしい。 これについてはある意味国際金融資本家の手先でもあるジョージ・ソロスが「目玉焼きを元の卵に戻すようなものだ。」と比喩している点も面白い。
出版は、2011年12月と新書ではないが、EU問題の時系列でおさらいしてみたいと感じられておられる方、EU問題の危険性がどれくらいのものなのか知りたい方には至極おすすめの一冊である。特に、EU圏内における、ギリシャのGDP比率は多いものでなく、これがさらにスペイン・イタリアに飛び火するとどうなるか??? また、これ迄のドイツ・フランスを含めた諸国の救済策やギリシャ国債の保有、CDSがどうなっているかを再確認する意味合いでも目を通しておいて損はない。
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ギリシャがユーロ離脱なら「クレタは独立するよ」と現地住民- NEWSポストセブン(2012年10月20日07時00分)
資産運用や人生設計についての多数の著書を持つ作家・橘玲氏が、世界経済の見えない構造的問題を読み解くマネーポストの連載「セカイの仕組み」。債務危機で揺れるギリシアの国民は何を考えているのか。実際に現地を訪れた橘氏はこう解説している。
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ギリシアの南端に位置するクレタ島はエーゲ海ではもっとも大きな島で、牛頭人身の怪物ミノタウロスが閉じ込められていた迷宮クノッソス宮殿の遺跡で知られる。イラクリオはクレタ島最大の都市で、観光拠点でもある。
クレタはギリシア文明発祥の地とされ、紀元前3000年頃には文明が起こり、紀元前18世紀~紀元前15世紀に黄金期を迎え、各地に壮麗な宮殿が建てられた。イラクリオの考古学博物館には、クレタ(ミノア)文明の貴重な出土品が展示されている。
その考古学博物館の手前に小さな広場があり、まわりに瀟洒なカフェが並んでいる。「ミソス」という地ビールを飲みながら、カフェのオーナーに、ギリシアはユーロから離脱するのか訊いてみた。
「バカバカしい。そんなことして、いったいどうなるっていうんだい?」ちょっと肩をすくめて、オーナーはいった。「もしギリシアがユーロから離脱するんなら、クレタはギリシアから独立するよ」
ギリシアでは5月の総選挙で、EU(欧州連合)主導の緊縮財政路線を進めてきた与党連合が過半数を割り込み、共産党や急進左翼連合などの左翼政党と、極右政党「黄金の夜明け」が大きく票を伸ばした。だがどの政党も組閣に失敗したため、6月にふたたび総選挙を行なうことになったのだ。
日本のメディアは、この選挙で反EUの連立政権が生まれれば、ギリシアはユーロを離脱して大混乱になると報じていた。欧米の論調も、「ギリシアのユーロ離脱の可能性は3分の1以上」と悲観論一色だった。
再選挙後の混乱を恐れて、ギリシアじゅうの銀行から預金が引き出されていた。もしユーロから離脱して旧通貨のドラクマに戻れば、その価値は3割から5割減価するといわれていた。だったら、預金封鎖の前にユーロ紙幣をタンス預金しておこうと誰もが考えたのだ。その結果、財政危機が発覚した2009年末からわずか2年で、ギリシア国内の銀行預金は20パーセント(約5兆円)も流出した。
そんな「混乱」のなか、私はクレタ島にいた。だがイラクリオは平穏そのもので、カフェのオーナーは、「デモやストの報道のせいで観光客が減ってさんざんな目にあった」と愚痴っていたが、それでもまだ余裕はありそうだ。
夏のクレタには、ヨーロッパじゅうから観光客が押し寄せてくる。夏休み前だというのに、ミラノからの直行便は家族連れで満席で、カフェやレストランはどこも観光客で賑わっていた。イラクリオは、ギリシアでもっともゆたかな町なのだ。
ギリシアの最大の富は、美しい海と抜けるような青い空、そして古代ギリシア文明の遺産だ。この3つを独占するエーゲ海の島々は、春から秋にかけての観光シーズンの集客だけで経済が回っている。彼らにとって、ユーロ離脱になにひとつメリットはないのだ。