『彼女たちの流儀』。箱庭の崩壊。
皆さん、こんばんは。今回は隠れた名作を引き当てた、という気がします。『彼女たちの流儀』は、淫蕩な即興芝居のような作品でした。人を喰らう化け物が、泣きながら人を喰らう化け物を演じる茶番劇。主演女優である鳥羽莉の演技の綻びが見えた時、同時に彼女が如何に愛しい存在であるかも理解できるでしょう。「演技においてはまず想いありきよ、始めに言葉ありきではないわ」台詞の裏には、必ず想いがある。それを理解すれば、彼女の本質を見誤ることも無い筈です。優しく聡明で、誰よりも臆病で美しい少女が、どのように永遠と向き合っていくのか。その過程を残酷かつ繊細に描き出した点で、『カノギ』は間違い無く名作と呼べる代物でした。……大袈裟なことを言いましたが、素朴な遠距離恋愛の描写とかも優れていたと思います。他者とのコミュニケーションに付き纏う不安など、不安定な少女の内面を通して情緒豊かに描かれており、非常に良かったです。なお、俺がこの作品を心から楽しめたのは、自分の性癖と作品の変態性が合致したからかもしれません。前評判通り、女の子に虐められたいマゾ野郎にはこれ以上無いゲームでした。付け加えると、俺は以前「倫理を超越した愛を描けるのがエロゲの強みだ」と言いました。その意味で極めてエロゲという舞台を生かしきった作品だとも思うのですが、正直なところ、これでソフ倫通るという事実に驚きを隠せません。義理とかそういうレベルじゃありませんからね……いや、たまげました。