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カテゴリ:実践!企業価値評価
■注目した記事(5/29 9面) アデランス再建 混迷 取締役選任 スティール案 承認 ユニゾン出資断念 ■記事への素朴な疑問 スティールの推す取締役全員の選任が承認され、 今年4月に役員派遣とTOB提案していたユニゾンの候補は、 否決されました。 会場には結果発表の際にどよめきが起こるなど、 会社側の議案が2年連続で否決される異例の事態だったようです。 ユニゾンのTOB価格・進まぬ経営改革に不満を持ち、 スティールに期待する株主、ユニゾン傘下での再生を前提にしていた 現場社員・経営陣と、様々な構図が見えましたが、 結果は後者の失意に終わったようです。 本日は、アデランスのこれまでの経営状況を見てみましょう。 また、ちょっと高度な内容ですが、後半部の分析では、 「スティールパートナーズはどんな企業を買収ターゲットとして来たのか?」 についてもさっと考察してみます。 それでは、08年度まで直近5年間の財務状況を基に分析を行います。 株式会社アデランスホールディングスの決算・財務分析はこちら ■P/Lの視点 売上はほぼ横ばいで、08年は前期比2%増の750億円ですが、 利益は06年をほぼピークとして下降しており、 08年は営業利益が前期比マイナス51%の40億、 純利益はマイナス90%の6億円となりました。 08年の利益減を有報でさっと確認すると、 株式サムソンの買収で売上を維持した一方、 コスト増大の影響が大きく、営業利益が減少したようです。 また、07年から続く「非連結子会社への貸倒引当金の増大」による 特損で、純利益が急減したようです。 経営効率で見てもその様子が明らかで、 06年は10%に近かったROICが、08年は3%に悪化しています。 原因は営業利益率の低下にあり、原価率・販管比率共に悪化しています。 冒頭でもありましたが、業績の調子は良くないようです。 それでは、実際のキャッシュの流れを見てみましょう。 ■C/Sの視点 FCFは基本的にプラスですが、06年の100億をピークとし、 営業CFが下降して08年は55億円にまで減少しています。 投資額も減少傾向にあり、06年はマイナス25億でしたが、 08年はマイナス52億です。 そのうちマイナス30億は上述の買収に因ります。 財務CFは常にマイナスですが、主に自社株買いと配当金に因るもので、 08年はマイナス40億でした。 本業の儲けである営業CFが減少していることからも、 業績の不調が明らかになりました。 それでは、B/Sを見てみましょう。 ■B/Sの視点 総資産は07年から13億減少し、08年は900億円となり、 額・内訳共に大きな変化はありませんが、 同社で注目すべきは以下の通り、キャッシュリッチな資産にあります。 現金・投資等が280億あり、総資産の30%を占めており、 株主資本は700億、78%を占めます。 特に、株主資本のうち75%は、過去の利益の蓄積である 利益剰余金となっており、額にして530億円あります。 まさに、過去の利益の蓄積を余剰資産として持つ、 キャッシュリッチな財務体質ですね。 ■まとめ 売上は横ばいで推移し、原価・販管の向上・特損の発生で 営業利益・純利益が減少と、業績が悪化する中(P/Sの視点)、 基本的にFCFプラスですが、営業CF・投資CF共に減少し、 キャッシュの流出入が減っています(C/Sの視点)。 総資産に額・割合の大きな変化は無く、 キャッシュリッチな財務体質を維持しています(B/Sの視点)。 推薦した取締役が選任され、アデランスの経営改革を急ぐ スティールですが、投資先の企業の経営に深く関与するのは 今回が初の事例となり、その成否は未知数です。 今後の改革が業績をどう変化させ、 特に株価にどう反映されるか、注目ですね。 ちなみに、スティールパートナーズはこれまで、 アデランス、ソトー、ユシロ化学などを買収ターゲットとして来ましたが、 これら企業に共通するのは何でしょうか? 言い変えるなら、何を狙って同社は買収をしかけているのでしょうか? これらの企業をバリュエーションマトリクスで見てみてると、 一瞬で明らかになります。 ちょっと高度になりますが、本日は、 DCFで算出された企業価値についてもさっと考察してみましょう。 (※本サービスは「バリュエーションマトリクスのご利用」が必要となります。) 企業を一瞬で明らかにしたい方はこちらから ■企業価値評価(DCF)の視点 各企業の株主価値と、時価総額の概算比較は、以下の通りです。 なお、「株主価値=事業価値+財産価値-有利子負債」で計算されます。 時価総額は、昨日27日の終値で算出したものです。 ●アデランスの企業価値評価(DCF法) 事業価値 240億 財産価値 330億 有利子負債 10億 ------------------- 株主価値 560億 時価総額 390億 ●ソトーの企業価値評価(DCF法) 事業価値 20億 財産価値 160億 有利子負債 0億 ------------------- 株主価値 180億 時価総額 130億 ●ユシロ化学の企業価値評価(DCF法) 事業価値 150億 財産価値 120億 有利子負債 40億 ------------------- 株主価値 240億 時価総額 120億 上記を見ても明らかなように、全ての企業で、3点の特徴があげられます。 1.株主価値が時価総額を上回り、割安である。 2.財産価値が高く、それだけで時価総額と同等、又はそれを上回っている。 3.(株主価値を目減りさせる要因である)有利子負債が少ない。 つまり、企業の価値が株価よりも割安な会社で、キャッシュリッチな 財務構造を持つ企業を、同社は買収ターゲットとしている、と言えそうです。 本来は専門家による長時間の分析が必要な企業価値評価ですが、 バリュエーションマトリクスを使うと一瞬ですね。 企業を一瞬で明らかにしたい方はこちらから 以上の分析でご不明な点等ございましたら、 是非シェアーズまでご連絡ください。 感想もお待ちしております! support@shares.ne.jp アデランスはお客様の評価をすべて公開しています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年06月29日 16時01分18秒
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