3412930 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

碁法の谷の庵にて

碁法の谷の庵にて

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
2008年05月19日
XML
カテゴリ:法律いろいろ
裁判員制度となれば、裁判員は有罪判決を下すならの話ですが、その量刑を決定する必要が出てきます。どのような考え方で刑罰を決めるかは、こちらの拙稿を参照願うと致しましょう。
では、日本における刑罰はどんなものがあり、その内実はどうなっているか。それを、今日は紹介していくことにしましょう。

刑法において定められている刑は7種類です。


1、死刑
言わずと知れた死刑です。死刑の方法は、絞首、ということですが、一般的にいうところの首吊りによって行われます。
死刑にあたる罪は、刑法・特別刑法合わせて17ありますが・・・これをすらすら言える人は刑事の裁判官でも少数ではないかと。また、死刑が出る罪は殺人罪がらみが大半で、放火などでも死刑はありますが実際は放火だけで死刑にはなりません。ただし、外患誘致罪、つまり外国とつるんで日本に武力を行使させた場合の罪(刑法81条)は、死刑しかありません。まあ、こんな罪で裁かれた人は少なくとも戦後はいませんけど。
死刑制度をめぐってものすごい論議があることは知っている方も多いでしょうし、何度か触れても来ましたが、今日は刑罰の紹介にすぎないので割愛。なお、最高裁判所は死刑制度を合憲であると解釈しています。

2、懲役
つまり、刑務所に叩き込んで就労させる刑罰です。日数は期間に定めがある場合には、i1か月から20年が原則です。しかし、併合罪などという形で増やす場合には30年に延ばすことができます。
また、無期懲役という制度もあります。無期というのは、10年で仮釈放が認められる制度であることは最近よく知られるようになりましたが、実際の仮釈放はなかなかされていません。

3、禁錮
懲役刑とよく似ていますが、禁錮は閉じ込めておくだけで、中で就労させることをしません。ただし、刑務所の中は娯楽も制限があって働かなければ暇ですから、願い出て就労することができ、禁錮受刑者の多くはそのように就労しています。いったん就労したら、義務じゃないから・・・ということで懲役囚と区別がされるわけではなく、懲役囚と同じように就労しなければいけません。
禁錮の長さ期間については懲役刑と同じように扱われています。
日本の刑罰は懲役刑が中心で禁錮は少ないですが、それでも禁錮刑にあたる罪としては、おもに政治犯や過失犯と言った罪が中心とされています。政治犯などの場合は、良かれと思ってやったこと、彼らの名誉に配慮すべきという発想が根底にあるようですが…いまどき時代遅れ、という考えもあるようで、懲役と禁錮の一本化が検討されています。

4、罰金
文字通り「金払え」です。では、もし金が払えない(あるいは渋って払わない)場合は?この場合は罰金額に見合う期間、労役上に叩き込まれて働かされることになります。最近、モラルハザードで金を払わず叩き込まれるバカが増えたというニュースが流れました。
最低金額は1万円とされています。では、刑法における罰金の上限はいくらでしょうか?わいせつ物頒布に250万とか、先端的な法律では罰金が億単位というのもあるという話を聞いたことがありますが、実は「無限大」です。
「偽造通貨収得後知情行使」という罪、つまり贋金をつかまされた後になって本物だと知り、それなのに使った場合の罪について、「使用額の2倍」という上限が定められています。つまり、100兆円使えば罰金は200兆円、1京円使えば罰金は2京円ということで、無限に増えていきうるのです。まあ、理屈の上ではですが。
罰金刑は、現在経済力によって罪の重さに差が出るなどの問題が指摘されています。

5、拘留(こうりゅう)
身柄を拘束するけれども就労を強制しない点で禁錮とよく似ていますが、期間は30日以内です。罰金より軽い罪と位置付けられていますが・・・本当でしょうかね?罰金1万円と30日の身柄拘束、あなたはどっちを選びます?
また、実際問題受刑者教育という視点でも難がある期間で、執行猶予もできず、使い勝手が悪い…と私の師匠は言っていました。
なお、「勾留」も「こうりゅう」と読みますが、勾留は刑事裁判で捜査・裁判のために被疑者の身柄を保全する制度であり、拘留は刑罰そのものです。きちんと区別できなければいけません。

6、科料
1000円~9999円の金銭を払え、ということでつまりは罰金のもっと軽いバージョンです。ただ、罰金と違って執行猶予はありません。
なお、行政上の制裁として「過料」があり、これもかりょうと読みます。両者を区別するために、「過料」を「あやまちりょう」、「科料」を「とがりょう」と読むことがあります。

