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碁法の谷の庵にて

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2008年10月13日
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カテゴリ:カテゴリ未分類
光市母子殺害事件、懲戒請求の扇動をめぐる地裁判決後、ネット世論の動きを見ていました。


一部の懲戒請求支持派閥は、なお意気軒昂でした。多くの人が手間をかけて懲戒請求したというのに、それを考慮しないというのか、などと、橋下氏がたかじん委員会で言っていた発言とよく似たことを言っている人が主流だったでしょうか。判決が不当だ、あの裁判官を懲戒する方法はないのか、などと書いている人間もいました。
しかし、橋下氏の口の軽さと言う視点に批判を向けた者も少なくなく、特に弁護士として基本的なところが分かっていないと指弾されたも同然の判決文で、橋下氏に対して冷たい目線を向ける人間も相当数に上っていました。
もし橋下氏が府知事でなかったら、逆に彼に対してのバッシングが起こり、彼は仕事を相当程度失ったと想像されます。


すでによそでも批判されていますが、おそらく懲戒請求を行った実人数は650人前後だと思います。(原告側主張で、裁判所で認められた請求の数からの大体の憶測)テンプレートを印刷して名前書いて送るだけの行為(大半がテンプレート懲戒請求だった)が手間だというのでしょうか。あの頃私は記事を1件かけばその程度の労力は楽勝でかけていた(調査や勉強で)と思いますし、弁護団個々人や事務員さんがかけさせられた手間はテンプレート一通送る行為の何倍にもなっているはずなのですが。第一、それをいったら508人の弁護士が懲戒請求ストップの声明をかけたことも、正当に考慮されなければなりません。(弁護士より市民が上だという訳ではなくとも、市民より下に扱われなければならない理由もありません)私自身も、今後荒唐無稽な弁護が懲戒相当でございなどと判決が出たら、よほどの新たな事情が発覚しない限り、その時私に弁護士の資格があったならば代理人に名前を連ねます。無償でも。(優秀な弁護士の先生方がいらっしゃるので、ペーペーに頼む仕事なんかないということにはなるでしょうが)



去年の今頃は、ネット世論の大多数派閥が弁護団指弾に向いており、そういった動きに警鐘を鳴らすのは、法曹実務家のブログや周辺法曹、あるいは私のような法律家を希望する人間の他には少数でした。こうした動きにストップをかけようとするブログは検索して10件に1件あれば多い方で、また批判を向けたブログの多くが炎上の憂き目にもあったり、突撃者に対応することになりました。
しかし、理屈ではなく数の力にものを言わせて最後の防衛ラインをなしにしてしまおうとすれば、当然自分の時にも最後の防衛ラインは数の力で潰されてしまうことを意味します。あれほど警鐘が鳴らされていたにもかかわらず、(私など、こういう情報があればどうぞなどと、懲戒請求者の助けになりかねないようなことまで言いました)警鐘を鳴らした者を罵倒し、窘めた者も懲戒請求してやる、懲戒請求がはねられたのも自浄能力がないせいだなどと、まるで非国民扱いでした。

これに対し、弁護団は、公開の法廷で、公正な裁判官がやる形で判断してもらった方が理解してもらえるだろうということで、橋下氏への懲戒請求という方策を後回しにし、(もっとも、橋下氏の親弁が懲戒請求しましたが)民事訴訟を提起しました。結果から見れば、この方策は当たっていました。懲戒請求をはねつけた弁護士会の決定に対して身内のかばい合いなどと批判していた連中もいましたが、裁判所を巻き込んでこのありさまでは、もはや身内のかばい合いによる結論であるという非難では済まされないことは簡単に分かります。

意気軒昂な彼らは気付かないかもしれません(あるいは気付かないふりをしているのかもしれません)が、ブログ検索でもそのように意気軒昂なブログは必ずしも多くなく、橋下氏という人物の問題点を指摘する見解も決して少なくありません。

さらにさらに、です。彼らが神か仏かとばかりに持ち上げてきた本村氏は、地裁判決を正当なものと受け止めていました。10月3日の毎日新聞朝刊、14頁で、

「現行法に照らし、刑事弁護人の職責、懲戒請求制度の目的を考慮すれば、裁判所の判断は 正しいと思います」
(懲戒請求の殺到は)「橋下知事だけの責任とは到底思えません。最近のテレビメディアが事件や政治の難しい問題を バラエティー感覚で取り扱う傾向があり、その産物であると思います」
「民主主義の根幹を支える『報道のあり方』について、考える時ではないかと思います」
「裁判所は、私たちに『情報を伝える側の責任』、『情報を受ける側の責任』を明示されたのだと思います」


と言ったとのこと。地裁判決がそういった、とまでは個人的には思わないのですが、いずれにしても本村氏はこの騒動について情報の受け手たる懲戒請求者側にも問題点があった、テレビメディアのバラエティー感覚がもたらしたことを指摘するも同然の発言(突き詰めれば、懲戒請求はそれに載せられた産物であるということでもある)をしています。当初は請求を出した人たちに対して「感謝の気持ちもある」と言っていた本村氏ですが、その時でも、請求が適法であるか否かは司直の判断に委ねる旨を語っていましたし、銃弾脅迫などについて、自分が原因かもしれず、そうなら弁護団には申し訳ないと言い、結局メディアへの露出を控えるようになった本村氏。(こちら参照)橋下氏がその司直に一喝された以上、その内容もろくなものではないとみたのでしょう。
あれほど被害者の立場がどうだのと押し立てていた人たち。中には、本村氏に弁護団vs橋下氏の裁判を裁かせるべきだ!とすごんでいる人もいましたが、結局彼らは本村氏を自分の感情発露の「言い訳」に使っているだけでした。本村氏に関係なく許されないというのなら筋は通りますが。

