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元SF小説家・春橋哲史のブログ(フクイチ核災害は継続中)

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2022.04.22
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カテゴリ:福島第一原発
さいたま訴訟、地裁判決は「不当判決」


​​ 2022年4月20日11時から、さいたま地方裁判所で、所謂「福島原発さいたま訴訟」(※)の判決が言い渡されました。

※福島原発さいたま訴訟
 フクイチ核災害によって埼玉県内への転居・避難を余儀なくされた29世帯96人が、事故の責任の明確化・謝罪・損害賠償11億円余りを求めて、2014年3月に東電と国を提訴したもの(世帯数・人数は三次提訴までを併合したもの)。2014年4月以降21年9月まで、2人の裁判長・40回の口頭弁論を経て結審した。

 私は、仕事の都合で、傍聴券整理券の配布に間に合うのが厳しかったのと、新型コロナ感染防止策で傍聴席が削減されている事から、裁判所前での旗出しを見るつもりで、さいたま地裁前に向かいました。

↓ さいたま地方裁判所へ向かう途中で撮影。拘置所や法務総合庁舎が集中している。





 10時40分頃に着いた頃には、地裁の正門前で報道陣がカメラの準備をしていました。
 正門前は車の出入りも多いので、通行の妨害にならないよう、私は歩道の端に立って待っていました。

 原告側は約8年をかけて立証し、証言し、説明してきていますし、高裁の判決でも、国の責任を認めているものが多数ですから(現時点で、事故の予見可能性・結果回避可能性に関して国の責任を認めた判決は3件。別の1件は認めず)、さいたま訴訟の判決でも原告側の主張に寄った判決が下されるのではないかと期待していましたが、旗出しの文言は「不当判決」でした。

↓ 集まりつつあった報道陣




↓ 旗出し



 私は「原告側の主張・請求の大部分が否定されたのだろうな」とは思いましたが、その時点では「敗け方度合い」が分かりませんでした。

 判決言い渡しは2分で終わったそうで、傍聴していた方達がゾロゾロと出てきた後に、私は知人に挨拶しました。

 報告集会は裁判所近くの埼佛会館(埼玉佛教会の建物)1階が会場で、各自が昼食を済ませた後、13時15分から開始されました(私は昼食は食べず、会場近くの別所沼公園を散歩してました)。

↓ 会場入り口と、会議室内の様子








判決要旨

 判決概要は、掻い摘んで書くと、

①東電に6500万円余りの賠償支払いを命じる。
②国の規制権限不行使に違法性は認められないから、国への請求は棄却する。
③社会通念に照らして相当である場合は、避難による精神的損害が認められる。
④避難指示区域外からの避難の必要性は、個別の事情に応じて認められる。

 という事です。
 以下、集会で配布された判決要旨です。分かり易さの観点から、段落を変更し、西暦の括弧を追記しましたが、文章は変えていません。​

====要旨、ここから====

​​裁判長裁判官 岡部順子
裁判官 甚田理恵
同 藤田陽平

​​【主文の骨子】
​被告東電に、原告らの内63名に対する合計6541万2337円の賠償を命じた。原告らの被告国に対する請求は棄却​​した。

【理由の骨子】

1 経済産業大臣の規制権限不行使の違法性の有無について

(1)技術基準適合命令の発出の可能性
 平成14年(2002年)7月に発表したいわゆる「長期評価」において福島沖を含む海高寄りの領域でM8.2程度の津波地震が発生する可能性が指摘されていた。長期評価は、従来の調査研究の成果を網羅的に整理・分析し、最新の観測結果を踏まえ、多数の専門家の複層的合議によりまとめられたものであり、経済産業大臣の原子炉施設の規則権限行使に係る判断を基礎づけ得る信頼性が認められる。

 長期評価の予測する地震から発生する津波について、波高の推計を行うと、福島第一原発の主要建屋の敷地高を超える津波の到来が予見できた。そして、福島第一原発の電源設備などの配置に照らすと、主要建屋の敷地高を超える津波が到来するとき、非常用電源設備等が昨日喪失し原子炉施設などが損傷を受けるおそれが認められた。
 したがって、経済作業大臣は、福島第一原発について、技術基準適合命令などの規制権限を行使することができたものであり、平成14年7月の長期評価の公表を受けて検討を始めれば、平成18年(2006年)末には技術基準適合命令の発出等により、被告東電に防護措置の設置に着手させることができた。​​​​​

