テーマ:社交ダンス(8651)
カテゴリ:映画のはなし
美しい影絵から始まるおとぎ話のような物語でした。
『アメリ』のような『ショコラ』のような『八日目』のようなファンタジー。 悲しいテーマだけれどコメディっぽい。 2011年のフランス・ドイツ・ベルギー合作映画です。 昔、テヘランにバイオリンの名手がいました。 彼の名はナセル・アリ。 師匠から譲り受けた名器を妻によって壊され、それに代わるバイオリンを手に入れようと奔走しますが不可能な事が分かると死を決意します。 このお話は、彼が死ぬと決めてから実際に死ぬまでの8日間の回想録です。 彼がまだ若く無名だった頃、一人の女性に出会いました。 イラーヌ、美しいイラーヌ。 彼女の父親に結婚を反対され引き裂かれた恋は、彼の心に大きな変革をもたらします。 奏でるバイオリンの音色が劇的に変わり、師匠に『もう教える事はない』と言われて世界に羽ばたいて行ったんですね。 叶わぬ愛を音に変えて彼はいつもイラーヌと共にありました。 月日が経ち、ナセル・アリは母親の強い勧めで数学教師ファランギースと結婚します。 彼は彼女を愛せませんでした。 でも彼女の作る鶏のプラム煮は好きでした。 多分これが『叶わぬ恋』や『夢』と対極にある『日常生活』の象徴なんでしょうね。 ナセル・アリが死を決意して部屋に閉じこもってから、何とか彼を引き止めようと妻は鶏のプラム煮を作るんですね。 実は彼女、子供の頃から秘かにナセル・アリに想いを寄せていました。 家庭を全く顧みない夫に対して積もり積もった不満がバイオリンに対する八つ当たりとして爆発しただけだったんです。 そのせいで夫が死ぬなんて、もう愛は冷めたとしてもやりきれないでしょう。 しかし彼は再び『日常』に戻る事を拒否し続けます。 叶わぬ恋や絶望と言った暗いテーマがベースにあるにも関わらず、彼の子供たちの天真爛漫さやふざけた古美術商、死の天使アズラエルなんかも出て来て笑えます。 『アメリ』に似てると思ったのは、偽物バイオリンを売りつける古美術商や物乞いの役として出て来たジャメル・ドゥブーズがアメリで強烈な印象を持った役者さんだったからかもしれません。 『ショコラ』に似てると思ったのは、おとぎ話のような描写の仕方から、『八日目』に似てると思ったのはカウントダウン方式で一日ずつ運命の日に近付いて行く展開からです。 でもこの映画の監督はこれらの監督とは無縁の新人、イラン出身の女性マルジャン・サトラピでヴァンサン・パロノーと共同で脚本・監督を務めています。 ナセル・アリの母親役の女優さんがイングリット・バーグマンに随分良く似てるなと思ったんですが、実は彼女の娘だったんですね。イザベラ・ロッセリーニ。父親はロベルト・ロッセリーニ監督です。 マルチェロ・マストロヤンニとカトリーヌ・ドヌーヴの娘もとても個性的な役で出演してます。言われてみれば面影がありますね。 大将は相変わらず映画半ばで寝てしまい、『どんな話しだった?』と聞くので『すてきなラブストーリーだった』と答えておきました。 公式サイトはこちらです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2015/04/25 10:20:03 AM
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