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晴 陶 句 読

晴 陶 句 読

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2013.07.30
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カテゴリ:「本」の紹介
◎◎『神が書いた曲』 -音楽のクリティカル・エッセイ-

・梅津 時比古   ・毎日新聞社


~購読紙『毎日』での掲載を知っていながら敢えて読まず、「本」になってからこそ、じっくり

読む"文章"として2009年以降待ち続けた本書である!!!!



「珠玉のような」などと月並みの言葉では到底言いつくせず、一語一音が楽譜となって楽曲

を奏で、紡ぐような手稿楽譜とでも言えばお分かり頂けるだろうか! 「写真とは、現実を楽


譜にした演奏なのだろう。だからズィビレの写真は、寂しさと美しさが溶け合って、声の無い

歌のように響いてくる。」の一行を見つけたが、これはそのまま本書に嵌る、写真だけでな



く、絵画・映像・舞踊など、即興、一過性でもある「他者の声」を、「文」にしてしまう魔術

「書」とでも言うべきか・・・。自問自答もしながら「音と絵、映像と音、互いにかかわりは無いの


だろう・結びつけているのは、黒い画面と無音、つまり断絶だ。(中略)音楽においても絵画

においても、孤独を徹底して究める在り方が、互いにかすかに共振する。(中略) 刺す。」


第一部「音のかなたへ」72篇、第二部「コンサートを読む」~・庄司紗矢香の無伴奏ヴァイオリ

ンによるレーガーとバッハ-不条理を問う幻のリサイタル など31篇、どれも2~3ページの短文なれ


ど上記の如く深く審美的であり、音楽への造詣が深い方々には、どのページを開いても、曲

が流れ楽器のひとつ一つを聴き分け、楽譜・作曲家・演奏家・コンサートホールが想い浮かぶこ



とでしょう!!・・・そんな楽しみは奪いませんのでぜひのめり込んで下さい! ここでは、せめて

「俳句」や時事などに触れている部分を引用させて下さい~・むかでのように情報がはりめ


ぐらせられたこの時代に、人は成熟しにくいのかもしれない。(中略)何かをとりこぼしてしまっ

た道を、ぎくしゃくと歩いてゆくしかない。(シューマン歌曲集) ・世界は神が書いた曲である

とルプーが考えているように聞こえた。 ・「閑さや岩に・・」→「蝉の声」ついに音だけになる。


・夕されば潮の香の満ちくる町~震災への哀悼と見舞い~ヒンデミット「画家マチス」等 ・ブラーム

ス「雨の歌」~原爆 ・リヒター「作品とはひとつの別れである」 ・芭蕉の句とバッハの曲が重な


ってくる一瞬がある。 ・【雪とけて村いっぱいの子どもかな】(一茶)~今の福島に、この句



は、突き刺してくる幻想に感じられる。一茶はこれが痛みと受け取られる未来を予言してい

たのだろうか ・【雲とへだつ友かや雁の生わかれ】~一瞬の間のように残る無調の響きが


深い。その深さは、死を前にした芭蕉のものなのか、高橋(裕治)のものか、弾く側のものか

聴く側のものか。無統制な音の場において、孤独の発するきしみが沈殿し、積み重なった。


・・・句の即興性と大岡信言う【うたげと孤心】にも、その音楽性を観る感受性に驚愕する・・・


かといって、クラシック畑だけでなく、青山テルマ『そばにいるね』や能『斑目』等もとりあげ「ポツプ

スもクラシックも哲学も、200年前も今も、 同じことを語っている。それだけ存在の出会いは、

せつないものなのだろう。」 と!!!! ・・・・この本と連れ立った今回の"山"行きは正解だった。


 滴り、まとわりつくほどの緑と雨の中で、聴く、本書にも採りあげられる【ゴルトベルク変奏曲】

は、音楽を偶にしか聴かない疎い者にとっても響き、泌み入りました・・・。








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最終更新日  2013.07.30 16:44:53
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