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碁法の谷の庵にて

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2014年02月20日
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テーマ:ニュース(99462)
カテゴリ:法律いろいろ
先日、大津いじめ訴訟でデヴィ夫人の名誉毀損について、敗訴判決が下りました。



これについてデヴィ夫人が、ブログその他で気炎を上げています



しかし、これを見ているとお世辞にも得策とは言えない訴訟対応をしているとしか思えない、と言う印象を抱いて、纏めてみることにしました。





何らかの過ちを犯し、あるいは犯したと疑われ裁判で訴えられる。これ自体は、有名人・一般人問わず誰にでもありうることです。

有名人ならなおのことリスクは高くなるでしょう。

ブログに掲載したことを理由に名誉毀損で訴えられるのは、写真を掲載したならば誰にもある話です。
しかし今回デヴィ夫人が狙い撃ちになったのは、デヴィ夫人は有名人で居場所が分かりやすく、判決後の回収可能性もあること、デヴィ夫人の影響力の大きさと言った、有名であることに伴うものと考えられます。



もちろん、これに対して自己の正当性を応訴する、というのは権利ですし、そのこと自体については、第三者がとやかく言うことではないだろうと思います。

ところが、今回のデヴィ夫人の件有名人などが提訴された訴訟に対する応戦、特にブログや公式HPなどで記載されているものについては、リスクについてきちんと考えているのか、と思わざるを得ない、危険なものをちらほら見ます。





ブログやマスコミで訴訟についてコメントするリスクは、私に思い付くだけで以下のものが挙げられるでしょう。



欠点その1 手の内を見られる



そもそも、訴訟の主張内容をweb上に載せるというのは、要するに裁判の主張を全部事前に、相手方にも隠さないでつまびらかにするということです。自分のブログやHPを使っている場合、マスメディアが勝手に編集してしまったもので、本意はそうじゃないんだ、というような言い分も通じないことになります。

当然中身は筒抜けで、手の内を隠しておくなどと言うことはできません。相手方代理人から裁判上、プリントアウトされた上で証拠として提出されることもあります。私が相手方代理人なら、デヴィ夫人の判決後のブログ記事は監視、コメント削除まで含めて逐一プリントアウトして保存しておき、控訴審では自身に有利な証拠として提出するでしょう。

また、ブログ記事では相手方代理人どころか、「裁判官が見てしまう」恐れもあります。裁判で証拠で出されなければ判決の基礎とはならないでしょが、訴訟指揮や裁判官からの和解の勧め等に影響を及ぼす可能性もあるのです。

後々の方針変更をするに際しても、重大な支障を来たすでしょう。



欠点その2 損害額増大・新規不法行為成立の可能性



自身の法的正当性を主張するだけでなく、相手方に対する人身攻撃を内容とする主張を、裁判以外の場で主張する行為は特に危険です。

裁判を受ける権利が憲法で保障されている以上、無制限ではないにせよ一定程度の相手方への攻撃にわたる主張はやむを得ないと見なされ、例えそれが正当な主張と認められなかったとしても、違法な主張であって名誉毀損などを問う、と言うのは難しいとされるのが通例です。



しかしながら、あくまでもこれは裁判と言う場に直接関連するものだからこそその限度で許されていることであり、訴訟外でのイメージ獲得活動では、裁判を受ける権利と言うだけで弁護しきることは困難でしょう。



実際にこうした対応のまずさを引き金に起こった比較的有名な事例が、前大阪府知事である横山ノック氏のセクハラ訴訟(大阪地裁平成11年12月13日)です。

この訴訟では、セクハラ被害に遭った女性が横山ノック氏を訴え、横山ノック氏は公務の時間が惜しいという理由で不戦敗戦術をとりました。

ところが、裁判外ではその他の記者会見や大阪府議会における答弁で自己の正当性を主張し、被害女性に対して攻撃的な言説(判決文によれば「真っ赤な嘘」「明らかな選挙妨害」「でっち上げ」)を繰り返し、また民事訴訟法の規定や裁判における決定を意図的に歪曲したと疑われても仕方のない発言も行い、全国に放送されました。その結果出た判決で、裁判外での発言による名誉毀損判断についての一部を抜粋しますと・・・(赤字は筆者の補足です)



被告(横山ノック氏)による一方的な発言により、原告(セクハラ被害者)は、本来被害者であるにもかかわらず、ことさら被告を陥れるために虚偽の事実を申し立てたり、被告の反論の機会を奪っているかのように誤解されるかもしれないとか、さらに世間の好奇の目に晒され続けるのではないかとの強い不安感を抱くことにより、著しい精神的苦痛を受けたことが認められる。

 以上のように、被告は、自己の高い知名度を利用して、原告には何らの反論の機会すらない記者会見等の場において、原告を侮辱し非難する発言を繰り返すことにより原告に対して著しい名誉毀損行為をし、右発言内容がマスメディアを通じて連日のように全国に報道された。これにより原告が被った精神的苦痛を慰謝するには、三〇〇万円が相当である。




セクハラなどの慰謝料も認められていますので300万円が全額ではないですが、つまらない言い訳をせず、本当に「文字通り」不戦敗戦術をとっていたならば、少なくともこの300万円は払わなくても済んだお金です(名誉毀損民亊訴訟では、単発で見ても300万円は相当高い部類)。

争い事があるからと言って、イメージ獲得のために手段を選ばなくてもいい、などと言う考え方は通らないし、新規で不法行為を問われても文句は言えないのだ、と言うことなのです。

