「土佐源氏」実は創作だった(「毎日新聞」喫水線)
「毎日新聞」10日の「井上英介の喫水線」というところに、『「土佐源氏』実は創作だった』という文章が載っていた。 題を見たときには、「なにを今更」と思ったが、ちゃんと調べて書いていて、よくできていた。 著者はかつて、「土佐源氏」はありのままの聞き書きだと思っていたのだが、現地に取材に行って真実を知る。 「土佐源氏」にされてしまった人物のひ孫に会い、乞食ではなく、水車小屋を持っていて、精米や製粉で妻子を養っていたことを知る。 さらに、井出幸男という国文学者に取材し、宮本常一作と考えられる「土佐乞食のいろざんげ」をもとにしたものであることを確認する。 ちゃんと「土佐乞食のいろざんげ」も自分で読んでいる。 その上で、「土佐源氏」には、作品としての価値があると考えている。 書かれた側にとっては不快な著作だろうが、評価する側からすれば価値があるということなのだろう。 先日、NHKの「100分で名著」で「土佐源氏」を取り上げたときに、講師は、ずいぶん曖昧な言い方をしていた。研究者なら、これは創作であり、もとになった小説があることも知っているはずなのに、なぜそれをはっきりさせないのだろう。 なお、この記事は、毎日新聞のサイトで途中まで読むことができる。