|
テーマ:お勧めの本(7221)
カテゴリ:小説 ミステリ
奥田英明の作品は、読むたびに印象が違う。
ララピポ を読んだときは、申し訳ないけれど「読まなきゃよかった…」と思った。(ダーティ・エロに抵抗のない人はどうぞ) でも、今回の オリンピックの身代金 はかなり長かったけど読み応えのある、面白い作品だった。 舞台は昭和39年の夏。東京オリンピックを控えて、道路や施設の建設が急ピッチで進められている。世間もオリンピックで盛り上がる中、謎の爆破事件が相次ぎ、「オリンピック」を人質にした爆破予告が警察に届く。捜査線上には東大大学院生が浮かび上がる。 大学院生の国男が、犯罪に手を染めていく過程が丁寧に描かれている。秋田の貧しい家の出身で、兄弟の中で自分だけが辛い労働を味わっていないという妙な劣等感。そこからはじまって、ついには警察を、国を脅迫するまでになる。 「格差社会」とは今だけの問題ではなくて、この当時も今よりひどい格差があったんだということがリアルに伝わる。しかも、底辺にいる人は自分たちがひどい扱いを受けていることにそれほど不満を感じていないということが興味深い。 今は情報が(昔よりは)行き渡っているけれど、無知であることが支配する者にとってどれほど都合のいいものか、よく分かる。まさに「よらしむべし、知らしむべからず」だ。 小説はさまざまな視点が交錯し、時間も前後する。でもそれが小説の世界を作り上げる上でプラスの効果を上げていたと思う。 最後までハラハラ。なぜか国男に「捕まらないで!」と思ってしまった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009年04月05日 07時01分51秒
コメント(0) | コメントを書く
[小説 ミステリ] カテゴリの最新記事
|