また、新規での不法行為とまでは言えなくとも、こうした一連の行動の執拗さが、慰謝料等の増額要素として働いてくる可能性はあります。例えば、過失100%の側が責任を全く認めない、あるいは殊更低い責任主張をしたために通常の交通事故より慰謝料が増えてしまったと言う現象は、交通事故などでもあります。


デヴィ夫人が発言通り控訴するのであれば、相手方も控訴・附帯控訴してくる可能性も十分にあります(原告の請求は一部退けられていますし、デヴィ夫人の影響力を理解していないと判決を批判もしているようですし)。控訴をしたはいいが、附帯控訴された上、もっと不利な判決を招いてしまいましたと言うことだって当然あります。

民事裁判でも、一審の判断が二審以降抜本的に変わってしまうのを狙う、と言うのは、有力な新証拠を出しでもしないとかなり苦しいものがあります。
一審で負けてしまった場合には、傷口を広げないためにも、控訴と言う手法を取るにせよ、せめてコメントは差し控える、控訴を表明するにせよ、主張立証は弁護士に任せてありますと言っておく方が安心でしょう。



欠点その3 弁護士との関係


担当弁護士としても、自分の依頼者が当該紛争の中で更に不法行為を重ねましたと言うことでは、面目丸つぶれも甚だしい所です。不法行為が弁護士の指導と疑われれば、相手方から懲戒請求をかけられたところで文句は言えません。

弁護士は依頼者のある程度の勇み足は見逃すことが多い(少なくとも私はそう)ですが、担当弁護士が止めていたのに強行して自爆、などと言うことになれば、辞任されても仕方ないということになりかねません。



また、仮に弁護士が粛々と進めてくれても厄介なことになります。

裁判では、向こうの代理人の弁護士がきちっと指導してくれるだろうし、それには従ってくれるだろうということを前提に和解に応じることが珍しくないのです。

代理人の手にも余ってる依頼者だな、と見られれば、履行の確保が疑わしい以上、和解条件も緩めませんと言うこともあります。
(デヴィ夫人は和解は断固応じない構えですから、その意味では覚悟はできているのでしょうが・・・)



それでもやるなら


一般的な利害得失でこうした戦術に効果があると考えられるのは、例えば文字通り裁判に1円分でも負けたら全てが終わってしまうような世界で、「捨て身の戦術」としてやむなし、と言うことはあるでしょう。刑事事件などがそうです。

また、広く伝えることでアリバイ証人などが登場する可能性があるような件であれば、そのためにリスク覚悟で広く伝える、と言うことも考えられるでしょう。名乗り出たアリバイ証人とは裏で話せば、相手方に漏れることもありません。

・・・しかしながら。現実問題としてこういった例は少数です。



また、利害得失なんてどうでもいい、こうした自分の言いたいことを言いきるこそが大事で、裁判の結果など二の次でいいんだ、と言う価値観を持っているのならば、それも一つの考え方かなぁ、とは思います。

それでも、マスメディアによる恣意的な編集、誤った法的知識に基づく発言が傷を広げる可能性等を踏まえれば、発言内容については弁護士サイドでチェックすることも重要でしょう。コントロールを離れないように、正式な記者会見を開くなり、マスメディアには文書で送るなり(それでだってコントロールを離れる例は後を絶たないのですが)といった慎重な対応が必要です。





絶対に勝てる案件ならばまだしも、現実に第一審で負けてしまった案件への対応として、デヴィ夫人のブログその他での対応は自分の傷口をさらに広げているようにしか見えないし、担当の代理人弁護士もこれでは苦心してるのではないのかな、というのを如実に感じます。

デヴィ夫人としては、自分の言いたいことを言えれば裁判で不利になるのも上等、という考え方の可能性は十分あると思いますが、少なくとも、そういう価値判断を持っている人でない限り得策とは言えないやり方であると考えています。





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最終更新日  2014年02月20日 17時34分31秒
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Re:訴訟を公にすることのまずさ(デヴィ夫人名誉毀損事件から)(02/20)   あそう さん
デヴィ夫人を擁護するわけではありませんが、この裁判でデヴィ夫人がつるし上げられることにより、教育委員会やいじめ犯罪者への追求を弱めることに悪用されかねないと懸念しています。
そもそもデヴィ夫人の怒りは犯罪者が不当に守られる一方で被害者が泣き寝入りを強いられている現状に対する義憤であるわけですし、この大きな問題を見てみない振りをしてデヴィ夫人だけをつるし上げても何の解決にもなりません。 (2014年03月02日 13時57分05秒)

Re[1]:訴訟を公にすることのまずさ(デヴィ夫人名誉毀損事件から)(02/20)   風の精ルーラ さん
あそうさん
>デヴィ夫人を擁護するわけではありませんが、この裁判でデヴィ夫人がつるし上げられることにより、教育委員会やいじめ犯罪者への追求を弱めることに悪用されかねないと懸念しています。

弱めることに使える事件とは思えません。
加害者本人を載せたのならともかく、今回巻き込まれたのは赤の他人であることは争点にもなっていないことです。
仮に使ってきたら鼻で笑えば終わりです。
(2014年03月04日 20時02分12秒)

Re:訴訟を公にすることのまずさ(デヴィ夫人名誉毀損事件から)(02/20)   iq0 さん
参考にさせて頂こうと見ましたが、先ずどんな事だったのか分からないので、読み進めませんでした。 (2019年05月30日 07時44分46秒)

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