『シンフォニック=レイン』。降る雨、舞う妖精、全てが音楽。
……。いきなりだが『シンフォニック=レイン』、攻略完了。あ……シンフォニック=レインって何かって?そりゃ、もう……歌って踊れる楽しく明るい美少女ミュージックアドベンチャーだよ。具体的に言うとこれ↓だよ。[CD] (ゲーム・ミュージック) RAINBOW シンフォニック=レイン俺は……まあ……。はっきり言って、途中まではこのゲームが大嫌いだった。嫌いではなく、大嫌いだ。少なくとも『君望』と同程度には嫌いだった。なんで嫌いかって?あのね、暗い。登場人物が極めて少なく、閉塞感バリバリ。遠距離恋愛ゆえに、より身近にいる彼女の双子の妹に恋をしてしまう……という設定は、非常に良い。わかりやすく、共感しやすい。ただ……救われない。どこまでも。永遠に続く闇の中をただ彷徨うようなシナリオ。そこにあるのは何か?ある意味で劇的な、身を裂くような悲しみや、締め付けるような切なさか?それとも吐き出すような激情?違う、どれも違う。そこには、ただただ静かに心を蝕む疲労感があるだけだ。身を削る疲労。登場人物を苦しめるのは、長い長い戦いの果ての、やり場のない疲労。それは当然のごとく、プレイヤーにも強烈にフィードバックされ、漬物石の如く頭の上に重くのしかかる……。つかれた……。もういいだろ……。……もう休ませて……。もしくは、もう休ませてやれよ、とか……。俺の感想は……ただこれだけだった……。途中までは。途中まではな。そう、まるで……闇の中の一筋の光のような……。青天の光条のような真ヒロインエンドが俺を救った。救われた、と感じた。最後の最後で、笑顔が戻った。あのドン底から這い上がり、ようやく楽しい時間を過ごせた。そうして俺は、ギリギリのところで感想を書く意欲を取り戻し、こうして筆を取っている。というわけなので、先に言っておこう。シンフォニック=レイン、すごく良いゲームだった!!ミュージック、最高!!……えーっと、どうやって書こうかね。とりあえず、各キャラクターごとに行こうか……。概ね、攻略順で実施する。☆リセルシア・チェザリーニ誰もいない旧校舎でただ一人、歌い続ける後輩の少女。最初の攻略ヒロインにして、俺のシンフォニック=レインに対するマイナスな印象を決定付けた娘。とにかく薄幸。彼女自体は可愛らしいヒロイン、ではあるが……。悲痛すぎて、あまり思い出したくない。シナリオを貫くのは、無力感。関連要素は、児童虐待。★ファルシータ・フォーセット雨に濡れる主人公に、傘を差し出す美しい少女。……。俺はリセルシアと、アーシノが好きだから、どうしてもこの娘が許せなかった。誠意を見せようとして偽悪的に振る舞うのは、彼女が恐ろしく世渡りが下手だからだ。所詮小娘。シナリオを貫くのは、裏切り。関連要素は、野心。☆トルティニタ・フィーネ主人公の恋人の、双子の妹。明るい外見とは裏腹に、心身ともに擦り切れたヒロイン。ゲーム開始時点で磨耗しすぎてもう何も残ってない。ただ一つ、確実に言えるのは彼女は周囲の人々に非常に恵まれた、ということだ。救われる道は幾らでも残っている、と俺は思う。救われてほしいとも、強く思う。シナリオを貫くのは、偽り。関連要素は、真実。☆クリス・ヴェルティン主人公。声が思ったより野太かったな……という、よくわからない第一印象。ねじれ曲がった現況の元凶と言えば元凶ではあるが……俺はこいつのこと、嫌いじゃないよ。遠く離れた恋人から、次第に心が離れるのも止むを得ない。すべてを捨てて音楽に打ち込むクリスの姿は楽しく頼もしい。きっとあれが、彼の本来の姿なんだろう。どうでもいいが、テキスト中の彼の名前をよく「クスリ」と誤読した。しょうがないね。このゲーム誤字が多すぎだから。☆フォーニ音楽の妖精を騙る、正体不明の小うるさい羽虫。クリスの前に現れた、音楽の妖精を名乗る不思議で小さな女の子。言っていいよね?本作の正真正銘メインヒロイン。フォーニ、愛してる。君が好きなんだ。ずっと側にいてほしい。え?……羽虫?俺はそんな酷いこと言わないし、よしんば言ったとしても激しい愛情の裏返しであり構ってほしいアピールの一環だろうね。だって、あらゆる反応が異常に可愛いから……吐くほど可愛いから、もう……。……とにかく、俺にとってフォーニは雨に沈む作品世界の救世主であり、最後に残された希望でもあった。彼女が活躍する場面、音楽はすべて輝いて見えた。比喩ではなくマジで。彼女とのセッションは何回目だろうが本当に楽しかった。慣れてしまえばうざったいだけの音ゲー式ミニゲームも、バカみたいにニヤけながら真面目にやった。何度も。何度も。何度でも言う、本当に、楽しかった……。シナリオを貫くのは、奏でる楽しさ。関連要素は、音楽。☆アリエッタ・フィーネ遠距離恋愛中の主人公の恋人。バッドエンドではクリスを迎えに遠路はるばる来てくれる。彼女には悪いが、クリスを他の女に取られるのは、仕方が無いな……。離れた期間は三年間だ。あまりにも長すぎる。彼女を貫くのは、優しさ。関連要素は、別れ。まあ……こんな感じで。俺の中ではフォーニ一人勝ちという認識で間違いない。だって、彼女が出てくる場面はすべて楽しかった。そもそも、このゲームって音楽を中心に据えたゲームだろ?音楽って、楽しいものだろ?「音を楽しむ」から、音楽なんだから。なら、このゲームも楽しくなきゃウソだ。ということは、このゲームはウソばかりだ。そんな中で、フォーニは唯一、このゲームが何をテーマにしているのか、俺に思い出させてくれた最強のヒロインだと言える。彼女と一緒ならいつまでも、疲れを知らずに歌い踊れる。そんな気さえしてくる。ああ愛しいフォーニ。どうして君はフォーニなのか。シナリオの解釈については、特に難しいこともない。鬱屈したストーリーには……少し『ひまわり』を思い出したな……。ヒロインが生々しく自己嫌悪したりとか……心の醜い部分を惜しげもなく曝け出したりとか……。そういうエグいのが好きなプレイヤーなら、きっとたまらないだろうな……。ああ、俺もトルタは好きだよ。彼女を見てると、泣きたくなるくらいに、もう休めと、言ってあげたくなる。それが出来るのは、実際には彼女の祖母と、クリスぐらいなものだろうが。終わりの見えないつらい戦いに、よく頑張った、と、せめて賞賛を向けるぐらいしても決して罰は当たらないだろう。様々な要素がつまったこのゲームだが、結論だけ見れば音楽への賛歌でしかなかった。みんな、音楽が好きで、それに対して真摯であるということは事実。そして、それぞれの歌に自らの気持ちを強く込めるのも。恐ろしい秘密を隠して、陰で涙を流すのもいい。ただ、俺にとっては、主人公とフォーニの二人こそが、見るものを躍らせる楽しくも正しい音楽の姿であると感じられただけだ。確かに悲しみは音楽を印象深くするが、それだけでは音楽は成り立たない。歌う心は常に前向きでないと。どうせなら、目に見えない音の妖精でさえ、思わず歌い出してしまうような明るい歌がいい。ポジティブであれば、何事も意外と上手くいくものだ。【送料無料】シンフォニック=レイン愛蔵版