誘拐で一番難しいのは、身代金を受け取るとき、と言われています。実際そうでしょう。ハドリー・チェイス「ミス・ブランディッシュの蘭」や、エド・マクベイン「キングの身代金」では成功しますが、結局、別のほうから足がついてしまいます。
この映画では、犯人たちは子供を誘拐し、両親を別々に拘束して見張りをつけます。30分ごとに携帯電話で連絡を取り、もし連絡が途切れたら人質を殺す、というのがその手口。両親、子供がバラバラに拉致されていますから、お互いの安否を気遣って、身動きがとれません。
グッドアイディアです。犯人グループは過去に4回、この方法で身代金をせしめてきました。完全犯罪と自負するのもわかりますが、ミステリ・ファンから見れば、実に危ない犯罪です。顔も名前も知られ、指紋はベタベタと残してくるのですから、警察へ届ければ簡単に捕まってしまうでしょう。いままで誰も届けなかったのは、僥倖に過ぎなかったのです。
5回目の犯行では、犯人はさらに重大なミスを犯しました。誘拐した女の子は、重度の喘息持ち。発作が起きたとき、クスリを与えないと3分で窒息死するというのです。それを知らなかったのですから、お粗末と非難されても仕方がないでしょう。
ラストで、金銭以外の犯行の動機が明らかにされます。単純な営利誘拐ではなかったのです。それはいいのですが、せっかく人を殺さずにきたのに、最後に余計なアクションがあって、竜頭蛇尾になってしまいました。
とはいえ、結末までのプロセスはスリルがあり、サスペンスは盛り上がります。シャリーズ・セロンの色気は悩ましく、天才子役ダコタ・ファニングも好演。観て損はないでしょう。
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