フクイチ過労死訴訟で判決言い渡し
拙ブログでも度々お伝えしてきた「福島第一原発過労死訴訟」(※)は、3月30日に、福島地方裁判所いわき支部で判決が言い渡されました。
※福島第一原発構内の自動車整備工場で働いていた二級自動車整備士の猪狩忠昭さんが2017年10月26日の昼休憩明けに致死性不整脈で亡くなったことについて、忠昭さんの遺族3人が、責任の明確化・謝罪・損害賠償を求めて、2019年2月に東電(発注元)・宇徳(元請け)・いわきオール(雇用元)を提訴したもの。
判決の概要を箇条書きした上で、判決内容を伝える記事のリンクを貼ります。
●「いわきオール株式会社」と、同社役員であった馬目信一(まどめ しんいち)前社長と妻は、連帯して約2481万円+金利5%(算定期間は約2年間)を原告3人に支払うこと(春橋注:2年分の金利と合わせると約2700万円)
●「東京電力ホールディングス」「株式会社宇徳」への原告の請求は棄却する
●東電と宇徳に関する訴訟費用は原告負担とする
(参考)
●くやしい勝利判決!!(「福島第一原発過労死責任を追及する会」のブログ記事)
●【イチエフ内過労死事件】遺族の訴えを一部認める判決、東電への賠償請求は「棄却」(ブログ「ウネリウナラ」の記事)
●【イチエフ内過労死事件】判決の内容(同上)
当日は、12時40分から裁判所前でのアピールが行われ、訴訟を支援してきた労組関係者やいわき市議の方達を中心に大勢が集まりました。
原告は、Aさん(忠昭さんの配偶者さん)とご子息が来ておられました。ご令嬢は仕事の関係で来られなかったとのことです。
判決言い渡しの一般傍聴は11席で、抽選でした。私は幸いにも当選しました。
言い渡しは5分もかからず、名島亨卓(なじま ゆきたか)裁判長は争点ごとに金額と「~への請求は棄却する」だけを発言して、「あとは判決書を読んで下さい」と言って終わらせました。
記者会見と報告集会
判決後は、報告集会の会場である、いわき市の勤労福祉会館へ移動しました。
そこの会議室で、コピーされた判決書が関係者に配布され、弁護士が内容を確認後、更にいわき市役所の記者クラブまで移動して、原告側の記者会見が行われました(元々は15時半開始でしたが、16時開始に変更されました)。
私も記者クラブの部屋の隅っこに座って、見学させて貰いました(と言っても、後ろ斜めからだったので、原告の表情等は見えなかったのですが)。
16:02から弁護士の概要説明が有り、16:15から原告であるAさんが発言、16:26からご子息が発言し、16:30頃から質疑になりました。
質問していたのは、福島民報・福島民友新聞・読売新聞・東京新聞・NHK・某テレビ局(局名が聞き取れませんでした)・フリーの牧内氏、の7社(人)でした。
質疑は、凡そタイムスケジュール通りの30分間で終わり、17時に会見は終了しました。質問の多くは、「控訴するのか」「いわきオールの責任のみ認められたことをどう考えているか」「旦那様、或いはお父様には、どのように報告したいか」「いわきオールが支払うべき賠償額が、訴状よりも低くなっている。素因減額だが、どう捉えているのか」というようなものでした(注:判決では「忠昭さんが、医者の指示通りに薬を服用しなかったと認められる」「元々、高血圧であった」「肉よりも野菜の摂取を優先していたとは認め難い」というような身体的な素因を認定し、体調不良となった要因の一部は忠昭さんにもあるとして、賠償額を算定しているそうです)。
その後、原告・弁護士・支援者・記者の何人かは勤労福祉会館に戻り、改めて報告集会が開かれました。
原告、弁護士、参加者、何れも発言の大半は「東電と宇徳の責任が認められなかったこと」に集中しており、私も、順番が回ってきた際には「今回の判決は、端的に言うと、トカゲのしっぽ切り」と発言しました。
報告集会が終ったのは18時半頃でした。朝から準備していた労組・支援者の皆さんや原告、そのご家族は疲れていたと思いますが、原告やご家族は、疲れも見せずに私をいわき駅まで送ってくれました。本当に熱いくらいに温かいご家族です。
今後の最大の注目点は、原告が控訴するかどうかでしょう。控訴期限は2週間です。又、敗訴した「いわきオール」の動きも気になります。馬目前社長としては、未払い賃金訴訟に続く敗訴ですから、面子丸潰れでしょう。
これまでと今後の経緯については、下記リンクを参照。
●関連記事
(リンク1)フクイチで亡くなった猪狩忠昭さんの労働実態
(リンク2)フクイチ過労死訴訟~故・猪狩忠昭さんの配偶者Aさんが意見陳述~
(リンク3)フクイチ過労死訴訟・原告代理人の意見書・厚労省ガイドライン・質問主意書
(リンク4)フクイチ過労死訴訟・第2回口頭弁論~息子さん・娘さんの意見陳述と、争点概要~
(リンク5)【原発】作業員〝使い捨て撲滅〟を訴える遺族(政経東北5月号)
(リンク6)20年3月、フクイチ「未払い賃金訴訟」は原告勝訴
(リンク7)フクイチ過労死訴訟は結審~3月30日判決予定~
(リンク8)約4年間の粘り~フクイチ過労死訴訟は一挙に原告有利へ~
(リンク)福島第一原発過労死責任を追及する会
春橋哲史(ツイッターアカウント:haruhasiSF)