映画「つぐない」@スペースFS汐留
[DVDソフト] つぐない 映画の話 1930年代、戦火が忍び寄るイギリス。政府官僚の長女セシーリア(キーラ・ナイトレイ)は、兄妹のように育てられた使用人の息子、ロビー(ジェームズ・マカヴォイ)と思いを通わせ合うようになる。しかし、小説家を目指す多感な妹ブライオニー(シーアシャ・ローナン)のついたうそが、ロビーに無実の罪を着せ、刑務所送りにしてしまう。 映画の感想 実は私が本作を見たのは昨年末。 見終わった瞬間に「これは来年のベスト作品だ!」と心の中で叫んでしまった作品である。レビューも公開時期近づいたら書こうと思っていたのですが、他の作品の試写を見るのと原稿を書くのが忙しく自分のブログは後回しになってしまいました。 映画は主人公の次女ブライオニーがタイプライターのキーを叩く音がリズムとなりダリオ・マリアネッリの流麗なスコアが被さり音楽となるオープニングから心引かれる。13歳のブライオニーは自分で戯曲を書いてしまう位にクリエイター気質の持ち主である。ここが映画のポイントだ。そのブライオニーの視点で映画は展開する。まだ大人の世界を知らないブライオニーにとって自分が見たものを自分の尺度に変換してしまう。そんなブライオニーが姉のセシーリアと使用人の息子ロビーの逢引きを目撃する。観客はまずブライオニーの視点で語られ、観客も「まずいものを見てしまった!」となるが、映画は時間が少し遡り、実はこういう訳だったと答えを見せる。時間軸の使い方が実に巧みだ。 そんな多感なブライオニーがロビーが姉に宛てた恋文を盗み読み、またこれがロビーが悪戯で書いたエロレターの方を間違って渡してしまったので大変な事になる。妄想で頭の中が一杯のブライオニーがある事件を目撃してしまい、その犯人として嘘をついてしまう。一度掛け違えたボタンはロビーに対して最悪な方向に動き出す。 そして映画は4年後。ロビーはフランス、ダンケルクのドイツ軍との激戦地帯に送り、ブライオニーはロンドンの病院で看護婦の見習いとして働いていた。ロビーとセシーリアのロンドンの再会から別れのシーンや、病院のブライオニーを映し出すカメラが端正な絵作りで、ふっと往年のジャック・ドゥミ(「シェルブールの雨傘」[ロシュフォールの恋人たち」など、私の大好きなフランスの監督)作品を思い出してしまう。 圧巻は海岸に再現された“ダンケルクの撤退”のシーンだろう。戦地で地獄を味わったロビーが部隊とはぐれて見てしまう、折り重なった制服姿の少女の無数の死体。そして海岸に出ると映画は一気にステディカムを使ったワンショット撮影で戦争の狂気を観客に見せ付ける。虚無感に満ち溢れたオープンセットに息を呑む。 何よりも本作の着地点には驚愕してしまう。77歳になったブライオニーがテレビのインタビューで語る真実は、ここ何年か見た作品では一番驚いてしまったし、悲しい結末に胸が打たれた。 ただ本作の難点は邦題の「つぐない」だろう。何かテレサ・テン?と思ってしまうセンスの無い邦題が何とも勿体無い。しかし映画素晴しい!今月公開の作品の中で是非見て欲しい作品である。今のところ今年のベスト作品候補には変わらない。 映画「つぐない」の関連商品はコチラ。つぐない オリジナル・サウンドトラック<ユニバーサル・ザ・ベスト \1,800>[DVDソフト] プライドと偏見