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カテゴリ:映画評
『エレファント』を観る。2003年度カンヌでグランプリ獲った映画。コロンバインの銃乱射事件を描いていると言われている。所詮カンヌである。お偉いお芸術映画か奇を衒ったカルト映画の青田買い的なぺダンチックさが鼻につくカンヌ映画祭である。監督はガス・ヴァン・サント。呆れるくらい凡庸な『グッド・ウィル・ハンティング』の監督。なんつうの? 愛と感動のファミリー向けヒューマンドラマっていうやつ? ムカムカするよね? いやでも…ガス・ヴァン・サントは『サイコ』をカットごと完コピしたリメイク撮った人でもあるので、どちらかというと映像派なのかもしれない。
なるほど。時間軸はバラバラで何人かの人物の視点で、同じシーンが様々なカットで繰り返されているという、かなりハイリスクな編集をさらりとやってのけている。ストーリーは特になし。すべて、高校生達のつまらない日常が延々描かれ、ラストの惨劇に向かって収束していく。観てる側としても、それを待ち望んでいるだけなのだが…。ちなみに台詞はほとんどすべてが役者達の即興で台本にはキー・フレーズ以外は何も書かれていなかったようだ。だから劇中の言葉は、アメリカの高校生の平均的な会話なのだろう。エンターテイメントではないので、特にドラマチックなシーンや演出はない(むしろ選択的に排除されている)。犯人の動機とか、殺される側の背景とかも触れられてはいない。同じ事件を基にしたマイケル・ムーアの『ボウリング・フォー・コロンバイン』でも余り触れられていなかったアメリカの学校制度と階級の問題が描かれていると期待していたんだけどな…。つうか、あの黒人は何だったんだ? 観終った後、一体ガス・ヴァン・サントは何のために、この映画を撮ったんだろうと悩んでしまった。別に問題提起をしてるわけじゃないし、悪趣味的(良い意味でね)に馬鹿な奴らは皆殺しだぜといいった『キャリー』的復讐物語でもない。必然的に、「話題性」を狙ったのか? としか思えなくなってくる。ガス・ヴァン・サントは、勿論そんな安易なこと考えてはいないとは思うけど、結果的にそうとしか受け取れない。別にいいけどね…所詮カンヌだし。 そんなわけで、この映画を観ても、結局のところコロンバイン事件が象徴とするアメリカの病根というのは、まったく見えてきません。もし、それを知りたいと思ったならば、「僕の好きな映画ベスト10」に入る『ヘザース -ベロニカの熱い日々-』という映画をお勧めします。ああ、『ヘザース』は当のコロンバイン事件の犯人がフェイバリット映画のひとつ。事件後、たしか規制の対象になってたはず。アメリカの複合的な差別問題は、今や「人種」と同様に「階級」をひとつの焦点としている。そこらへんメインストリームのドラマあたりでもフォローされている(とはいえ今は『24』でテロ問題がテーマなのかな…?)。まあ、その辺はまた今度。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Dec 5, 2004 02:00:29 AM
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