(2)規制権限不行使の違法性
 経済産業大臣の規制権限不行使が、許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠き、国家賠償法第1条1項の適用上違法であるかを判断するに当たり、経済産業大臣が規制権限を行使すれば本件事故の発生を回避できたかが問題になる。
 経済産業大臣が規制権限を行使して被告東電に求める防護措置として防潮堤等の設置が考えられる。   
 しかし、長期評価により予測される津波を防護するに十分な防潮堤等が設置されたとしても、これと規模や来襲方角の大きく異なる本件津波を防護できたとは認められない。
 原告らは、防潮堤等の設置と併せて、建屋内部や重要機器室への水の侵入を防止する水密化措置が行われるべきであり、水密化措置が行われていれば本件事故を回避できたと主張する。
 しかし、防潮堤等により、敷地内への津波の侵入を回避できるとき、重ねて水密化措置を行うべきであるとは言えない。防潮堤等が設置されるまでの防護措置として、水密化措置を行うことについても、設置期間中は水密化措置のみで原子炉施設を防護することになり、敷地内への津波の侵入による派生事故や、非常用海水系ポンプ等の防護の点で安全確保に懸念があり、適切な防護措置であるとは言えない。

(3)まとめ
 経済産業大臣は、長期評価より福島第一原発の主要建屋の敷地高を超える津波の到来が予見できたにもかかわらず、規制権限を行使しなかったのであり、経済産業大臣の重大な責務を果たしたとは言えない。
 しかし、長期評価に従い経済産業大臣が規制権限を行使しても本件事故を回避できたことが認められない。したがって経済産業大臣の規制権限不行使が本件事故により被害を受けた個別の国民との関係で違法であるとは言えない。したがって、原告らの被告国に対する請求は認められない。

2 損害の有無及び損害額

(1)精神的損害について
 本件事故により避難したことが、一般人の感覚に照らして合理的であり、社会通念上相当である場合は、本件事故により平穏に生活する利益が侵害されたと認められ、それによる精神的損害が賠償されるべきである。
 避難の相当性は、避難者の個別具体的な事情を踏まえて判断するのが相当である。
 自主的避難等対象区域から避難した者についても、放射線の人体への悪影響が我が国で広く言われており、専門的知見を有しない者にとって不安や恐怖を払しょくするのが難しいことを踏まえると、個別の事情によっては避難の相当性が認められると解される。
 慰謝料額は、本件事故時住所地及びその周囲の状況、避難者の従前の生活状況、属性、家族構成、避難に至る経費、避難生活の状況などを個別具体的に考慮して算定すべきである。
 また、帰宅困難区域については、その地に戻って帰属感を確かめ懐かしい情景に身を置くことすらかなわないこと、居住制限区域及び避難指示解除準備区域等については、解除まで長期間を要したために、帰住に困難を伴い、帰住しても周囲の変容などによりかつての生活基盤のすべてを取り戻せない状況にあることを考慮すべきである。

(2)財産的損害(居住用不動産)について
 本件事故前の不動産の価額を基準として、本件事故により、不動産の価値を喪失しまたは一部を喪失したと認められる場合は、それに応じた賠償が認められるべきである。そして、価値の喪失等の有無・程度については原告らの立証を踏まえ、中間指針等や賠償基準の考え方も勘酌しながら、不動産の存する区域の状況に応じて判断するのが相当である。

(3)被告東電の弁済について
 被告東電が直接請求手続きやADR手続きにより行ってきた賠償は、細分化された損害項目を特定し、損害項目ごとの賠償基準にしたがい、当該項目以外には和解の効力が及ばないことを確認して行ったものであるから、損害項目を精神的損害または居住用不動産の財産的損害と特定して行われた賠償以外については、原告らの請求に影響しないと解される。

以上

====要旨、ここまで====


経産大臣の権限不行使が違法でない理由への疑問

 配布されたのは要旨で判決本文ではないですから、踏み込んだ批評は無理と思いますが、一読して疑問だったのは、「(2) (経産大臣の)規制権限不行使の違法性」です。裁判所は、この項目で結果回避可能性を否定しています。
 その中身を読むと、

1.「防潮堤等により、敷地内への津波の侵入を回避できるとき、重ねて水密化措置を行うべきであるとは言えない。」との記載は、「防潮堤+建屋水密化等」という多重防護の考え方を否定しています。裁判所は一体どういう理由で、「回避措置は防潮堤だけで良い」と考えたのでしょうか?

