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カテゴリ:実践!企業価値評価
日航、三井物産と貨物提携 輸送サービス 統一ブランド 収益押し上げ期待 ■記事への素朴な疑問 7月に統一ブランドを立ち上げ、 両社合わせて年100億円の収益押し上げを期待しています。 経営再建中のJALは、08年3月に1500億円の第三者割当増資を 実施しましたが、三井物産が200億円の優先株を引き受けており、 当時から検討してきた共同事業の第1弾が、本サービスにあたるようです。 本日は、株式会社日本航空(以下、JAL)のこれまでの経営状況を見てみます。 以下では、08年度まで直近5年間の務状況を基に分析します。 株式会社日本航空の決算・財務分析はこちら ■P/Lの視点 売上は、過去3年平均で0.7%増と、微増傾向で推移してきましたが、 08年は-3%の減収で2.2兆円となりました。 営業利益・純利益は乱高下しており、04年06年は赤字。 05年07年08年は黒字となっています。 特に08年の営業利益は293%の増益となっており、 直近2年の業績は以下の通りです。 ●営業利益 07年 230億円 08年 900億円 (前期比293%) ●純利益 07年 マイナス160億円 08年 プラス 170億円 (黒字転換) 有報でさっと確認すると、08年の営業利益の大幅増は、 連結子会社の株式売却による連結外しにより、 費用が大幅に削減されたことに因るようです。 減収についても、同様です。 実質的な業績向上とは言えなさそうですね。 では、実際のキャッシュの流れを見てみましょう。 ■C/Sの視点 営業CFは順調に伸びており、 04年の760億から08年は1600億まで増えています。 投資CFは増減しており、 マイナス300億からマイナス1000億円まで推移しています。 財務CFは基本的にマイナスでしたが、 08年にプラスに転じ、370億円になっています。 これは上述、08年3月の第三者割当増資1500億円に因るものです。 但し、長期借入金の返済に1200億円と、 多額の返済も行っていることにも注意したいところです。 結果的に、FCFは基本的にプラスとなっていますが、 VMのグラフを見ると、面白いことに気付きます。 それは、固定資産の投資額が営業CFを大きく上回っていることです。 有報で内訳を確認すると、投資CFのうち固定資産、 つまり航空機へは毎年1500億程度を投資しており、 営業CFを超えていますが、同時に過去の航空機を売却し、 投資有価証券を売却することで投資CF全体のマイナス額が抑えられ、 結果的にFCFプラスに調整されています。 航空機への投資は多額になりますが、 その工面の様がキャッシュ流出入構造から見て取れますね。 それではB/Sを見てみましょう。 ■B/Sの視点 総資産は07年、08年とほぼ変わらず2.1兆円です。 内訳には変化があり、運用面では、現預金が1000億増加、 有形固定資産が800億減少したことが目立ちます。 調達面では、長期借入金が1000億減少し、 株主資本が1400億増加しています。 経営再建中であり固定資産を売却し、上述の増資によって 現金の増加・借入金の減少・株主資本の増加となり、 経営の安全性が高まっていることがわかります。 なお、株主資本比率が07年の15%から 08年は21%へ向上したことからも確認できますね。 ■まとめ 微増推移から08年は減収に転じ、 利益は黒字・赤字を乱高下する中(P/Lの視点)、 航空機の購入を維持しつつ、同時に売却し、また有価証券売却等や 増資によりキャッシュを賄っていました(C/Sの視点)。 経営再建の中、増資により経営の安全性を改善しています(B/Sの視点)。 08年の日本全体の航空貨物の輸出実績は07年に比べ12%減であり、 同社の09年3月期の貨物事業も前期比マイナス15%の減収となりました。 旅客事業を含めた最終損益は、630億円の赤字の見通しであり、 収益力の改善が大きな課題となっています。 本日の記事にあった統一ブランドによる輸送サービスで 収益を押し上げられるか、今後に期待したいですね。 株式会社日本航空の決算・財務分析はこちら 以上の分析でご不明な点等ございましたら、 是非シェアーズまでご連絡ください。 感想もお待ちしております! support@shares.ne.jp お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年06月29日 15時58分51秒
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