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前回に続いて、また書籍紹介。
佐藤可士和の超整理術 ちょっと前にIndoseekのニュース記事で紹介されていたので興味を持った。著者が有名なデザイナー/アートディレクターということもあって売れているようだが、アマゾンのサイトなんかをみると読者コメントは結構厳しいものが多いのも気になった。 読んでみた感想としては、読者の批判の内容は当たっていても、やっぱり読む価値はあるもの、と断言できる。 まず、文章が上手い。すげー上手い。 作家のような上手さでなく、文章の切れがよく、文の単位からパラグラフ、項、章の構成まで、計算され尽くされてる感じ。故に、明快すぎて、内容が軽い、って感じを与えるのかもしれないけど。 各章のテーマとなっている内容をより分かりやすく説明するための事例も関連性がしっかりつかめる。 自分の手掛けたプロジェクトや作品のみを例に挙げてるのがアレだという人もいると思うけど、自分にとっては、後に上げる理由で逆に興味深かった。 内容は、整理術、ということで、身の回りの環境の整理という物理的なものから、自分や他人の思考の整理、という抽象的な内容まで、一貫したメソッドを適用して、どちらかといえば実践的ノウハウより発想の転換の例を見せている。 この、発想の転換、アイディアの整理、といったことが、ビジネスやアカデミックの世界ではかなり知られた内容だったので、ビジネス界の読者の槍玉に上がったようだ。確かに、グチャグチャのアイディアに優先順位をつけたり、キーワードをもとに分類したり、という考え方は、このブログでも紹介したことのある「考える技術・書く技術」という本の方がずっと体系的に詳しく述べられてる。 ただ、こちらの本では、これらの考え方が、アーティストという職業の人の視点から、自分の仕事(アート)に適用して書かれてる部分がおもしろかった。 アートのように自己表現そのものの、あらゆる奇抜なアプローチが称賛されるようなものの根底にも、規則に従った「整理」という概念が存在している、というのがおもしろい。 何より興味深かったのは、アーティスト自身も、やはり「見る人間」を意識して、観衆に自分のコンセプトを誤解なく伝えるために、緻密な情報の整理と解析を行う、という点。 自分も、エッセイの添削で、必ず「読み手の立場に立って読んでみて、自分の考えが誤解なく伝わっているかチェックすること」ということを言ってる。エッセイ、アートのどちらも、メディア(媒体)の一種と思えば、当たり前なのかもしれないけど、興味深い発見ではあった。(自分も、絵とか描いてるから余計そうなのかも) 強いて愚痴を言うとすれば、考え方が分かっただけでは、整理した情報や思考を芸術の形に表現できることはできず、表現法に関しては、やっぱり個人のセンスが大きく関わってくるので、凡人読者は作品を作り出すレベルにまで行くことができない、ってとこかなー。本読んだだけでみんなそんなことが出来るようになっては、著者だって商売上がったりで困ると思うけど(笑)。 上述の「考える技術――」は専門的過ぎて取っ付けないけど、この手の思考術のサワリだけでも知りたいな、という人、著者の作品や業績を素直に称賛出来て、本からインスピレーションを得て自分も新しいものを生み出したいなあ、と思っている人には、一読をお奨めします(^^)。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.11.18 18:58:54
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