2.「水密化措置のみで原子炉施設を防護することになり、敷地内への津波の侵入による派生事故や、非常用海水系ポンプ等の防護の点で安全確保に懸念があり、適切な防護措置であるとは言えない。」との記載は、原告の主張する建屋の水密化措置を取ったとしても、設備の安全確保に懸念が有ることを認めているように読めます。そうなのであれば、尚更、福島第一原発が事故を起こすリスクが高かったという事であり、経産大臣は規制権限を行使すべきであった(=不行使は違法であった)という結論に繋がるのではないでしょうか? 

 という疑問が有ります。
 私は、各地の集団訴訟の判決本文を読む機会はこれまで有りませんでしたから、詳しいことは分かりません。とは言え、「多重防護の考え方を否定」したり、「結果回避可能性を否定しつつも、設備の安全性に懸念を示す」判決は、どれだけあるのでしょう?
 サイトの防護措置に関する裁判所の判断や、その論理には大いに疑問が有ります。
 報告集会では、読み込む時間が無かったので、質問できませんでしたが、別の訴訟でも、弁護士に質問する機会が有れば訊いてみたいです。


SSN(震災支援ネットワーク埼玉)内の性加害事件

​ さいたま訴訟について、別の観点から書きます。
 埼玉県内には、フクイチ核災害による避難者を支援する任意の市民団体「SSN(震災支援ネットワーク埼玉)」が有ります。さいたま訴訟を支援する弁護士や市民も、この団体のメンバーと重複している場合が多いのですが、団体の事務局長(当時)である男性が、2017年2月に性加害事件を起こしていました。

 私は、ジャーナリストである牧内昇平氏の記事でこの事件を知りました。
 牧内氏の記事と、被害女性が公表した記事にリンクを貼っておきます。

(リンク)
●​震災支援ネットワーク埼玉事務局長による性被害について​(2022年1月25日/被害女性H氏の記事)

●​「震災支援ネットワーク埼玉」の性被害対応について​(22年2月4日/牧内氏の記事)

●​当団体職員による性被害に関する謝罪及び再発防止の取組について​(22年2月10日/SSNの発表)

●​震災支援ネットワーク埼玉HP掲載文書と私の要望について​(22年3月1日/被害女性H氏の記事)

●​「震災支援ネットワーク埼玉」の性被害対応問題②関連・2022年3月末までの経緯(22年4月2日/牧内氏の記事)

●​「震災支援ネットワーク埼玉」の性被害対応問題②「団体としての加害」の自覚が足りない​(22年4月2日/牧内氏の記事)

●​「震災支援ネットワーク埼玉」のWebサイト

 経緯は、上記リンクの記事を順に読んで頂ければ分かると思います。

 SSN内での性加害事件は、牧内氏の記事を読むまで知りませんでした。
 さいたま地裁の判決でSSN事務局長の行為が認定され、東京高裁で加害者は事実関係を認め謝罪する和解をしたとのことです。被害を受けた女性H氏のブログに対して、団体や男性から名誉棄損等の訴えは起こされてはいませんから、この性加害事件は事実であったのでしょう。

 SSNが本件事件に触れた声明を出しているのは22年2月10日の一件だけです。
(9月22日追記:9月1日にハラスメント防止規定を制定したとのお知らせあり/​リンク​)
 被害女性H氏が、さいたま地裁に提訴したのは2019年5月、翌年3月には事務局長の行為を認める判決が下されています。東京高裁での和解は20年12月です。百歩譲って、「推定無罪」の原則に従い、訴訟の決着がつくまで待っていたのだとしても、どうして、声明の発表まで1年以上もかかっているのでしょうか? 

 SSNのWebサイトには、「被災当時者の語りに耳を傾け学ぶことの意義」というような記事もあります。自らが「(被害者の)語りに耳を傾ける」ことが出来ていないのに、どのような神経で書いているのでしょうか? 今風に言えば、「おまいう」です(「お前が言うな!」の略)。
 それとも、「国策による被害者の声には耳を傾けるけど、個人の犯罪の被害者の声には耳を傾けない」という二重基準でもあるのでしょうか? だとしたら、それを「団体の行動方針」として明記すべきでしょう。

