|
テーマ:試写会で観た映画の感想(678)
カテゴリ:洋画(ら行)
原題: THE LOVELY BONES 監督 : ピーター・ジャクソン 原作 : アリス・シーボルド 出演 : マーク・ウォールバーグ 、 レイチェル・ワイズ 、 スーザン・サランドン 、 スタンリー・トゥッチ 、 マイケル・インペリオリ 、 シアーシャ・ローナン 試写会場 : よみうりホール 公式サイトはこちら。 <Story> ある冬の日、近所に住む男(スタンリー・トゥッチ)に殺されてしまった14歳の少女スージー(シアーシャ・ローナン)。 少女は天国から愛する家族を見守り続け、殺人者に対する家族の復讐心が癒えることを祈るが…。 [ 2010年1月29日公開 ] ラブリーボーン - goo 映画 <感想> 主人公のスージー・サーモンを、『つぐない』で13歳という史上7番目の若さでアカデミー助演女優賞にノミネートされて注目を集めたシアーシャ・ローナンが演じており、これだけでももう興味津々な作品。 試写に行ってきました。 予告でももう、「私は14歳で殺された」とあり、また映像もこの世のものではないような雰囲気でしたので、「死後の世界」!? などと観賞前は想像してました。 でも実際はそうではなく、スージー・サーモンは、自分がいた世界を、天国(というか、この世と天国との境目のような場所かも?)から見守っているという設定です。 自分が失意のままに死んで行ったあと、果たせなかった約束の行方ですとか、自分の大切な人たちがどのように暮らしているのかをそっと見ている。 大事な人たちが、思いも寄らぬ方向に行ってしまったり、自分の思ったように世の中がなっていかなかったりするのを、やきもきとしながら見ているスージーの姿は、仏教的な言い方をするならば、「成仏できてない」と表現すればよいのでしょうか。 「この世」と「あの世」があり、だけどそのどちらにもスージーは位置せず、中間に存在している。 あえて例えるのなら「三途の川」になるのだろうか。 彼女が佇んでいる四阿(あずまや)のような建物がある場所は、大抵水辺であったり、また水場の真っただ中だったり。 これはまるで三途の川ではないだろうか。 ここは天国よ・・・ という仲間(→ これも悲しい仲間たちでしたね)の声を聞きつつも、まだやり残したことがあると言うスージー。 この世に未練をたっぷり残したまま死んでしまった彼女にとって、それは短い彼女の人生に華を添えたことだった。 だからこそ自分の想いをきちんと伝えておきたかったのだろう。 それには彼女は自由にこの世とあの世を行き来できる必要があった。 そのための三途の川、あのシチュエーションかと思われる。 この登場人物の中で異彩を放っているのが、初恋の相手・レイ。 彼は「ムーア人」と呼ばれていたけれど、そのこともこの話の展開に関係があるようにも思う。 キリスト教文化のなかに、仏教やイスラム教(ムーア人に信者は多いそうです)の概念を取り入れているように感じたからだ。 こんなことを調べ始めたら、ちょっとした卒論のテーマくらいに十分なりそうなので(苦笑)、これは詳しい方にお任せしたいけど、テーマとしては非常に興味のあるところ。 「転生輪廻」という言葉があるが、それにこの状況は似ているように思う。 厳密に言うと、「輪廻」はないけど(→ これがあってしまったら、リンジーは違う結末だった)、「転生」に近い感覚(厳密には違うんだけどね)はあった。 すなわち、自分の存在を知らしめて危険を教えるカメリアである。 この原作は世界で1000万部の売り上げがあったそうですが、残念ながら私は全く知りませんでした。 欧米の概念にはない感覚を取り入れていくことが、世界の人たちにはとても新鮮なものの見方だったのではないかとも想像できます。 仏教圏の人たちには、転生輪廻は自然に植えつけられているような気もしますので、それほどこの小説はクローズアップされなかったようにも思うんですね。 この映画で注目を浴びていくことでしょうけど。
映画に戻って、シアーシャ・ローナンちゃんはずいぶん美しくなりましたよね。 これからますますきれいになっていくんだろうなと思いながら観てました。 そしてスタンリー・トゥッチ! 先日観た『ジュリー&ジュリア』 の艶男? とはまるで違う、隠された狂気を演じていました。 スージーを追い込んでいくシーンはうすら寒く、リンジーとの緊迫感あるシーンは観応えありました。 両親役のマーク・ウォールバーグ 、 レイチェル・ワイズ 。 彼らも、それぞれ抱えた立場の心情をうまく出していました。 自分の家族が被害に遭うことが自分に与える変化、ダメージ。 それは、最初は受け止められると思っていても、いつどのように牙を剥いてくるのかわからない。 もちろんそれは家族への愛の裏返しなんですけど。 妹のリンジー役・ローズ・マックィーバも、話が進んでとても美しくなっていってびっくりしました。 最高だったのは、おばあちゃん・リン役のスーザン・サランドン。 