カテゴリ:プレバト俳句を添削ごと査定?!
鯖喰ふや係船柱の錆硬し 汗水漬く大工かきこむ鯖弁当 焼き鯖の香り漂う夕涼み 鯖食いて青葉感じる箱の中 肴手土産に来る父の日の父 薄暑のシンク鯖缶の蓋の反り 朝まだき半夏生鯖匂ふ市
プレバト俳句。 お題は「鯖さばの弁当」。 今回は、ほとんどが季重なりでした。 兼題の「鯖」は夏の季語ですが、 いまやスーパーにいつでも売ってますし、 季節感が乏しいのも季重なりになる理由かとは思います。 ![]() ◇ 梅沢富美男。 朝まだき 半夏生鯖はんげしょうさば匂ふ市 朝まだき 半夏生鯖はげっしょさばの匂ふ市(添削後) 今回も形式的な問題はありません。 やはり梅沢にはシンプルな文法が合っている。 梅沢の過去句のなかでも屈指の出来じゃないでしょうか。 なお、 「半夏生」も「鯖」も単独で季語ですが、 この場合は「半夏生鯖」で一単語なのですね。 語源を調べてみたら、なかなかに面倒くさいです↓。 季語の「半夏」は、サトイモ科の烏柄杓カラスビシャクのこと。 さらに、七十二候で夏至の末候の5日間(太陽暦で7月2日~6日ごろ)を「半夏生ず」、雑節で「半夏生」と呼び、田植えの終期を烏柄杓の生える頃までとした。地方によっては「ハゲ」「ハンデ」「ハゲン」「ハゲッショウ」などと呼ぶ。福井県大野市の「半夏生鯖」は、半夏生の初日に家族全員が鯖の丸焼きを一人一本ずつ食べる風習。ドクダミ科の「半夏生」(半化粧/片白草カタシログサ)も、この時期に白い葉をつけることから名がついた。 ◇ 武井壮。 鯖喰ふや 係船柱の錆硬し 荒波や潮風の厳しさを想像させますが、 「過疎で寂れた港町」というよりは、 「なおも逞しい漁師町」といった印象です。 前段のバイタリティと後段の力強さが呼応する。 いかにもNHK俳句仕込みの硬派な作風って感じ? 武井荘が加わることで、 プレバト全体のレベルが一段上がるかもしれません。 ◇ フルポン村上。 薄暑のシンク 鯖缶の蓋の反り いつもの村上節で、 「ペンの減り」「目の潤み」的な作風。 そこまで傑出した作品とは思わないけど、 まあ掲載決定でも異論はありません。 季語は「薄暑」と「鯖」で重なってます。 とはいえ、 缶詰には季節感がありませんし、 ここでは美味しそうな食べ物としてではなく、 食後の廃棄物として描写されていますから、 主たる季語は「薄暑」のほうですね。 その薄暑と相まって、 粗末なシンクに置かれた空き缶の魚臭さや、 油っぽさや、金属臭が、やや鬱陶しいのかもしれません。 缶の蓋の「反り」に目が行くのは、 それを開けた自分の手の動きが、 まだ記憶に残ってるからでしょうか。 一人暮らしの侘しさを読みとることもできますが、 わたしとしては、 ビールのつまみに缶詰をひとつ開けた後の、 ちょっとした贅沢を感じても構わない気がします。 ◇ 小籔千豊。 汗水漬みずく 大工かきこむ鯖弁当 汗みずく 大工掻っ込む鯖弁当(添削後) これも季重なり。 先生は、 「汗」が主で「鯖」が従だと評したけれど、 それはやはり「鯖」の季節感を過小評価するが故であって、 本来ならば避けるべき季重なりだと思います。 ◇ YOU。 焼き鯖の香り漂う夕涼み 焼き鯖の香や 休日の夕涼み(添削後) これも季重なり。 先生は、 「夕涼み」が主で「鯖」が従だと評したけれど、 いくらなんでも「鯖」の季節感を過小評価しすぎでしょう。 本来なら「焼き鯖の香や」とまで書いて、 それが脇役ってことはないだろうと思います。 ◇ 新内眞衣。 鯖食いて青葉感じる箱の中 弁当の鯖よ青葉よふるさとよ(添削後) これも季重なり。 添削は、あえて優劣をつけず、 さながら「目には青葉/山ほととぎす/初鰹」のように、 季語を並置してしまうアクロバットな手法。 なお、原句は、 旧仮名なら「食ひて」or「食うて」、 現仮名なら「食って」だと思います。 ◇ 森口瑤子。 肴手土産に来る父の日の父 父の日の父来 肴を手土産に 季語は「父の日」で夏。 原句は「父の日の父」の滑稽さをオチにしてますが、 この語順について、梅沢と村上で意見が割れました。 添削句のほうは倒置法で、 父の具体的な姿をオチにしていますが、 オチとしての効果は原句より薄れたように思う。 リズムの面でいえば、 破調にする必然性が乏しいので、 句またがりに収めた添削句のほうが有利でしょうか。 追記: あらためて原句を読むと、 10・7というリズムの頭でっかちな不安定感が、 父の「マヌケさ」に合致しているような気もします。 ![]() ![]() ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.05.29 20:41:50
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