2日目。
今日も鷹千代は元気だ。
おっぱいもたくさん飲むし。
俺たちはといえば、朝飯を食って、少し休んでから出発。
今日は足摺岬まで両親を連れて行く。
親父殿とおばあちゃんとうちの両親。
途中で広見というところにあるふれあいパークっていう道の駅みたいなところに寄った。
ここで今晩のおかずとなる魚を買う。
どれもさっき漁ってきた魚ばっかり。
しかもでっかい枕みたいなスイカ買ったり、いちごを丸ごと氷と一緒に摩り下ろしたカキ氷を食べたりした。
あー、この適当かげんがいい。
ふたたび一路足摺を目指す。
政所の実家は高知のかなり西の端っこなんだけど、それでもここからでもとんでもなく遠いのだ。
やはり高知県はでかい。
うちの母親はひょんなことからジョン万時郎の話を聞いたことから、ジョン万次郎のファンになってしまったのだ。
それでジョン万次郎ゆかりの土地を訪ねたいと云う。
途中の更なるお土産やみたいなところで、ジョン万ハウスの位置を聞く。
なんでもちょっと前までは足摺岬にあったのだが、場所が変わったらしい。
すでにその場所は通り過ぎてしまっていたようだ。
でもやっぱり足摺には行っておきたいというので、やはり足摺方面へ。
途中で中の浜という小さな漁村がある。
実は万次郎はここの出身なのだ。
したがって中浜の姓を名乗っていた。
ジョン万次郎生誕の地というところへ向かう。
そこには石碑が建っていた。
ジョン万次郎は、14歳のときにカツオ漁に出かけたところ漂流し、捕鯨船ジョン・ハウランド号に拾われる。
拾われた船の船長はホイットフィールド船長。
そのホイットフィールド船長に当てた手紙の文章がここに刻まれていた。
ちょっとこれを読んで感動した。
人種とか国とか本当に越えてさ、やり取りがあるわけよ。
そんでもって万次郎のお母さんへの思いとね。
素で感動したよ。ホント。
中の浜を後にして、足摺へ。
足摺では、まずはお遍路の札所である金剛福寺へ。
『釣りバカ日誌14』でもスーさんが訪れていた寺だ。
そういや5年くらい前にも来たことがあったっけ。
四国ではやはり弘法大師は別格。
ありとあらゆる尊崇を集めている。
ここ足摺でも捨身行とされる補陀洛渡海が行われたらしいが、ここにも補陀洛の文字が見える。
そして観音浄土を思わせる庭園の造り。
一種異様な空間といえる。
今では半ばレジャー化している四国霊場めぐりだが、やはり妖しい雰囲気がぷんぷんする。
死出の旅、といった空気が支配している。
うちの両親は委細構わずご機嫌で、拝んでいたし、
父はなんか亥年ということでお守りを買い、鷹千代は子年なので、そのお守りをお揃いで買っていた。
かわいいオヤジである。
金剛福寺を後にして、そこから岬の方へ。
まずは聳え立つジョン万次郎の銅像の前で狂ったように写真を撮る。
力強い意思を感じさせる堂々とした偉丈夫である。
巷では土佐といえばまずはさておき坂本龍馬に始まり、坂本龍馬に終わるといった風情だが、
なかなかどうして、このジョン万次郎という男も凄い。
そのドラマチックな人生たるや、龍馬など比較対照にならぬだろう。
岬から見る海は天晴れ。
これぞ四国最西端。
うなるような波と風に削られ岩は荒々しい姿を晒している。
空海の七不思議とかいうやつ(地獄の穴とか)は、正直肩透かしをくらうが、この風景はすばらしい。
足摺も室戸も訪れれば、鬼国土佐というものを的確にあらわして我々に見せてくれる。
これぞ土佐。
展望台に登って海を眺める。
どこまでも広く青い海。
広がる山々。
白く盛り上がる雲々。
すべては見渡す限り俺のものである。
美しく偉大な風景を見せてくれる。
やはりこうではなくてはならない。
こうしたものを眺めることができる場所に人は住まなくてはならない。
空と海と。
この四国にいるとなぜ空海という名が生まれたか、説明は要らなくなる。
足摺を見終わって家まで戻る。
すでに1時を回っちゃったりして異様に腹が減ったので、さっきかったジョン万次郎餅を早くも食ってしまう。
ゆべしみたいで美味い。
さらにすり身のてんぷらも食うがこれも美味い。
家ではすでに流しそうめんの用意が出来ていた。
親戚一同で、親父殿が作成した竹の管の中にそうめんを流して食った。
美味い。
そのまま小休止したが、海に行きたいと俺がねだって、親父殿に連れて行ってもらった。
政所の家にはちっさい発動機つきのボートがあるので、
それでもって、ちょっと湾の中をぶらぶらまわって適当なところでもぐる。
俺はただもぐって熱帯魚にいたずらしようとして遊んでいただけだが、
岳父殿は、30分足らずアワビだのウニだのその他いろんな貝を山ほど採って来た。
大漁大漁といって船で浜に戻る。
俺は政所と周辺を散歩した。
小学校があるが、すでに生徒が4人で来年閉校だそうである。
そこの遊具でひとしきり遊んだ後、家に帰って風呂にどぷんと浸かった。
鷹千代と遊ぶのである。
かわいい我が子よ。
親父殿の兄貴、つまり政所の伯父にあたる「宿毛父さん」がやってきて、飯が出来上がって、みんなで酒宴開始。
今日の魚はまた一段と美味い。
採ってきたアワビも美味い。
無論、ウニも美味い。
ビールも美味い。
焼酎も美味い。
昨日以上にたくさん食ってたくさん飲んだ。
俺も父も親父殿も宿毛父さんもすっかり出来上がってしまって大騒ぎである。
しかし、本当に海産物が異様に美味い。
俺はここに来るまで魚がこんなに美味いものだとは思わなかった。
本当に楽しい。
すっかり酔っ払ってしまって、この日もあっという間に撃沈。
政所には久しぶりに会ったのにまともに会話していないと起こられる始末だ。