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碁法の谷の庵にて

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2006年09月07日
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カテゴリ:法律いろいろ
 皇室に現皇太子以来の男児御誕生記念で皇室典範の改正論議も先送り模様だそうだが、ませっかくだしここで天皇に関連した話をちょこっとしてみましょうか。


 えっ、と思われるかもしれないが、司法試験を勉強するとなると、多少は皇室関連のことを勉強する必要がある。
 司法試験の択一試験は、憲法の科目がある。実務家になってから使うことなどほとんどないそうだが。そして、憲法の科目では、日本国憲法の条文に限らず、すでに廃止された帝国憲法や国会法、内閣法、地方自治法と言った統治機構の具体的内容を定めている条文、人権関連の条文でも、関連する法律はたくさんある。そして、こうした関連する法律について、全暗記までは不要でも割と幅広い知識が要求される。
 憲法に天皇制がばっちりと定められている以上、皇室関連の事項についても、ご多分に漏れず無視することはできない。天皇や皇室が出てくる条文はもちろん、皇族のありようについて定めた皇室典範についても主要な内容についてはばっちり憶えておかなければいけない。
 と言っても実務家になってから使う人はほとんどゼロに等しいような気はするし、極論すれば捨て問にしたところで他をばっちり解ければまあいいのだけど。


 戦前の皇室典範は、憲法と同格だったと言う。万世一系の現人神の天皇を決する皇室典範であるから、最高法規としての地位は憲法と同じだったという。
 だが、今の皇室典範は、ただの法律でしかない。ごく普通に国会が議決して決めている。
 皇位継承については、憲法上の制約は唯一つ。憲法2条皇位は世襲のもの。万世一系(?)の天皇家でなければ天皇にはなれないということである。例えば、民間人出身の皇后陛下などを天皇にすることは許されないというしかないであろう。
 ちなみに、実は女性天皇を認めない皇室典範は違憲と言うウルトラ少数説も存在するらしい。さすがにほとんど相手にされてないのは、現状を見ればお分かりだと思うが。


 さて、天皇はお飾りで、国の政治の意思決定などをすることはできない、と言う話は、多くの人たちは中学生でも習っているものと思う。内閣総理大臣を任命するのも国会の指名に従わなければいけないし、最高裁判所長官の任命も内閣の指名による。拒否しますなんてことは許されない。
 もちろんそうなのだが、現実にはいろいろな仕事をしている。意思決定ができないだけで、物事を認証したり、法律を公布したり。新年に「おことば」を言ったり、宮中の晩餐会の類で顔を出したり、外国の使節などを歓待したり、地方の施設を巡って顔をだしたり。
 天皇は決して暇人ではない。

 さて、今の皇室典範には、天皇になるについて年齢制限がない。となると、安徳天皇や清和天皇みたいに、小さな子供が天皇と言うことだってありうると言うことである。また、年をとってボケたからといって、天皇を退位させる制度はない。
 そうなったら、上に書いたような仕事はまずできないことになる。

 そういうときのために、それこそ平安時代みたいな話だが、「摂政」を置く事ができる。(憲法5条)摂政になったら天皇の名前で天皇と同じ仕事をすることになる。また、順番次第だが民間人出身の皇后なども摂政になることが可能だ。
 そして、摂政をやっている間は、その摂政は刑事裁判で訴えられることはない。(皇室典範21条なお、天皇には実はこうした条文はないそうだが、解釈上天皇はなにをやっても処罰の対象にならないとされる。それどころか、天皇に対して民事裁判を起こすこともできないとされている。(民事責任自体は存在すると言われるが)
 象徴たる者を法廷に引きずり出して裁くのは象徴の地位に合わないとされるのだ。極論すれば、天皇に殺された人がいたとしても処罰はされない可能性が高いのである。


 はい、ここで問題です。
「内閣が衆議院を解散するのはどうやるの?」



 重要な政治問題があるとき、内閣は衆議院を解散して総選挙を行って民意を問うことがある。先日の郵政民営化をめぐって解散、自民党が大勝したのがその例だ。

 だが、ちょっと待ってほしい。「内閣は、任意に衆議院を解散できる」などという条文はどこにもない憲法69条は、内閣不信任案が出されたときの解散について定めているが、別に内閣不信任案など出されてはいないで解散することはある。
 与党と内閣でつるんで形だけの内閣不信任案を出して可決・・・なんてことはやっていない。


 その根拠はなんと天皇の職務について定めた憲法7条にある、と聞いたら驚くだろうか。
 先日の解散のときにも議長が「憲法7条に基づき」などと言い放っているのだから、実務は完全にそれで動いている。学説上はもっと別の条文を使うべき、と言う見解やそもそも根拠条文もいらないという見解もあるが。

 憲法7条3号は、内閣の助言と承認に基づいて天皇が行う職務として衆議院の解散を掲げている。だから、その点に助言と承認を与えれば一発、と言うことなのだ。



 



 三星火災杯の記事については、また明日ね。





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最終更新日  2006年09月07日 13時44分45秒
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