こんなにナイスなおばあちゃんはいいなあ。 たぶん彼女自身もものすごくショックを受けているはずなのに、それを吹き飛ばすかのような言動。 それが1つ1つ前向き(それも、わざとらしくない)なのが、観ていて気分がいい。 そう言えば、リンのセリフにも仏教が登場しています。 ここで伏線を張ることによって結論づけているんでしょうか。 あと、スピリチュアルな存在としての同級生ルース。 彼女はいわば「巫女」的役割なんでしょうね。 さまよっているスージーの魂を媒介していました。 最後の持っていき方は人それぞれだと思うんですが、この概念に則して考えると見えてくるようにも思いました。 無念の死、非業の死を遂げた人々が持つ想い、そして残された家族が抱える想い。 それをどこまで昇華できるかということだと思います。 人によってはこういうテーマは納得がいかないと思われますが、これもまた、犯罪に巻き込まれた時の選択肢としてあり得るのではないでしょうか。 いつの時代にも、変質者はおり、犠牲者もいる。 その許しがたい事実をしっかりと覚えておくということが前提ですが。 彼女たちへのレクイエムのようでした。 更にそれを締めくくるオチとして、ここにも仏教の「輪廻」(というか、循環?)の概念が組み込まれているのは面白い。 ツケは自分で支払うということ、しかもそれを自然界が下すということ。 ここは短い場面でしたけど、これを読み取れると、この映画が持つ深みにもさらに触れられるような気がします。
今日の評価 : ★★★★ 4/5点 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[洋画(ら行)] カテゴリの最新記事
DVDになるまでぐっと我慢・・と、思っていましたが
映画館で観たくなってきました(^-^*) 『つぐない』の時のシアーシャ・ローナンの演技が印象的だったので 今回も期待してます♪ 見終った後に、あれこれ考えられそうで楽しみです。 (2010.01.22 10:30:18)
あまり読んじゃうと
ネタばれしそうだったので星の数だけ見ました(笑)。 結構よかったみたいですねー。 この「ラブリーボーン」のほかに 「かいじゅうたちのいるところ」と 「Dr.パルナサスの鏡」を楽しみにしているんですが どれも似かよったテイストなのが問題だ・・・。 (2010.01.22 11:30:55)
私はいま一つスッキリしない作品だったんですよ~。シアーシャ・ローナンちゃんは上手いは美人だわ、スタンリー・トゥッチは素晴らしくキモイわで文句のつけようもないんですけどね。エンディングもあれはあれで、キリスト教的な思考を感じたんでそれはそれで良いと思ったし。
ただ、なんか登場人物が個々にばらばらというか…、場面場面は凄く素敵だったり、悲しかったり、感動したりしたんですけどね…。 (2010.01.22 19:52:44)
こんにちは~
★4ですが、仏教っていうキーワードがなかったら、私もこれを存分に納得できずに終わるところでした。 ストーリーだけを追わない方が楽しめますよ。 (2010.01.23 09:06:28)
まだこの映画は公開していませんが、
観てみたいと思っています。 最初の天国のCGに持っていかれますね。 自分が夜寝てみる夢もカラーであんな感じだな~とか思います。 (2010.01.24 18:07:46)
お話の概略だけを考えると、わりとシンプルな物語にも思うのに、
描かれている内容は多くを語っていて、 さらに仏教的な要素や、異文化の人間たちのいろんな思想も交じり合っていて・・・ 多くのことを感じさせる要素を含む分だけ、一言では言い表せない作品でした。 また一方では 若い娘(といってももう1少女ではないですが)を持つ母として、 いずれ成長したら母とは違う立場で楽しく付き合いたいと思う孫娘を持つ婆としての視点もあって、 それも含めるから余計に、後に残されても生きて行かねばならない家族へのメッセージにも取れたのかもしれません。 まだ感想が充分にまとまっていなくて、自分が何を言いたいのかわからない感じです。。。 (2010.01.29 21:23:33)
こんばんは~
>多くのことを感じさせる要素を含む分だけ、一言では言い表せない作品でした。 そうなんです。 観終わってしばらく、「?」な状態だったんですが、友人の一言で「そうか!」とひらめきました。 それだけ、多くの視点から語ることができそうです。 >若い娘(といってももう1少女ではないですが)を持つ母として、 >いずれ成長したら母とは違う立場で楽しく付き合いたいと思う孫娘を持つ婆としての視点もあって、 >それも含めるから余計に、後に残されても生きて行かねばならない家族へのメッセージにも取れたのかもしれません。 >まだ感想が充分にまとまっていなくて、自分が何を言いたいのかわからない感じです。。。 ----- そうですよね。。。 年頃の娘さん、女の子のお孫さんがもしもこういう目に遭ったらと思うと、胸が潰れそうになりますね。 スージーはきちんと心の整理ができたように思ったんですが、ご両親は果たしてどうだったんでしょうか。 スージーのように、割り切って生きていけるのかと考えると、それも時間がかかりそうです。 あるいは、割り切ったつもりでも生涯できないかもしれない。 こういう犯罪は一番卑劣なだけに、無縁で過ごしたいものです。 (2010.01.29 22:11:33)
