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カテゴリ:実践!企業価値評価
ハイブリッド車 一斉拡大 トヨタ、4車種追加(1面) 自動車用 鋼材1割超下げ 1トンあたり1万5000円 新日鉄とトヨタ合意(3面) ■記事への素朴な疑問 本日の記事にはトヨタ関連の内容が複数あり、 ハイブリッド車投入で自動車業界、鋼材価格の調整で鉄鋼業界と、 様々な業界に対する同社のインパクトの大きさが改めて確認されます。 ハイブリッド関連では、年内にレクサスブランドなど ハイブリッド4車を追加するようです。 09年度の国内乗用車のうち、 「ハイブリッド車は10%強の22万台になる見通し」(日本自動車工業会)と、 前年の4%から大きく上昇しており、市場浸透が加速しています。 鉄鋼関連では、7年間上昇し続けていた鋼材価格を、 値下げすることで新日鉄と合意したようです。 国内最大手間の合意により、 今後製造業・鉄鋼各社との取引価格への影響に注目です。 09年3月期の最終赤字が4369億円と、 世界的な景気悪化による自動車販売減・円高によって 赤字計上したトヨタですが、 これまでの同社の経営状況はどうだったのでしょうか? それでは、08年度まで直近5年間の財務状況を基に分析を行います。 トヨタの決算・財務分析はこちら ■P/Lの視点 過去5年平均で見ても、売上・営業利益・純利益共に 10%程度で順調に成長し、07年からは営業利益が2兆円を超えています。 08年は売上26兆円、営業利益2.3兆円、純利益1.7兆円でした。 10年のグラフでみると明瞭ですが、安定して業績を成長させています。 では、実際のキャッシュの流れを確認しましょう。 ■C/Sの視点 年々、営業CFプラス、投資CFマイナスが伸び、 順調に回収・投資を行っています。 FCFは常にマイナスですが、 その分を借り入れで賄っており財務CFは常にプラスです。 08年は営業CFが3兆円、投資CFがマイナス3.9兆円、 財務CFが0.7兆円でした。 経営成績、キャッシュの流れ共に安定しているため、 資本コストが割高にならない程度に 借り入れを行っているように窺えます。 それでは、B/Sを見てみましょう。 ■B/Sの視点 総資産は07年から1000億円程度減少し、 08年は32.5兆円となっています。 大きな資本・負債と純資産の構成変化はありません。 資本コストの面でみると、総資産に占める長短借入金は38%、 株主資本は37%と、借入・資本が同じ割合となっています。 ただし、やはりトヨタで気になる点は、 総資産・売上に比べた、棚卸資産の少なさです。 08年の経営指標で確認すると、以下の通りです。 ●棚卸資産回転日数 (総資産に占める棚卸資産の割合) トヨタ 25.3日 (5.6%) 日産 37.4日 (9.3%) 本田 37.5日 (9.5%) トヨタの「倉庫は路上の輸送トラック」と言われる程、 カンバン方式等によるタイムリーな在庫管理を行っていますが、 やはり経営指標にもそれが如実に現れていますね。 ■まとめ 年々、順調に増収増益を続け(P/Sの視点)、 営業CF・投資CF・財務CFの推移も堅調に増大し(C/Sの視点)、 大きな資産構成の変化もなく、 資本コストを抑えた安定した財務体質となっています(B/Sの視点)。 この10年間で見ても、積極的に投資を増大し、 収益も拡大し、経営効率も維持・向上しています。 09年決算では世界不況の煽りを受け、業績が悪化しましたが、 今後も環境対応車や小型車の開発・生産を強化して 新興国市場で販売拡大に取り組み、 11年3月期の黒字転換を目指すようです。 特に、国内で市場浸透が進むハイブリッド車は、 09年度で22万台の見通しでしたが、世界でみると、 「2020年に1128万台と、08年の48万台から23倍に伸びる」 と予想されています。(JPモルガン証券調べ) 急成長するハイブリッド市場の国内攻勢、 海外展開への本格展開に向けて、 同社の収益構造・ポートフォリオが転換しつつある、 移行の年になりそうですね。 トヨタの決算・財務分析はこちら 以上の分析でご不明な点等ございましたら、 是非シェアーズまでご連絡ください。 感想もお待ちしております! support@shares.ne.jp お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年06月29日 15時59分33秒
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