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カテゴリ:実践!企業価値評価
部品・素材 ソニー、調達先を半減 2500社を1200社に 5000億円圧縮 ■記事への素朴な疑問 調達先の絞込みで一社当たりの取引量を増やし、 調達価格を引き下げ、年間2.5兆円規模だった調達コストを、 10年3月期に2兆円にする方針のようです。 5月15日の企業分析でもソニーを取り上げましたが、 本日は同社の有報における詳細項目を見てみようと思います。 5000億のコスト削減、というのは各財務諸表に どのようなインパクトがあるのでしょうか? 実際、原価率を●%削減・営業CFを●%向上させるインパクトがあるのか、 といった視点でざっくりと簡単に分析してみます。 以下では、08年度まで直近5年間の両社の財務状況を基に分析します。 ソニーの株価を見る前に~決算・財務分析はこちら ソニーの決算・財務分析 ■P/Lの視点 有報から抜き取った、08年のP/L指標は以下の通りです。 (金融ビジネスでの収支等を除く、ソニー本業からの指標) なお、調達コストを本記事にあった2.5兆円と設定します。 ●08年のP/Lの詳細 1.純売上 8.2兆円 2.売上原価 6.3兆円 (原価率、77%) うち、調達コスト 2.5兆円 3.粗利 1.9兆円 (粗利率、23%) (粗利=「1.」 - 「2.」) ここで、調達コスト2.5兆円が2兆円になったとすると、以下の通りです。 (あくまでざっくりとした分析であり、他指標は変化させず計算します。) ●調達先削減後 1.純売上 8.2兆円 2.売上原価 5.8兆円 (原価率、71%。売原自体を8%削減。) うち、調達コスト 2.0兆円 3.粗利 2.4兆円 (粗利率、29%) 上記の通り、調達コスト削減は売上原価を8%削減し、 原価率を6%削減する効果があります。 ■C/Sの視点 08年の営業CFの内訳は以下の通りです。 1.純利益 3700億円 2.その他変動分 3900億円 3.営業CF 7600億円 (営業CF=「1.」+「2.」) ここで、上述同様に調達コスト削減で2.5兆円が2兆円になり、 利益が5000億円増加したとすると、以下の通りです。 なお、純利益は税引後計算なので、 40%を除いた3000億円の寄与とします。 1.純利益 6700億円 (コスト削減で、81%増) 2.その他変動分 3900億円 3.営業CF 1兆600億円(コスト削減で、40%増) (営業CF=「1.」+「2.」) 上記の通り、調達コスト削減は、 営業CFを40%増大させる効果があります。 では最後に、B/Sを含む経営効率の視点で見てみましょう。 ■B/S及び経営効率の視点 上述のP/L・C/Sの視点と同様に計算すると、 08年の仕入債務回転日数は以下の通りです。 ●仕入債務回転日数の変化 37.9日 => 41.3日 (コスト削減で、8%増) 「仕入債務回転日数 = 仕入債務 / 売上原価」であり、 売上原価の8%減少は、同指標を3日分向上させます。 ■まとめ 5000億の調達コスト削減は、 原価率を6%削減し、粗利を29%に引き上げ(P/Lの視点)、 営業CFを40%増大させ(C/Sの視点)、 仕入債務回転日数を3日分向上させます。(B/Sの視点) 調達コスト削減、つまり売上原価の削減が、 P/L・C/S・B/Sの各指標のどこに、どれだけのインパクトをもたらすか、 その有機的なつながりが明らかになりましたね。 最近の記事では、デジタル家電の「需要減・価格下落・円高」により、 電機大手がこぞって海外への生産委託によるファブレス化等を推進し、 固定費でのコスト削減をしている、とされていました。 本日の記事で注目すべきは、素材・部品の調達といった 変動費の削減にもソニーが踏み込んだことで、 今後は各社が変動費も含めたコスト削減の動きをより一層広げ、 また同時に素材・部品業界の再編を迫ることになるかどうか、 に注意したいですね。 ソニーの株価を見る前に~決算・財務分析はこちら ソニーの決算・財務分析 以上の分析でご不明な点等ございましたら、 是非シェアーズまでご連絡ください。 感想もお待ちしております! support@shares.ne.jp お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年06月29日 15時56分17秒
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