さらに、橋下氏の謝罪会見でも、被告人や弁護団に対する謝罪は出てきましたが、個別の懲戒請求者に対する関係では謝罪の言葉は出てきませんでした。訴訟上、彼らは自分の判断でやったんだと言った以上当然だと言えば当然ですが、つまりもう彼らは橋下氏も擁護してくれないということです。・・・ま、もともと橋下氏に対して請求が認められないと一般請求者に請求が行くという意味で利害は相反するというようなことは、モトケン先生も私もすでに指摘してありましたけど。


※(追記)図書館で毎日新聞を確認したのですが、本村氏のコメントが見当たらなかったので、確認が取れるまでいったん抹消しておきます。確かにソースはネット情報で、しかも毎日のサイトではなかった(ただし、本村氏が評価した旨の表題の記事はある、こちら参照)ので。ただ、本村氏がそう言ったとすれば賛成ですし、本村氏なら私と同じ問題意識を持つであろうというくらいの信頼はあるということは、声を大にして語りたいと思います。

こうなる徴候自体は、実はあの頃にもすでにありました。

その尖兵であった懲戒請求wiki。刑事畑で超有名な弁護士(こちら)に送ったといわれるメールは以下の通り。モトケン先生にも協力してくれと言うメールが届いたとか。多分同じメールだと踏んでいます。

私↑のサイトの管理人で、光市母子殺害事件の被告側の弁護士に懲戒請求をかけるために動いています。この21人の弁護士に懲戒請求をかける動きが起こっている理由は、TVや新聞の報道や同じ弁護士ということで話題になっていて、ご存知だと思います。さて、メールをさせていただいた用件ですが、ネット等で21人の弁護士に懲戒請求をかける動きが出ていることを、少しでも知っていただきたかったからです。ブログでこのサイトのことをどんな形でよいので、取り上げて欲しいです。また、弁護士仲間の飲み会で「そういえば光市の事件でネットでこんな動きがあるよ」と話のネタにしていただけるだけで十分です。


彼は、おそらく懲戒請求が違法だとは知らなかったあるいは考えもしなかったのでしょうね。先述の弁護士は、橋下氏の扇動に踊らされていると分析。結局、wikiの中の人は、ヤメ蚊弁護士から懲戒請求違法説を突き付けられ、事情を何にも明らかにせぬままネット上から姿をくらましました。

私はもう橋下氏個人を批判する気は当面失いました。無論、今後またおかしな発言で正当化に走ろうものなら取って返して総攻撃ですが、現段階で問題視すべきは橋下氏ではないように思います。

問題にすべきは、第一にマスメディア。BPOの意見書が出て、判決から10日が経過したとは言いながら、たかじんのそこまで言って委員会など、こういった動きに加担した番組は、今なおその点を反省あるいは総括していません。明らかに橋下氏の言い分に乗っていたのに、判決が出るや否やほら見ろとばかりの態度をとるようなテレビもありました。まだ係争中であるとはいえ、多くの懲戒請求者を危険に巻き込んだ、あるいは橋下氏の扇動に加担したという自覚さえもないのでしょうか。

第二に、今なお自分の正義ばかりを振り回し、自分の仲間以外相手にしてくれていないにもかかわらず頑張っているネット世論です。個々の懲戒請求を明らかにしたブログでも、該当記事を消すなど、逃亡と言うような行為はしていますが、そのことを反省・総括する気配は見られません。
ある意味では残党狩りにも等しいですが、彼らを社会に適応できるようにするためには、あなたたちの正義はだれも守ってくれないよという現実を直視させるほかありません。本村氏にも橋下氏にも地裁にも見放されて、それでも自分の正義にしがみついていられるというのは、カルト宗教と同類の匂いさえします。
無論、彼らなりには、義憤・正義感と呼ぶべきものなのかもしれませんが、多くの自爆テロリストやカルト宗教信者はそういう義憤なり正義感から不法なことをする、というよりそういう義憤・正義感がなければ、例えば自爆テロなんてそうそうできるもんじゃないのです。そして、いかに悔しくても、法律をぶち壊して他人に損害を与えたら、いかなる正義感なり義憤なりがあろうと賠償しなければならない。それが法治国家というものです。そういうあり方を否定するなとは言いませんが、自分の正義で他人に損害を与えるのはまさしく自爆テロリストと同じです。もちろん、世が世なら逆に英雄になれるかもしれませんが、今のご時世でそんな英雄はそうそう生まれるものではありませんし、そこまでして戦うことに勝算など無いから英雄なのです。日本中からそういう英雄が生まれれば、日本は無法地帯となるでしょうね。

私自身の座右の銘を、ブログトップに書くようにしました。あの座右の銘と、この懲戒請求騒動は重なるはずだと思って書いています。

「人間という生物(自分含む)は呪わしいほど愚かである」→その事が分かっていれば、自分が事件において犯人であると決めつける発想も愚かであることに気づくはずです。
「最後に結論の正当性を担保するのは手続の正当性である。」→これが分かっていれば、手続をすっ飛ばせば死刑判決の正当性さえ怪しくなってしまうことが理解できるはずです。
「重大事件が起こったといってすぐ忘れるような教訓なら、持たない方がマシである。」→これが分かっていれば、弁護が必要だということは分かっているが・・・などという枕詞がゴミの役にも立たない(むしろ恥ずかしいこと)ことがわかるはずです。
「反撃される可能性のない攻撃はありえず、強硬な攻撃ほど強烈な反撃を招く。」→これが分かっていれば、訴えられることに脅えるようなことをしたということが理解できるはずです。

細かい理屈を覚えるのが面倒なら、私の座右の銘だけでも、かみしめてみてもらえないでしょうか。





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最終更新日  2008年10月13日 19時28分00秒
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