卒論並みの深い考察、感服しました~(笑)
おばあちゃん、瀕死の人を助けると自分が云々言ってましたね。家族の中で不自然に明るく振舞っていた彼女が、レイチェル・ワイズが家を出て行くのを見つめるシーン、印象的でした。 スージー成仏のための復讐劇にはなっていませんが、結果としてあのオチはなるほど、深いものがありそうです。 (2010.01.29 23:53:26)
こんにちは~
>★ ←星にしてみた(笑) 何でもいいってば!w >卒論並みの深い考察、感服しました~(笑) それはどうもです(笑) パクられないようにしないと!? 笑 >おばあちゃん、瀕死の人を助けると自分が云々言ってましたね。家族の中で不自然に明るく振舞っていた彼女が、レイチェル・ワイズが家を出て行くのを見つめるシーン、印象的でした。 あのおばあちゃんもすごく象徴的な存在でしたね。 普通なら「母親のアンタがしっかりせにゃーアカンやないの!」とか何とか言いそうなのに、それを一切させなかったのは、彼女がメッセンジャーであることと、もう1つは個人的な視点を尊重する人だってことを表現したいからかなと感じました。 >スージー成仏のための復讐劇にはなっていませんが、結果としてあのオチはなるほど、深いものがありそうです。 ----- 復讐劇にしようと思えばたぶんできるんだと思うのですが、それですと普通の小説っぽい展開です。 これは多少独特ですが、映像にすると映える視点が面白かったです。 (2010.01.30 07:36:25)
確かに仏教っぽかったかもしれないです。
金色の草原に1本の緑の大木という光景はキリスト教を象徴しているように思いますし・・・ インドもしくは中東出身のレイはイスラム教徒かも・・・ そういう意味では、スージーは天国とこの世の間を彷徨った後、 天国に行くのではなく再生するのかも知れないですね・・・ それを仏教では輪廻転生と取るし、キリスト教では天国に行くと取るのかも・・・ なんて、全くなんの根拠もないですし、宗教話は深くしない方がいいですね(笑) とにかく映像がキレイでした。 そしてシアーシャが素晴らしかったです。 (2010.01.31 02:56:11)
こんにちは~
特定の宗教に偏らず、いいとこ取りというか、必要なものを引っ張ってきた感じでしたが、効果はありましたね。 ムーア人のレイの設定が気になりますが、解釈がつかないので保留(笑 >そういう意味では、スージーは天国とこの世の間を彷徨った後、 >天国に行くのではなく再生するのかも知れないですね・・・ そのあたりは観客のイマジネーションにゆだねる部分でもあると思いますね。 >とにかく映像がキレイでした。 >そしてシアーシャが素晴らしかったです。 ----- そうそう。 映像が美しかった。 シアーシャもこれからどんどん綺麗になるんでしょうね。 (2010.01.31 10:38:31)
もうスーザン・サランドンがおばあちゃん役というのが当たり前になりつつあることに時代を感じましたよ。
でもスーザン・サランドンとレイチェル・ワイズとシアーシャ・ローナンちゃんがいる家になら、めちゃ遊びに行きたくなりますわ! マーク・ウォルバーグが羨ましい! (2010.01.31 16:36:19)
>妹のリンジー役・ローズ・マックィーバも、話が進んでとても美しくなっていってびっくりしました。
私もこの変化にはびっくり。そして・・標的になるけはいにぞくぞくしました。 灯台のダークなシーンも見事でしたね。 (2010.01.31 21:07:50)
こんばんは~
これは結構お辛かったんじゃないですか? やっぱりどうしても実生活と映画が重なってしまいますよね。 あのシーンは緊迫感ありました。。 (2010.01.31 23:30:30)
こんばんは~~。
なんだか自分の中で納得出来なかったことがrose_chocolatさんのおかげで見えてきました・・・ あのラストには、どうしても納得出来なかったんですが >それをどこまで昇華できるかということだと・・ それで、わざとああいう結末にしたのかもしれないですね。 宗教的な問題もありますが、亡骸にはこだわらない。ということもあるかもしれないし・・・ 許すこと。これが大切なのかも。 スージーも一時は犯人を心から憎んでいましたね。 それでも前に向かって進んで行った。 それによって他の少女たちも救われた・・・ 映画なのに、フィクションとは思えない雰囲気でした。 映像は本当に美しくて、感動しました。 (2010.02.01 22:29:09)
