源氏物語の紫式部日記88 あの口うるさい内侍も聞きつけていない
〔88〕心の中では際限もなく物思いを続ける「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「源氏物語の紫式部日記」の研鑽を公開してます。中宮さまもお隠しになっていたが、殿も帝もその様子をお気づきになり、殿は漢籍などを立派に書家に書かせられて、中宮さまにさしあげられた。中宮さまがこうしてわたしに漢籍を読ませられていることまでは、さすがに、あの口うるさい内侍も、聞きつけていないだろう。もし知ったなら、どんなに悪口を言うだろうと思うと、何事においても世の中というものは煩わしいことが多く厭なものである。惟規(のぶのり)を式部の弟とする説が多いし、「光る君」では惟規(のぶのり)は弟として脚本されている。晦日の夜の引きはぎでは、わたしは兄だと理解している。原文では、「かの人はおそう読みとり」となっていて、弟がなかなか理解できなかったことを、そばで聞いていた姉が弟よりも早く理解したというのでは、わざわざ日記に認めなくてもいいと思う。兄よりも年少の式部のほうが早く理解したから、あえて日記に認めたのであり、父の為時も残念がったのであろう。『紫式部日記』を読んできて、『源氏物語』のすさまじい肉迫力と、骨身をけずるような描写力は、類まれな詩魂と学才を持った、ひとりの容赦ない女流から必然的に生み出されたと妙に納得してしまう。