 この事実を発掘し、SSNの代表である猪股弁護士に問い質している牧内氏には敬意を表します。

 私のこの事件を知った時、まさに牧内氏の言う「良きもの」の中の性被害であり、「良きもの」の皮を被っていたエロ河(広河隆一)事件を思い出しました。

(リンク)
●​【暫定版】広河隆一事件について考えたこと・思うこと​(当ブログの過去記事/2019年5月19日)

 エロ河も周囲も、文春に指摘されるまでセクハラ・パワハラの指摘から逃げ回り、隠蔽していました。事件発覚後も責任を曖昧にして賠償も有耶無耶にしたまま逃げ切ろうとしています。エロ河に関わっていた団体(チェルノブイリ子ども基金、珠美の里、未来の福島こども基金)も、エロ河事件発覚当初はWebサイトにお詫びの言葉を掲載していましたが、現在では過去情報に格納されていて、積極的に検索しなければ見つかりません。少なくともトップページを見る限りでは、過去にエロ河と関りを持っていた事、エロ河の名前で人やお金を集めたり呼び掛けをした事は分かりません。これが本当の反省なのでしょうか?

 SSNも、トップページには事務局長(当時)の性加害事件のことは明記されておらず、「(22年3月末で)活動を休止する」にも関わらず、画面右側にカンパのお願いを掲載したままです。
 SSNは2021年11月に大規模なシンポジウム(復興の人間科学 2021” 『福島原発事故10年の経験から学ぶ』~当時小学生だった若者達との対話から~)を共催しています。SSNの関係者は、性被害者の訴えを放置したまま、シンポジウムを準備し、実行することに何の躊躇いも無かったのでしょうか? 恐るべき倫理欠如です。国・東電のやることや、反対尋問での原告への冷酷な言葉を批判しても、何の説得力も持ち得ません。

 事件はまだ決着していません。SSNは、今後、被害女性H氏との話し合いを進めるらしいので、この事件とSSNとしての責任の取り方は、今後の進展を見守ります。


2人を報告集会に参加させた側に倫理感は無いのか

 ここから、さいたま訴訟の報告集会の話に戻ります。
 報告集会では、SSN代表である猪股弁護士が事実上の開会の挨拶を行い(司会は別の女性弁護士でした)、PCの操作など技術面は加害者である元事務局長が行ってました(私は、元事務局長氏と名刺交換したこともあり、実名も分かっていますが、当ブログでは伏せておきます。どうしても知りたい方は、「SSN 事務局長」で検索してみて下さい)。


 私は報告集会を荒らす意図は無かったので発言せずにいましたが、私は2人が「働いている」のを、「よく、公の場に顔を出せるな」と思いつつ見ていました。犯罪の加害者でも基本的人権がありますから「表に出てくるな」とは言えませんが、私には「世間に顔向けできる感覚」が信じられませんでした。せめて、顔を出さず、裏方に回るくらいの遠慮はないのでしょうか。

 2人の行動以上に呆れたのが、この2人を集会に参加させ、猪股氏にはマイクまで握らせていた弁護団・支援する会の対応です。SSNと支援する会がイコールでないことは分かっていますが、「個人の尊厳をかけた訴訟」の報告集会に、「個人の尊厳を傷つけている」人間を参加させ、顔出しさせ、マイクを握らせるとは、どういう倫理観でしょうか?

 エロ河が市民団体界隈を泳ぎ回り、複数人の若い女性を次々と狙い、共に働く仲間を怒鳴りつけ、長時間労働を押し付けるパワハラを10年以上も続けていたのを、市民運動側が阻止し得なかった自浄能力の無さを目の当たりにしたようでした。私が、同じ過ちを繰り返してはいけません。

 さいたま訴訟は、今後、控訴して東京高裁で戦われることになるでしょう。
 私はこれまで、傍聴に行けない場合には、さいたま訴訟をする会にカンパしてきましたが、今後は行いません。フクイチ核災害の被災者・被害者の救済が最優先ですから、傍聴も含めた全てを否定はしませんが、少なくとも、支援する会に金銭的な支援はしません。

 牧内氏が2月4日付の記事に書いている通りです。

引用:「いいことをしているから」というのは言い訳になりません。大きな社会問題に挑戦したいのならば、まずは一人の人の心の苦しみに真剣に向き合わなければいけません。

 最後になりますが、当記事内の意見に関わることは、全て私個人のもので、他の如何なる個人・組織とも無関係である事をお断りしておきます。


春橋哲史(ツイッターアカウント:haruhasiSF)​​​​​​​​ 






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Last updated  2022.09.22 17:56:22
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