こんばんは~
>なんだか自分の中で納得出来なかったことがrose_chocolatさんのおかげで見えてきました・・・ ありがとうございます。 実は私も、観た直後はわかんなかったんですが(笑)、同行友人の感想でひらめきました。 そんなものかも・・・ >あのラストには、どうしても納得出来なかったんですが >>それをどこまで昇華できるかということだと・・ >それで、わざとああいう結末にしたのかもしれないですね。 >宗教的な問題もありますが、亡骸にはこだわらない。ということもあるかもしれないし・・・ 敢えて見せないってことですよね。 見ない方がファンタジーとしては確かにいいんでしょうね。 あっけないと言えばそうなんだけど、それまでの流れを細かく見せてきてのあのラストですから、一気に結論を持ってきたとも言えるように思いました。 >許すこと。これが大切なのかも。 >スージーも一時は犯人を心から憎んでいましたね。 >それでも前に向かって進んで行った。 >それによって他の少女たちも救われた・・・ でもねえ・・・。 実際にそうできるかと訊かれたら、これは難しそうです。 そこまでできるのは本当に境地に達さないと無理ですね。 普通の人じゃできません。 たくさんの死を無駄にしないようにというメッセージなのかな。 それだけアメリカじゃ変質者の犯罪が多いと言う事になるもんね。 >映画なのに、フィクションとは思えない雰囲気でした。 >映像は本当に美しくて、感動しました。 ----- 美しかったですね! 自分まで、この世とあの世の境界にいるようでした。 (2010.02.04 01:59:17)
rose_chocolatさん、こんにちは!
確かに欧米人の宗教観からすると中間世界というのは、新鮮かもしれませんね。 おっしゃるとおり日本人にとっては成仏できないというイメージが非常に近いですよね、 俳優陣ではシアーシャ・ローナンは初めて観たのですが、年頃の女の子としては難しい役所だとは思いますが非常に演技がうまくて感心しました。 スタンリー・トゥッチは変幻自在ですよね。 僕はアメリカ版の「Shall We Dance?」の役(オリジナルで竹中直人さんがやっていたやつ)が印象的でだったのですが、芸の幅が広い方ですよね。 (2010.02.07 16:26:06)
こんばんは~
>確かに欧米人の宗教観からすると中間世界というのは、新鮮かもしれませんね。 何か、三途の川みたいなシーン多かったですね。 そこで行き場もなく考える・・・ みたいな。 >俳優陣ではシアーシャ・ローナンは初めて観たのですが、年頃の女の子としては難しい役所だとは思いますが非常に演技がうまくて感心しました。 『つぐない』でも、主役のキーラ・ナイトレイを食うくらいな感じだったように記憶してますので、ぜひぜひ。 「Shall We Dance?」は日本版もアメリカ版も観てないんだけど、スタンリー・トゥッチはそれに出てたんですね。 なるほどー。 今回も、『ジュリー&ジュリア』とはまるで違う役で、初めわからなかったな。 (2010.02.07 17:58:42)
こんばんは~☆
やはり西洋には存在しない仏教的考えが、斬新だったのでしょうね。 天国に行くか行かないかは、整然の行いで決まるのがキリスト教の教えなので、想いを遂げられないから成仏できないという発想は、きっとめずらしかったのでしょう。 (2010.02.10 07:48:37)
こんにちは~
>やはり西洋には存在しない仏教的考えが、斬新だったのでしょうね。 >天国に行くか行かないかは、整然の行いで決まるのがキリスト教の教えなので、想いを遂げられないから成仏できないという発想は、きっとめずらしかったのでしょう。 ----- 白か黒かという概念の西洋に比べて、中間というか灰色というか、それがあるのが東洋文化ですもんね。 「どうしてもこれをしないと死に切れない」っていう願いは切実ですもんね。 どうしてあの結論なのかというのもそう考えると切ないけど。 まだ~むさんはお嬢さんがおられるから、このあたりの感覚ってひしひし来られたんじゃないでしょうか。 (2010.02.11 11:38:48)
>ここは天国よ・・・ という仲間(→ これも悲しい仲間たちでしたね)
穏やかな彼女達をみて、涙でました。 未練や憎しみを断ち切り、前にすすんでいく。 作者の一番いいたいことなんでしょうね。 自然にまかせる東洋的な発想。 原作を読みたくなりました。 (2010.07.08 13:15:13)
こんばんは~
自分だったら、あんな風に穏やかになれるだろうか? 許せるのだろうか? と考えてしまいます。 自然に・・・というのは東洋的発想で、それを取り入れたのは面白かったですが、 もしも現実に起こったら、そうはできないかもしれないなーと。 (2010.07.09 02:47:02) |