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碁法の谷の庵にて

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2009年02月14日
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カテゴリ:法律いろいろ
裁判を起こすことは、起こされる側としては大変苦痛なことです。


全く身に覚えのないことで1億円の請求がされたとしましょう。(例えば、1億円貸した、とか)
あなたのところには、訴状の写しやこの期日に来なさいと言う裁判所からの書類が来ます。



被告となった方としては、身に覚えのないことで1億円もの大金を払ってやってもいいと思う人はまずいないでしょう。

俺は身に覚えがないんだから裁判所に任せておけばいいさ、と言う豪胆な人ならいるかもしれません。
しかし、裁判を放置して裁判所に任せておくと大変なことになります。裁判所に行かない、答弁書出さないとなると、いわゆる擬制自白と言って相手の事実に関する言い分をすべて認めたことになってしまうのです。(159条1項)
例え事実が真実であっても、法律的に見ておよそ請求権ないんですが、と言うような事態でなければ請求は通ってしまう訳です(1億円プレゼントしました。だから約束してないけどお礼に1億円分の何かください、というような)。金を貸したという体裁だけ整っていれば十分だ、と言う訳です。
請求が通れば、最悪相手はその判決を裁判所に持って行って執行をします。1億円となれば、何年もローンを払った家屋敷を土地ごと追い出され、めぼしい資産は全て売り払われて(生活必需品の類は残してもらえますが…)、更にまだ債務残ってるんですけどと言われても文句は言えません。

自分に向かって起こされた裁判の放置は相手に生殺与奪権を渡すにも等しい危険なことと言う訳です。


もちろん、そこまで豪胆な人は少数でしょう。
1億円、何だかわからないけど支払わないで済むためにはどうしたらいいの?となるでしょう。
仕方がないので、弁護士に金を払うか、役所の市民相談にでも行って、相談しなければならないでしょう。もちろん最初から理由がない以上、しっかり応戦すれば、あなたの勝ちです

では、その「しっかり応戦」はどうしたらよいのでしょう?まあ、とりあえず答弁書を出す・・・ではその答弁書はどんなふうに書けばいいの?・・・結局弁護士の先生に頼もうかと言うことになりますが、その弁護士を頼むのにかかる費用は?と言うとこれがまた大変。確実に100万円単位でしょう。
しかも、裁判で勝ったからと言って金がもらえるわけではなく、また弁護士費用を相手に払ってもらえる保証など全くありません(弁護士費用の敗訴者負担は批判が大きく、認められるのは限定的のようです)。
つまり、勝っても1文の得にもならない訴訟で数100万円出せと言うことになります。
そして、判決が出るまでは、敗訴するというようなことに脅えなければならないでしょう。


何でこんな負担を背負わなければいけないんだ、と悲鳴を上げたくなるような感じですが、国民全体に裁判を受ける権利を保障する以上、反射的に各人に負担を求めることは仕方ないという価値判断があると言ってよいでしょう。
とはいえ、それは各人のもっている請求権を守るためのもの。嫌がらせ手段として裁判を用いることを好き放題に容認するような性質のものではありません、

私の知る実際の裁判(と言ってもそんなにたくさんの裁判を知っているわけではありませんが)では、世の中が性善説で成り立っているという訳ではないにしても、およそ背景事情が全くないような件は意外と少数です
もちろん訴えられた方も悪い、と言うのではなく、ある程度不幸な誤解や感覚的すれ違いがあったとか、実際にはおろか極まりない第3者がいてその損害を被害者同士でなすり合う形になってしまったとか、芽はあるんだけどそれが過剰に評価されてしまうとか、そういった事情があるのが普通です。

そういう背景のはの字もありはしない、嫌がらせ目的の訴訟について、損害賠償請求が認められる可能性があることは、以前の記事でも説明しました。こちらからどうぞ。


しかし、裁判所はもう一つ、こういった訴訟に対して強硬な姿勢を見せる例があります。

それは、訴えの却下。最初から嫌がらせ目的で訴訟を起こしたことが明らかになった場合、主張を審理することもしないで、訴えを門前払いしてしまうという大技です。

もっとも有名なのが、東京高判平13・1・31。

実は創価学会のからむ有名な裁判(この記事読めばあの裁判かと分かる人もいるでしょう)なのですが、裁判所は、この件について原告側に特級ともいうべき非難を浴びせました。

原告は、被告にレイプされたと言って裁判を起こしたのですが、あらかじめ被告に敵意をよく示していた週刊誌に手記を投稿したり、しかも肝心の裁判の証言ではいうことをころころ変えたり(もちろんその理由もまともに説明できず)、しかもそういった嫌がらせをする動機までばっちりあったと来たのです。


これに対して裁判所は、裁判を却下、つまり門前払いしますと言う判断をしたのです。
なぜ門前払いをするかと言えば、裁判所としては、たとえ原告を敗訴させたとしても、このまま裁判を続けること自体が、原告の原告の不法ないやがらせ行為に手を貸すことになってしまうので、ひとたび嫌がらせと分かった以上、そのような不法な行いに手を貸すようなことはしない、協力を拒絶しますと言う意味で、門前払いと言う形を取るのです。

実を言えば、却下されたからと言っても、却下する為には本当に主張の事実があるのかどうか判断するのが普通であるため、(例え嫌がらせ目的があったとしても、そのために本来請求権がある事項について退けられなければならない理由はない)原告側にとってさほどの実益はありません。
むしろ、最後まで裁判をやった方が後の訴えを法律的に違法にできる意味合いさえもあります。(実際には、却下でもほとんど結論は同じになるでしょうが)
客観的に見れば、被告側に対して雷が落ちたと言った程度の話なのです。


しかし、裁判と言う社会制度を濫用的に用いる者に対し、裁判所は厳しい姿勢をとる、ということは、知っておいても無駄ではないか、と思います。







ちなみに、刑事裁判でも似たような論点はあったりします。大昔はかなり論争されたようですが、今はあまり大きく論じられることはないように思います。





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最終更新日  2009年02月14日 14時03分34秒
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