『腐り姫』。安楽死。
『腐り姫』感想総評攻略完了。全てを失い、緩やかに安楽死を迎えるだけの虚無的・退廃的な作品だった。主題として狂気の愛を扱い、それが近親姦と結びついて異様な腐臭を放っている。醜悪な純愛を描いた作品として、高評価されるに値すると途中までは思っていたのだが…。最終的に、焦点が微妙にズレてしまう。シナリオにおける視野の極端な拡大に反比例して、次第に狂気は失われ、同類相憐れみ傷を舐め合うような美しい愛に代わって行く。結局『腐り姫』が描いたのは、「インモラル・ホラー」などではなく、真っ当で真っ直ぐな恋愛関係だったように思われる。メインヒロインは樹里ではなく、蔵女だ。俺はずっと、五樹に歪んだ愛情を向けてくる樹里との再会に際して、彼女をどう受け入れるべきかと悩んでいたのに…。そんなことは元から考える必要が無かったようである。何故なら「俺がどう思おうが、五樹は樹里に抜け殻と断じられて手酷く振られる(ネタバレ反転)」のだから。様々な要素が詰まった面白い作品ではあるが、結局はこれに尽きる。最後の最後で、この作品が放っていた吐き気を催すような腐敗臭が失われた、ということ。それだけが残念であり、唯一にして最大のマイナスポイントとなった。好きなヒロインは“山鹿青磁”。……ってこいつ男じゃねーか。心優しい人間として、超越者との断絶を表現する為に存在する哀れな男。プレイヤーは彼諸共に、超越者に対する理解や歩み寄りを拒絶されることになる。心に残ったヒロインは“簸川樹里”と“簸川夏生”。この二人は“攻撃性”に共通点がある。一番可愛かったヒロインは“蔵女”。健気で愛らしい娘ではあるが、この作品のメインヒロインを張るには些か小奇麗に過ぎたと思わざるを得ない。以上、終了。何だかんだ言って、非常に歯応えのある良作だった。なお、本編の解釈については前回の記事に書き残してある。意見・反論・修正・罵倒など永久に募集中。