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碁法の谷の庵にて

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2014年08月04日
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カテゴリ:法律いろいろ
  • さて、問題の回答です。

中国とかロシアとかシンガポールなどの解答を頂きました。


まあしかし、私ごときが諸外国の刑事司法制度にそんなに詳しいはずはないのであって・・・
これらの国の司法制度を私は知らないので、実際は正解かもしれませんが、今回の私の題意とは違うということでご了承願います。




実は、これは「日本の」刑事手続の「一つ」、少年審判です。
勉強してて当たり前ですね、私自身が何度もやっている手続なのですから。
指摘された通り叙述トリックを使っていますが、中国みたいな国の手続じゃね?と思ってもらえればまあ成功と言った所でしょうか。

そして、少年審判の根拠法令となっている少年法がどれだけ「少年を甘やかすんじゃない!!」と非難されている法律であるかはご存知ですよね。


しかし、少年審判は処分こそ少年院送致などに限定されてはいますが、実はその中で危ういものを含んでいる手続であると言えるのです。

 

  • 記事の解説 

先日書いた記事に即して解説させていただきます。

少年審判において罪刑法定主義はありません。
罪を犯してなくとも、虞犯(犯罪の恐れがある)と言うことで審判・処分することができます。従って、少年審判においては「罪刑法定主義」なんてものはなく、刑法の厳密な要件に当てはまらないケースであっても、処分することができるのです。
検察官送致して裁判するとなれば、罪刑法定主義が復活しますが、少年審判で終わってしまえば、何の罪を犯したと認定されたわけでもないのに少年院と言うこともあることになります。
少年審判の場合、少年には家庭裁判所調査官がつき、少年の家庭や学校から内面に踏み込んだ調査がされるので、犯罪行為それ自体にとどまらない危険性もかなりチェックされます。
大人の裁判は、成育歴などの内面に専門家が入って踏み込んだりすることはほとんどありません(裁判員裁判で審理迅速の要請が高まり、ますます難しくなったと言えます)。

日本の刑事裁判であれば、強制された任意性に疑いある供述調書は不同意と言う形で裁判所に読ませないということができます。
結果として読んだとしても(証拠能力判断のため目だけ通すことはあります)裁判所に事実認定の資料として使わせないということが可能です。
少年審判の場合、例え強制されていても裁判所に自動的に全部引き継がれてしまうので、筒抜けです。
書証に同意だ不同意だなんて概念は「そもそもない」のです。
こんな調書に信用性なんかないんだ、と主張することはもちろんできますが、裁判官に読まれ、資料として使われることを前提に対応することにならざるを得ません。

裁判所が少年院に送ると決定した場合、何年入れるかはきちんと決まっていないケースが通例です。
一応、原則として2年以内とされ概ね1年程度の処遇計画が作られますが厳密には決まりません。
また、処遇がうまく終わっていない場合には、裁判所の許可は必要ですし上限もありますが延長します、と言うことができます(少年院法11条2項)。
大人の刑事裁判なら、例えば懲役10年と言い渡せば、例え再犯の危険がありそうだな、と感じたとしても、10年を越えて収容することは許されません(別の犯罪が出てきたケースを除く)。

罰金のある犯罪を犯しても、罰金にすることはできません。
交通違反などで罰金にするのが妥当なケースでは、わざわざ検察官送致(逆送)して罰金刑にしてもらうという面倒な手続を踏まえることになります。
実は、検察官送致される事件の多くはこうした罰金見込の検察官送致だったりします。

本来保護観察が妥当な少年を少年院に送致してしまっても、「処分が著しく不当」でなければ高裁に異議を申し立てることさえできません(少年法32条)


少年法のこう言う所をつまんで記事にしたのが、先日の記事という訳です。

  • 付添人としても…

日数制限が厳しいため、大人の事件なら若干通用する引き伸ばし(被害弁償が終わるまで判決を待って…と言う事は公判1回、身柄事件でおよそ1ヶ月程度であればごく普通)が通じなかったり
例え自白事件であろうと少年鑑別所への面会を非常に足しげく行わなければならず、
更には事件記録さえ裁判所に見に行かなければならず、(普通の事件ならコピーを送ってもらえる)
記録は審判直前にできるため審判直前期は所用を入れられない
かと言って報酬が高いわけでもない

など、弁護士付添人サイドにとっても、少年事件は悲鳴ものです。

  • だからこその限界もある

ただし、その分少年審判では「少年院に送るのが限界」であり、少年刑務所に送りたい、場合によってはもっと重い刑罰を使いたい(例えば18歳を超えていれば死刑だってあり得る)と言う場合もあります。
その場合には、もっときちんとしたルールを整えた大人の刑事裁判でやる、と言うことになるのです。

また、実務的な運用も、個別的に疑問のある判断はあると言えど、全体的に抑制的に行われているとは言えるでしょう。
犯罪に当たらなくとも、虞犯でバシバシ少年院に叩き込んでいる、と言うような訳ではありません。


  • 大人より少年の方が厳しいこともある!!