7、没収
没収は、これまでの6つとちょっと毛色が異なります。有罪判決で、「○○を没収する、終わり」という判決は出ません。上の死刑~科料までの罰を言い渡した上で、さらに追加で没収が言い渡されます。(付加刑といわれます)また、没収については刑法の各条文に○○を没収するという規定がなくとも、没収ができます。
その上で、没収されるものとして
一、犯罪行為を組成したもの(強盗予備罪で用意したナイフなど)
二、犯罪に用いた、あるいは用いようとしたもの(殺人罪におけるナイフや放火罪におけるライター)
三、犯罪行為によって作られたもの(通貨偽造罪で作られた紙幣など)
四、犯罪行為によって取得したもの(盗品譲り受けの罪の盗品など)
五、犯罪の報酬になるもの(殺人の謝礼金など。保険金殺人の保険金はこれなのかなあ?)
六、三~五までの物件の対価として得たもの(偽造紙幣で手に入れたものなど)
こうした物件がもう無くなってしまった、あるいは何も知らない第三者の手に渡ってしまい、第三者が所有権を手に入れてしまったという場合には、没収する物を取得した当時の金額を追徴することになります。


さて、刑罰に付随する制度も、いくつか知っておいていただきましょう。

1、執行猶予
名前くらいは知っているでしょう。
執行猶予の場合、有罪判決後身柄は釈放され、その後の猶予期間を何の罪も犯すことなく経過すれば、基本的には彼は制度上は有罪判決を受けなかったことになります。つまり、まっさらの自由になれるわけです。社会から切り離さず、社会復帰させておいた方が、彼は真人間でいられるだろう、と考えれば、執行猶予は単なる温情ではなくて大変合理的な制度だと言えます。
執行猶予は、3年以下の懲役・禁錮・罰金などにつけることができます。猶予最長期間は5年です。例えば、懲役3年、執行猶予5年と聞いたら、ギリギリのところで猶予してあげたんだな、と推測できるわけです。
では、その間に性懲りもなく罪を犯し、禁錮以上の刑をくらってしまうと?実は、それでも執行猶予をもう1回とり、前の犯罪の執行も猶予してもらう余地はありますが、1回目と比べてかなり厳しく、懲役1年以下でなければなりません。しかも後述する保護観察が必ず付きます。そして、それがとれなければ新たに犯した罪と前に犯した罪の分合わせて服役しなさい、ということになります。また、裁判以前にやらかした罪が発覚してそれに執行猶予がない場合にも、執行猶予は無意味と化します。
罰金刑をくらってしまった場合でも、執行猶予は裁量で取り消すことができます。

また、執行猶予の一つのオプションとして、「保護観察付執行猶予」というのもあります。執行猶予にはするけど、その間、執行猶予者保護観察法に定められている通り、行政機関、と言っても実際に担当しているのは民間篤志家出身の保護司ですが、彼らにしっかり見ていてもらいなさい、ということになります。そして、保護観察付きの執行猶予中にもう1回やらかしたらアウト。実刑になってね、ということになります。
また、保護観察で遵守事項を守らないでいても、執行猶予取り消しを裁量的に行われることがあります。つまり、保護観察がつくか否かというのは相当差が大きいというわけです。

2、仮出獄・仮出場
懲役刑、禁錮刑は仮出獄、拘留は仮出場と呼ばれます。
例えば、懲役15年の判決を受けたとします。その場合、改悛の状があると、刑期の3分の1、無期懲役なら10年を務めあげれば行政庁、現在は地方更生保護委員会が決定権を握っています(犯罪者予防更生法29条・30条)が、彼らが仮出獄を許すことができます。仮出獄を認める要件としては、彼のしでかした犯罪行為の内情も考慮することが要請されていると考えられます。
拘留の場合は1日も拘留しないで即仮出場ということが可能です。
無期懲役・無期禁錮刑で出獄するのも、この仮出獄制度によるものです。

裁判所が言い渡した判決を行政機関がかえるものではありますが、このような制度がなければ受刑者としても更生にインセンティブが働かず、中で不真面目にやってようがまじめにやってようが同じ、ということになり、刑務所内の秩序維持の観点からも適当ではありません。

そして、仮出獄のまま刑期を終えれば、刑は受け終わったものとみなされます。しかし、仮出獄は順守事項を守らないと裁量で取り消されますから、結構な綱渡りになります。

・・・では、刑期がない無期懲役は?残念ながら恩赦を受けない限り、死ぬまで仮出獄の身となることになります。









刑罰について考えるときには、これら全てについて、ある程度網羅的な知識を持っておくことが必要になります。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2008年05月19日 14時25分25秒
コメント(2) | コメントを書く
[法律いろいろ] カテゴリの最新記事


PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索

カレンダー

カテゴリ


© Rakuten Group, Inc.