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橋本健二の読書日記&音盤日記

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2009年05月08日
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カテゴリ:文学・小説
 空き時間を使って、松本清張を少しずつ読んでいる。何といっても、高度成長期を代表する作家だ。

 宮部みゆきの編集したこの傑作集は、全3巻。全短編の中から、いくつかのテーマを設定して配列されたもので、上巻のこの一冊は「巨匠の出発点」「マイ・フェイバリット」「歌が聴こえる、絵が見える」「『日本の黒い霧』は晴れたか」の4部構成。

 松本清張の小説の多くでは、組織あるいは社会の構造のゆえに不遇な地位に置かれている人物が主人公となっている。主人公は、そこから抜け出そうとして、あるいは復讐のために、犯罪に手を染める。多くの場合、読者はこの主人公に感情移入し、復讐を応援したくなる。しかし、やはり多くの場合、復讐は成功の一歩手前で挫折する。こうして組織や社会の構造は、虚しく維持されることになる。読者は、弱者を勝たせてやりたい、強者を滅ぼしてやりたいという思いに駆られるのだが、主人公の企ては失敗に終わる。

 だからこそ、その課題は、読者にゆだねられることになる。その意味では、読者を鼓舞するアジテーション文学であり、一種のプロレタリア文学といえる。

 さすが宮部のセレクション、いずれも読ませる作品ばかりである。ただし「昭和史発掘」と「日本の黒い霧」は、全巻通じて読むべきものだろう。


宮部みゆき責任編集『松本清張傑作短編コレクション 上』





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最終更新日  2009年05月08日 11時03分17秒



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