それでも、こうした視点の違いは、割と頻繁に「大人より少年の方が厳しく対応される」という事態を招きます

大人の刑事裁判であれば、初犯と言うこともありひとまずは執行猶予…と言う件はたくさんあります。
ところが、少年審判になると、本人の危険性が大きいとか、そういう点を見られて少年院直行…と言う例は後を絶ちません。
何せ危険性だけで処分したって違法な世界ではない以上、危険性部分を大きく取って処分を重くしたから違法だ、とは言えないからです。

私が付添をやった少年審判で少年院に送られた少年は、微妙な件もありましたが多くは「大人の刑事裁判なら執行猶予判決で外に出られる」と言える案件でした。
もちろん、少年だから正式な裁判のために拘束される期間が短く済み、処分も保護観察で済んだというような件もありますが。



他にも、比較的軽微な傷害事件(全治1週間以内の捻挫程度)の場合。

大人の事件であれば、初犯であれば勾留された後、略式裁判等で何十万円か罰金を払えば釈放となるのが通例です。
ケースによっては略式起訴されることもなく起訴猶予で釈放と言うこともあります。

少年の場合、そうとは限りません。
勾留の後も観護措置を取られて審判までの間4週間少年鑑別所に入ると言うことが珍しくないのです。
結果として保護観察などになったとしても、年単位で保護司に生活を見られ、不良の場合は少年院直行、と言うことさえある(保護司は機能不全という話も先日しましたが…)のです。




  • それでも少年法は叩かれる…

世間的に少年を甘やかしている!!廃止だ!!と騒がれている少年法の、こうした「ある意味で恐ろしい一面」について知っている人は、かなり少ないと感じます。
昨今大騒ぎとなり、またしても少年法が甘い!!という声の原動力となっている佐世保の殺人事件でも、仮に犯人の十分な危険性を事前立証できるとした場合、少年法のこうした「ある意味で恐ろしい一面」を使えば防ぐことができえたとさえ言えるのです。
大人の刑事裁判では殺人予備罪を使うのが関の山で、せいぜい凶器を購入したとかくらいにはならないと(しかも凶器として購入したことを立証しないと)防げません。




それでも少年法が少年に甘いと言う批判が吹き上がるのは、例えば殺人などの重大事件が結果として発生しているケースが通例となります。

殺人ならば、多くの件が検察官送致されます(年齢によって原則検察官送致とする規定もある)し、そこでは刑罰の減軽規定が出やすくなります。
そのため、少年法が軽いせいだ、と言う意見が吹き上がりがちです。
実際には、殺人のような重大事件よりも重めの傷害とか、交通事故とか、そういう件の方が断然多く、少年であるが故に厳罰となっているようなケースが少なくありません。

それに、大人の裁判だって、そんなにバシバシと厳罰が使われているとは言えません。
少年事件だから軽くなった!!と騒がれているような件でさえ、大人だと仮定してもまず死刑とか無期にはならんぞ?というのもしばしばです。
加えて、犯行時18歳1か月で死刑になった事例もある訳ですし、裁判員裁判で年少であることを強調した弁護は通じにくくなっているという話もあります。

少年だから報道が匿名なんだ、と言う話もあるのですが、実は重大事件だってせいぜい新聞の県版や地元新聞で報道されて終わり、仮に全国紙に載っても、逮捕の報が載って判決もちらっとで終了と言うことも珍しくないのが実情です。
日本の殺人は年間1000件弱、週に18件程度のペース。殺人事件のたびに佐世保の件のように毎度毎度マスコミがうわーっと吹き上がっていたら、新聞の社会面は殺人事件関連の報道で埋められてしまうでしょう。


  • 無知で少年法を叩くのは危険!!

少年法について議論すること自体をダメだなどと言う気はありません。
十分知識を持った上で論じた結果、これまでの法改正が行われてきたことも事実なので、今後もそのような流れが発生すること自体は十分ありえるといえるでしょう。

ただし、少年法に対する知識が足りないままに、少年法だから犯罪を防げないとか騒ぎ立てることは滑稽であり、また危険です。

少年たちがそのような報道や大騒ぎを聞き、「少年法が軽いなら、今のうちに犯罪をしようか・・・」等と考える危険もあるからです。
刑事処分の抑止力というのは、「実際の処分」もさる事ながら、「処分に対するイメージ」が重要になります。実際の処分を無視したイメージが蔓延ってしまった場合、そのイメージに従った抑止力しか持てないということになります。

抑止力なんか全く関係ないとか、処罰に抑止力なんてないんだ、という立論であればまだしも、抑止力の強化や重要性を主張しながら、自ら少年法が「それでも持っている抑止力」を台無しにするなど論外と言えます。
知識に基づく評論の中で発生するなら、それはそもそもが法律の不備であり、法改正で対応すべき所となるのでしょうが、印象だけでそういったリスクある主張を連発する行為は、言論の自由がある以上違法というのは難しいにせよ、倫理は問われます。


そうして抑止力が緩んだ結果として犯罪が起これば、被害者の人生や生活も滅茶苦茶、少年の人生も滅茶苦茶、裁判所も警察も時間を取られるばかり。
どれだけ少年を厳罰にしようと、誰一人として得をする者はいません。

「少年法自体に少年たちに舐められる要素がある」という面はあるのかもしれませんが、

 

「少年法を実際以上に舐めるように印象付けるような運動は、少年法改悪と変わらない」


ということも忘れてはいけないでしょう。









注:本記事は以前私が保存していたアニヲタwikiの少年法の項目について、書き方などを参考にして書かせていただいております。





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最終更新日  2014年08月06日 17時34分51秒
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