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碁法の谷の庵にて

2006年05月12日
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カテゴリ:法律いろいろ


 とあるブログで冤罪に泣く人と被害に泣く人の総和が少なくなるように過誤の可能性を設定すべきだ、と言う。

 確かに、灰色無罪と言われるような無罪判決は世の中にいくらでもある。アメリカのOJシンプソンの事件などはそのように受け止められているようだ。日本でも具体的事件名は差し控えるもののそういう事件はある。

 だが、それでも本音を言えば、かの言説には憤懣やるかたないのが実情である。そう思ったから、記事を見てすぐさまこんな記事を書いたのだ。
 確かに、理系の脳ミソで持って功利主義的にだけ考えれば、それは明らかに正しいことであろう。だが、人は一定の秩序の元に生きていかざるを得ない。その中で純粋な功利主義がどこまで使用できるのか、考えてみたことはあるだろうか。
 考えたことはありませんでは本来困るのだが・・・。


 犯罪を抑止する方法は、はっきり言って簡単である。
 公道はもちろん、国民全員の家にくまなく防犯カメラを入れ、厳しい思想統制をしき、電話や手紙を全て傍受したり検閲をし、凶器になりうるものは全て登録制にし、国民に定期的にポリグラフ検査などをかけたり、国民全員にICチップを埋めたり、定期的に家などに捜索を入れたりして統制すれば、犯罪の大半は事前にどこかでひっかかる。
 激情等に駆られてついやってしまいましたといっても、事後にはほぼ確実に見つかる
 嫌疑刑など必要としないで、犯罪率も激減、検挙率も激増するだろう。


 では、日本の法体系はそれを認めたか。今日本でそれが導入されないのはただ゙単に金や技術がないせいだけなのか
 断じてノーである。日本に限らない。世界中で、軍事独裁をしている国でなければそんなものを認めはしない。

 日本に限らず先進諸国の憲法は「国家に対して」国民の自由や権利を守れ、不可侵領域に入ってくるなと義務付けている法律である。そうした中には、国民を個人として尊重すると同時に、その中身として平等権、表現の自由はもちろん、刑事手続に関する諸規定も置かれている。

 では、疑わしきを罰することはどういうことか
 それは、人が犯罪に該当する行為をしたから処罰すると言うのではなく、疑わしいだけだが全体の秩序維持のために犠牲になれといっているのに等しい。早い話が、国民一人をいけにえにして、秩序を維持しようと言うものである。
 個人として人を尊重しろと言っている憲法の下で、そんなことが認められるはずもない。国民は「疑わしいから処罰する」のではなく「罪を犯したから処罰する」という大原則は、てこでも動きはしないのである。たまたま自分が多数派にいたからOKと言うのは認められない。少数派になっても守られる最後のライン、それが憲法だ。
 治安が悪くなったからでぐらつくようでは、もはや憲法どころか普通の法と呼ぶにも値しない。


 被害者の権利はどうなるんだ、と言うかもしれないが、それは厳しいようだが最初から想定の範囲内である。
 そもそも憲法によって、我々は思想信条にせよ、営業活動にせよ、私生活にせよ、自由な生活を手に入れた。だがそれを守るためということで、我々の犯罪抑止への熱望には厳しい枷がはめられてしまったのである。
 刑罰と言う形で、国家権力を通じて権利を守りたい、と言っても、その国家権力は憲法で縛っている。

 要するに、犯罪の被害を受けるかもしれないし、その代償に得た自由が基本的な価値になっているのだ。ご都合主義にいいとこどりなどできるわけがない
 国民が被害者に対してできることは、奪われた権利を出来る限り回復するために国民一人ひとりが力を尽くし、犯人を発見し、十分な立証ができるだけの証拠を集めるのに協力し、場合によっては保護するための可能な立法に向けて世論を形成していったりそういう議員を国政に送り出すことなどである。
 裁判官や制度を、何にも理解しないままに叩いたってただの自己満足。まして、自己満足でつるし上げられる個人や裁判官はいい迷惑である。





 被害者を守りたいという本音が、あらぬ方向へ行き、被害者のためなら目障りな制度は捨てろというような風潮が最近見られるように思う。安田弁護士叩きに黙秘権批判。重罰化や時効撤廃説はまだまだそれなりに強力な論理がついているが、後ろにはそんな風潮も見える。

 およそ法律家や立法府の意識が被害者に向いていなかった初期はまだしも、今はある程度被害者を保護する法制度も整ってきている。もう言いたい放題言って、国会にこんな意識があるんだと言っていれば実現するような改革はほぼ終わっていると思ってよいとさえ思っている。
 被害者が何を求めているのか。何が実現可能で何が実現不可能なのか。今できることは何か。改めて足元を見直すことが必要なのではないか。






最終更新日  2006年05月12日 14時34分55秒
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